ちびくろサンボ 4

出典: Jinkawiki

ちびくろサンボとは世界的に広く読まれている絵本のことである。日本でも、1953年に岩波版が登場して以来、常に人気の高い絵本であり、日本国内のみで70種類を超えるいろいろな版が出版された。しかし、1988年以降、日本においてこの本を目にする事は非常に少なくなってしまったのである。廃刊へと追い込まれてしまったのである。

このきっかけになったのは、日本のデパートにおいて黒人の特徴をひどく誇張したマネキン人形が置かれていることをアメリカ紙「ワシントン・ポスト」が報じたことであった。これを読んだ市民団体「黒人差別をなくす会」がちびくろサンボを出している出版社に軒並み差別的であると抗議し、廃刊を訴えた。そして日本で最初のちびくろサンボを出版し、最大のシェアを誇っていた岩波書店が真っ先に廃刊に踏み切った。これを皮切りに各出版社が次々と廃刊を決めた。こうして、突然にちびくろサンボは書店の店頭や図書館の書架から姿を消してしまったのである。問題とされたのは、「サンボ」と言う名前がアメリカ合衆国における黒人に対する蔑称と共通していると言うこと、黒人がジャングルに住んでいるということ、絵が黒人を戯画化していること、大量のホットケーキを平らげると言う描写は黒人の食欲が誇張されてのことなどであった。

ちびくろサンボの元々と言うのは、軍医であった夫とインドに滞在していたスコットランド人、ヘレン・バナマンが、自分の子供たちのために書いた手作りの絵本であった。知人を通してイギリスの出版社に紹介され、1899年にイギリスのグラント・リチャーズ社より子どもの手に収まる小さな絵本で、文も絵もバナマン自身によるものであった初版が刊行された。著作権の問題などから、アメリカで海賊版が横行してしまい、その際に改変された箇所も多く、特に絵は原作と違うものが使われることが多かった。その一例として、主人公をインドの少年からアメリカに住むアフリカ系黒人の少年に置き換えたもの、少年の母親がアフリカ系夫人のふくよかな特徴を与えられたもの、背景描写がアフリカを想起させるものなどがあった。このことが、後に人種差別問題へと深く関わってくることになった。

日本で広く知られるようになった岩波版の『ちびくろサンボ』も、こうしたアメリカ版の絵を用いている。 現在ではいくつかの出版社から登場人物の名前が変えられたり、絵が変えられたものが復刻版として出版もされている。ちびくろサンボの絶版については賛否両論であるが、黒人差別、差別表現について国民が考えるきっかけになった問題であったと言える。


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