テロリズム2

出典: Jinkawiki

terrorism

強制の手段として恐怖もしくは暴力を系統的に用いる考え方ないし行動。フランス革命期のジャコバン派の恐怖支配rgime de la terreur(1793年6月~94年7月)に由来するとされているが、語源上はともかく、テロリズムの実践は人類史上きわめて古い(第二次世界大戦前まではわが国では一般にテロルと訳されていた)。

1. 歴史的事例

歴史的にはフランス革命の過程におけるジャコバン派の恐怖による支配、ロシア・ナロードニキ「人民の意志」集団による政治的暗殺とツァーリスト支配者による恐怖支配、ロシア革命内戦期におけるソビエト権力による赤色テロルと白衛軍支配地域での白色テロル、1919年1月ドイツ革命と反革命の過程での革命家カール・リープクネヒト、ローザ・ルクセンブルク虐殺、ヒトラー権力によるユダヤ人、ナチス占領下のポーランド・ソ連における大量虐殺、旧日本軍による中国南京(ナンキン)での虐殺、ベトナム戦争時におけるアメリカ軍によるソンミ村などでの虐殺事件などが記録されている。しかし、これら歴史上のわずかの引例からもわかるように、権力を握る支配者集団が権力保持のため、これに反対する反権力集団に対して行使する暗殺・弾圧などの物理的強制と、その反対に、被支配者ないし革命集団が権力支配転覆のため、支配権力集団やその成員に対して行使する暗殺を含む恐怖による強制とがあって、テロリズムの語の意義はかならずしも一元的ではない。1930年代のスペイン内戦では、ファシスト・フランコ勢力側と人民戦線側との間で相互にテロルの応酬が行われたばかりでなく、人民戦線諸勢力の内部でもその主導権をめぐって激烈なテロルが行われたし、第二次大戦中のフランスのレジスタンス反ドイツ抵抗組織の内部でも一部には類似のことが行われた。

2. テロリズムの原因

いずれにせよテロリズムを実施する側は、それが国家権力ないしその道具である警察・軍隊・私兵的徒党であれ、国家権力に抵抗する反権力ないし革命集団であれ、自己の政治的、イデオロギー的正統性を主張することによってテロ行為を正当化するのであるが、テロ以外の他の手段(たとえば選挙や国民投票)によって当該社会の人民大多数の合意(同意)を得られるのであれば、テロに訴える必要はないわけであるから、テロリズムは本来的に近代の政治的民主主義とは両立しがたい。だが、発展途上世界ではもとより近代の政治的民主主義を達成した社会においても、その内部には民族的、人種的、階級的、経済的、その他さまざまの社会的差別と抑圧を受ける少数者集団が存在し、これらの集団の要求や願望は政治的民主主義のもとでも容易に実現しがたいし、また権力の側もこれらの少数者集団を往々にして統治しがたい集団として敵視しがちであるから、いずれの側からもテロリズムの原因は根絶しがたくなっている。

3. テロリズムの国際化

ことに1960年代以降、通信・交通手段の急激な発達と、経済の高度成長に伴う労働力の国際間の大量移動、先進工業化諸国と発展途上諸国との経済的格差の異常な拡大などによって、テロリズムもまた国際化した。わけても欧米先進諸国に支援されたイスラエルと、アラブ諸国との宿命的対立は、パレスチナ・ゲリラらによるテロ行動を激発させ、またアラブのテロに対してイスラエルによるレバノン南部その他のパレスチナ難民キャンプへの大量の報復爆撃など、テロリズムを国際的に先鋭化する最大の原因の一つとなった。日本赤軍による連続ハイジャックや大使館占拠、これらの日本赤軍メンバーのフィリピン、ペルーなどでの活動と逮捕、イタリアの赤い旅団やバーダー・マインホフら西ドイツ赤軍による政財界指導者の誘拐・暗殺、フランス極左の直接行動派による数々のテロ行動などは、1980年代におけるテロリズムの発現形態であるが、これらの西ヨーロッパ・テロ集団は、国家権力による弾圧に対抗するため、80年代に入ってユーロ・テロリズムとして相互に連帯しつつあるといわれた。また、北アイルランドのカトリック地域の分離独立を要求するIRA(アイルランド共和軍)も、長年にわたってテロ活動を続け、プロテスタントとイギリス軍はこれに対して報復を繰り返している。近年の例では、1996年末、ペルーのゲリラ組織トゥパクアマルによる日本大使公邸占拠事件と、フジモリ大統領による特殊部隊の公邸突入・ゲリラ全員射殺事件がある。

4. 国家テロリズム

イスラエルによるイラク原子炉設備の爆撃や、レバノン、エジプト、ヨルダンの一部領土占領とその住民の追放や弾圧、アメリカのレーガン政権による再三のリビア爆撃(1986)やグレナダ左翼政権への奇襲攻撃と転覆(1983)、チリのアジェンデ人民政権の転覆と革命派の虐殺(1973)、インドネシアにおける共産主義者の大量虐殺(1965)、1970年代なかばから続いているインドネシア軍の東チモール人民弾圧と虐殺などは、いわば国家権力の側からするテロ行為、すなわち国家テロリズムとみるべきである。このような国家テロリズムはいずれも、国家権力の危機に際して、もしくは大国の国家利益が危機にさらされている際に行使されており、社会的に組織された物理的強制という点では本質的に戦争と異なるところはない。1996年のサミット(先進国首脳会議)によるテロ防止の宣言は、国際的に反体制・反権力のテロを撲滅(ぼくめつ)しようという先進国共同の意志表明であって、国家によるテロ行為をやめようという約束ではない。


参照 http://100.yahoo.co.jp/detail/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0/

ハンドル名 けん


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