グローバリゼーションとマクドナルド

出典: Jinkawiki

目次

グローバリゼーションとは

「ヒト、モノ、カネ、情報」などの移動が国境を越えて地球規模で盛んになり、政治的・経済的・文化的な境界線、障壁がボーダレス化することで社会の同質化と多様化が同時に進行するような「世界規模化」のこと。地球規模での情報ネットワークや市場が形成され、情報や資本などが自由に移動し、その影響を世界各地が同時に受けるようになることを意味するが、漠然とした概念で使われることが多い。 1970年代から使われるようになった言葉である。対して、世界規模に拡大した情報ネットワークや市場、経済・貿易システムは「国家主権」が危ぶまれ、第三世界にも悪影響を及ぼすと「反グローバリゼーション」を唱えるNGOや各種団体も存在する。「反グローバリゼーション」は別の言い方として、「下からのグローバリゼーション」や「Global Justice Movement」などと言われることもある。


1950年代のアメリカ

20世紀はアメリカの世紀だったといわれる。正確には1945年第1次大戦終わってから本格的なアメリカの世紀が到来、特に映画、音楽、食文化などの分野でアメリカが世界を席巻した。50年代には消費生活を向上させたアメリカが世界の生産の半分を生産し、消費の半分を消費する華やかな生活が展開されるにいたった。 アメリカ的生活様式の変化は1945年のテレビ放送の再開、1947年のハイウエイの建設から始まった。1956年にハイウエイは全米に拡大。レビットタウンと呼ばれる郊外住宅団地が生まれた。ベビーブームが到来し、エルビス・プレスリーのロックンロールが瞬く間に全世界に広がり、ハリウッド映画の世界マーケットも確立した。自動車旅行による人々の移動が激しくなり、モーテルとホリデイインが成功し、そしてドライブインレストランとファースト・フードが登場した。激しく人々が動く時代だからこそ、マクドナルドが必要とされたのである。


マクドナルドの世界展開

冷戦終結、東欧社会主義の崩壊で垣根のなくなったマクドナルドの海外進出は早かった。1998年全米8600店、海外12000店。世界がアメリカを追い越した。アメリカの生活様式はモスクワも北京も中東、アラブも征服して世界企業となった。 今でも世界中のマクドナルドはマニュアルを踏襲、品質管理、従業員管理、接客管理の基礎にしている。日本マクドナルドには25章450ページの社外秘マニュアルがあるがそれには、「下の鉄板は77度、上の鉄板は218度、38秒焼く」「パンの厚みは上16ミリ」「手洗いは一時間ごと、もみ手で30秒、ヒジまで洗浄」などと記されている。マニュアルはDVD化されている。こうした手法は世界中の企業の管理体制、管理教育の指針として世界を席巻した。 マクドナルドの世界進出はマクドナルドに牛肉を供給している大手食品会社の世界進出にもつながった。アメリカ大手のコナグラがオーストラリアの最大の牛肉会社を傘下に収めたように、世界の牛肉会社のアメリカ化が進んでいる。しかしそのために食品が汚染された場合一挙に世界に広がる可能性が強まった。一つのハンバーガーは昔のように一頭の牛の肉から出来ているのではなく、数10頭、数100頭の肉が混じっている。マクドナルドはアメリカ農務省の食品安全基準よりさらに厳しい基準を適用しているが、それでもBSE狂牛病の脅威には勝てなかった。 2002年4月、低価格をテコに拡大路線を続けてきた日本マクドナルドが出店を抑制し、これまで300-500あった新規増を90店程度に抑え、2010年に1万店という目標を降ろしたのも、BES狂牛病の直接の影響と見られる。問題はBSE狂牛病だけではない。 アメリカでは冷凍フライドポテトの消費が60年一人あたり年1.8㌔から2000年13㌔に急増、ハンバーガーにつきもののコーラなど炭酸飲料(一缶スプーン10杯の砂糖を含む)の消費量が40倍に増えた。アメリカの肥満率を大きく押し上げ、健康への影響を懸念する声が強まっている。これが2002年訴訟に発展し、マクドナルドの肥満への責任が追及されることになる。 グローバリゼーションの波に乗って、世界中のあらゆる街角に進出したマクドナルドだが、ヨーロッパでグローバル化に反対する農民やNGOの運動が高揚するといつも真っ先に石を投げ込まれるのはマクドナルドである。それでも人々は世界のどこでもマクドナルドを食べているという現実は変わらない。マクドナルドはアメリカ文化の象徴から、世界文化の象徴に変わったのだ。マクドナルドは世界117カ国に15000の店舗を構え、なお拡大中である。 マクドナルドは、店内で使用するトレイをポリエチレンから再生紙に変え、使用する油を植物性に変え、添加物に気を使い、出来るだけ各国政府や、世界中の消費者に気に入られようとしている。遺伝子組み替えのジャガイモを使ったフライドポテトを購入しないと納入業者に通告もした。


グローバル化反対の波にさらされるマクドナルド

グローバル化反対の波を乗り越え、BSEも乗り切ったと思われるファースト・フード大国マクドナルドにも陰りが見える。2002年10-12月期の決算で最終損益が3億4300万㌦の損失を計上したのだ。1965年に株式上場して以来始めてのことである。マクドナルドの全世界売り上げはそれでも前年比4%と増加している。今回の赤字は不採算の200店を2002年に閉鎖したこと加え、2003年にアメリカと日本で520店を閉めるのに伴うリストラ費用6億ドルが負担となったものである。 1998年―9年のグローバル化反対の波の中で、ヨーロッパ各地のマクドナルド店はアメリカのシンボルとみなされ、デモ隊の投石や破壊にあった。イギリスで1997年にNGOの活動家によってマクドナルドを非難するビラが大量にまかれた。第三世界の飢餓、熱帯雨林の消滅などの原因を作り、あらゆる成人病のもとにもなっているというものである。これに対してマクドナルドは名誉毀損で訴訟を起こした。裁判では被告であるNGO活動家が敗訴した。マクドナルド巻き返しの勝利である。しかし、判決の内容を仔細に読むと、動物虐待(たとえば鶏舎で閉じ込めて鶏を飼育しているなど)、低賃金労働、児童向け広告の違法性などはむしろNGOの言い分を認めてもいる。 こうしたさまざまな動きにもかかわらず、ヨーロッパでは、牛肉、チキン、ポテトの最大の購買者であるだけではなく、フランチャイズという形式で地域経済に貢献していると見られてもいる。6000店近いマクドナルドがさらに増殖中である。冷戦崩壊後西側に門戸を開いた東ヨーロッパではアメリカに対する親近感が強く、マクドナルドはむしろ歓迎される存在である。 アメリカでの22000人に1店舗という比率には及ばないものの、ヨーロッパでは50000人に1店舗前後という成長は続いている。 グローバル化のシンボルとして糾弾の対象になっているマクドナルドがビジネスとしては隆盛を誇っている現象を、ヨーロッパではマクドナルドパラドックスと呼んでいる。


マネー辞典 m-Words

詳細講義録 比較文化論 後期第5回 グローバル化する食文化と、世界を席巻するマクドナルドの軌跡


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