ナショナリズム4
出典: Jinkawiki
ナショナリズムについて
国民形成の思想と行動
文化的な共同体を基礎として政治社会=国家という枠組みをもつ国民が生まれるのは近代においてであるが、ナショナリズムはこのような近代的国民の独立、統一、発展を目指す思想と行動をさすものである。他方また、ナショナリズムは経済的ないし政治的発展においておくれをとった後発展したが、先行している国民に対して追いつき追い越そうとする際の行動及び思想であるともいえる。このことは近代ヨーロッパについてみれば顕著であり、市民社会と統一国家とを早い時期に完成したイギリスは自由貿易帝国主義を発展するが、ナショナリズムの思想や行動をもたないのに対して、ドイツやイタリアのような後進国では文化的民族としての統一がまずあり、そのあとでイギリス産業に対抗して自国産業の育成をはかるための保護関税政策がとられ、そのような動きの中で統一国家形成が追及された。ここでのナショナリズムは、先進国イギリスに追いつくための行動としてうまれている。このような古典的ナショナリズムとはやや異なるものとして、第二次世界大戦以後のアジア、アフリカ諸国で顕著になるナショナリズムがある。これらの諸国の多くはヨーロッパの国によって植民地とされた過去をもち、非主権的な統治が行われていた。例として、当時のEUでは東西の冷戦体制の崩壊やグローバル化の進展に伴う人の移動の活発化を受けて、合法・非合法の移民や難民の流入が急増しているとある。これらに抵抗しての文化的民族=国民の形成が追及されたのであった。 このようにナショナリズムは担い手たる国民が自己を存立させ統合させ、独立させ発展をはかろうとする思想と行動なのであるが、その国民のおかれている時代や状況に応じており、必ずしも一様なものとしては出現していない。
参考文献
佐々木毅(2005)『戦後史大事典』三省堂
村上直久(2009)『EU情報事典』大修館書店