シュタイナー教育の世界への広がり

出典: Jinkawiki

目次

シュタイナー教育の思想

オーストリアで生まれ、ドイツやスイスで活躍した思想家ルドルフ・シュタイナーがアントロポゾフィーの人間観をもとに創設した教育である。

アントロポゾフィー 「人間の中の精神性を、宇宙における精神性へとつなげていく認識の仕方である」という言葉が残されており、宗教とは異なり認識の道を歩む提案である。同時に自己を発展させ、人間内部の精神性を活性化させる道でもある。

子どもの成長  第1段階:歯の生え変わり前(幼児期)。第2段階:葉の生え変わりから第二次性徴まで(児童期)。第3段階:第二次成長から成人までの第3段階に分けられると考える。その年齢ごとに組織の成長を助けるために理解して教育する必要がある。組織とは①手足・代謝組織:運動能力「オイリュトミー」②リズム組織:呼吸と血液循環、経験し感じたことの肉体へのあらわれ。③神経・感覚組織:意識の核としている。 第1段階では感覚による経験と意思による活動の結びつき「模倣」を大切にし、第2段階では文字書きのステップとして「フォルメン」という芸術感覚と共に学び、第3段階では思春期を迎えるためアイデンティティの発見のためのプログラムや体験実習などを中心とする。どの時期でも、芸術が共育の手段として特別な意味を持ち、想像力や創造性を高め、良いものに対する感覚を磨くことを目的としている。

世界への広がり

シュタイナー学校は、1919年・第一次世界大戦後ドイツに創立され、普遍的な人間の欲求を教育の中で実現することを意図していた。1925年ルドルフ・シュタイナーの死後、次々に広がり、スイス、オランダ、イギリス、ノルウェー、ハンガリー、アルゼンチン、アメリカに建てられた。その後、ドイツでは国家社会主義(ナチズム)の出現により経営の危機にいたる。しかし第二次世界大戦後、盛り返し、教師の養成も経て次々に広がりを見せた。

1956年には全62校(ベルギー、フランス、イタリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ブラジル)に創立。ブラジルでは、シュタイナーの理念のもと、貧困層の子ども達へ向けた教育・医療などから展開し、支援を受けながら広がっている。

1975年には全113校(オーストリア、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、カナダ)に創立。南アフリカではタウンシップのような考えも組み込まれながら、貧困を断ち切るための教育として広がっている。

1992年には全567校(リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、スペイン、ポルトガル、アイルランド、エストニア、ハンガリー、エジプト、ケニア、コロンビア、ペルー、チリ、ウルグライ、日本)という大きな創立の波を迎えた。日本でも、初めは8人から始まり、学校はNPО法人として長年たち、2004年に「教育芸術特区」を利用して学校法人として認められた。

2000年には全877校(アイスランド、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロヴェニア、クロアチア、ボスニア、ルーマニア、モルドヴァ、ウクライナ、ロシア、アルメニア、グルジア、イスラエル、カザフスタン、キルギス、ネパール、インド、タイ、台湾、タンザニア、ナミビア、)と東ヨーロッパとアジアに広がっている。ほかにも、マレーシア、フィリピン、ベトナムなど創立の準備をしているところもある。

治癒教育と福祉の文化

一般向けの普通教育学校という形で出発だったが、当初からシュタイナー学校と並行して、入学前の子どもやハンデを思う子どもの教育にも力が入れられてきていた。アントロポゾフィーによる治療教育施設や福祉施設も数多くあり、現在では世界43か国で549校存在する。(ドイツ・オーストリア・スイス・ベルギー・オランダ・フランス・イタリア・スペイン・ポルトガルイギリス・アイルランド・アイスランド・デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フィンランド・エストニア・ラトブィア・チェコ・クロアチア・ルーマニア・ウクライナ・ロシア・グルジア、イスラエル・キルギス・インド・ベトナム、オーストラリア・ニュージーランド・エジプト・ボツワナ・南アフリカ、メキシコ・コロンビア・ペルー・チリ・スリナム・ブラジル・アルゼンチン・カナダ・アメリカ、※日本は含まれていない)この施設の特徴は、子どもから大人まで一緒になっていることと、学校・作業場・療養施設・生活共同体、すべてが種別なく含まれているという点にある。シュタイナーは治療と教育は同じものだと考え、アントロポゾフィーの考えのもと、ハンデのある人への治療教育を進めている。そして世界への広がりとともに、その土地の特徴的な教育もでてきている。例)オランダ・・・1930年から治療教育とソーシャルセラピーの施設があり、現在28校ある。農業と介護を組み合わせた「介護農場」というものが特徴的である。

卒業生たちをどう評価するか・課題

シュタイナー学校は他の学校と学年の数え方が違うなどがあり、比べにくい点もあるが、大まかに見ても、大学進学の資格を手に入れることができる生徒は半分以上を超え、四分の一は大学進学をしている。また、卒業後は職業訓練校に行く場合も多く、様々な職業の分野に進んでいるということもある。世界にはいまだに卒業生を出していない学校がたくさんあると思うが、それらの学校の将来、または学校経営における金銭的な援助の問題、教員養成の特有な配慮などが課題となっている。


参考文献

「世界のシュタイナー学校はいま・・・」2005年発行:シュタイナー教育・友の会(ドイツ・ベルリン)編著


  人間科学大事典

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