バウチャー制度

出典: Jinkawiki

目次

バウチャー制度とは

バウチャーとは切符、クーポンなどの意味。財貨・サービスとの引換券をあらわす。アメリカで生まれた制度。
親に補助金を渡して入学した学校にそれを支払わせるか、あるいは私立学校が受け入れた生徒の数に応じた額の補助金を受けることができる。 制度の対象を一部の限られた生徒にするか、または全体にするかで意味合いが変わってくる。 目的は公立・私立学校間の補助金面での条件を対等にし、学費の面で私立に通えなかった子どもを助け、学校間の競争を促して学校の質をあげること。


アメリカのバウチャー制度

・1990年 ウィスコンシン州ミルウォーキー
対象となる生徒:公立小学校に通う(通う予定の)低所得家庭の子
非宗教系、市が定める条件をクリアしている、学費は取らない、生徒の選抜は抽選で行う私立学校のみが補助金を受け取ることが出来る。

・1995年 オハイオ州クリーブランド
対象となる生徒:公私関係なく幼稚園~小3(当初)高校生まで(現在)
宗教系の私立学校でも補助金を受け取れる。学費も一定の範囲内で請求できる。 対象となる生徒・家庭に所得制限はないが、所得によって金額を調整する。
※宗教系学校への補助金は政教分離原則に反するとして訴訟に持ち込まれたが、違憲ではないとされた。

・1999~2006年 フロリダ州
対象となる生徒:州統一テストで4年中2回落第点を取った公立学校に通う生徒
※「公的資金を使って均質な公教育を提供する」と定めた州憲法に違反する判断され、中止となる。

以上の他にも、所得制限を設けたものや指摘財団による抽選のものが行われている。


他国のバウチャー制度

・オランダ
ほとんどの公立・私立学校への補助金がバウチャーの形で決められる。 入学基準を決めることができる。通学区は全国。

・チリ
学費を徴収しなければ公立と同等の補助金を受けられる。 入学基準を決めることが出来る。

・イギリス
テスト結果を含めた学校の情報公開と、生徒数に応じた予算決定が行われている。

など。


日本におけるバウチャー制度

規制改革・民間開放推進会議による『文部科学省の義務教育改革に関する緊急提言』において、海外の成功例や教師の創意工夫を引き出す面からその検討が必要とされた。 「規制改革・民間開放の推進に関する第2次答申」は、『バウチャー構想の実現』として、海外が教育の質の維持・向上に成功していることから特区での実験を視野に入れて考えるべきとした。
これを受けて文部科学省は「教育バウチャーに関する研究会」を設立し会合を重ねてきた。 機会均等・公平性が重要な義務教育段階でこの制度を導入する意義は少ないのではないか、バウチャー以外に情報公開や学校評価といった方法があるのではないか、などの意見がある。 安倍政権時には導入が争点となったが、慎重論や首相辞任で見送りとなった。


争点

私立は公立よりも教育の質が高いか
海外での導入では、バウチャー制度によって私立にいった生徒の学力が上がったという報告もある。 しかしそうでなかった地域もあるし、それがそのまま日本でも通用するか、実証はされていない。 貧困家庭にも選択権を与えるという面では有効であるとされている。

バウチャー制度は公立校の質向上につながるか
私立校が生徒選抜をするということは、選抜をすることのない公立から生徒が出て行くことを公立は止めることができないということである。 また私立学校は自ら教育の質を高めるより優秀な生徒を選抜することで平均学力を向上させるかもしれない。 公立の努力が必ずしも実るわけではない。

公立と私立の対等な競争とは
生徒選抜や支出の自由度で私立が有利にはならないか。 実践例でしばしば学費の不徴収、生徒選抜禁止が私立に条件としてつけられているのはこのためである。

格差は広がるか
格差とは教育達成度の差、所得階層間の差など。 例えば所得制限を設けたバウチャー制度では、公私の格差は広げるが、階層間の差は縮めることが出来る。

定員
定員を決めるということはバウチャー制度の効果に差が出る、また生徒の選抜が行われるということである。 選抜が行われるということは、優秀な生徒ほど私立へ流れ、もれた生徒が公立へ流れるということである。

私立の学費
バウチャー制度のほかに高額な学費を徴収するのであれば、制度の効果が出ない。 また寄付として資金の収集が許可されたとき、寄付の有無で生徒が選抜される恐れもある。

私立のない地域
バウチャー制度により新たな私立が設立されることがあるだろう。 その推進のために学校設立の要件を緩めることも考えられる。

そのほか日本においては、日本国憲法第89条に、公金を公でない組織に支出してはならないとある。私立学校助成金自体が違憲となる可能性があり、バウチャー制度導入の際にはこの点も争われると考えられている。



参考URL

ウィキペディア
文部科学省 教育バウチャーに関する研究会
内閣府によるレポート


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