フィンランドの教育10

出典: Jinkawiki

 

目次

習熟度別編成の中止

 1985年、国を挙げて習熟度別編成授業を中止した。フィンランドの教育研究者たちが、習熟度別編成は長期的に見て「できる子」には良い影響を与えず、「できない子」にとっては何らプラスにならないと分析し、習熟度別編成をやめるべきだと判断を下した。つまり、できない子の救済にはならないと分析したのである。教育研究者は、欧米社会に広く見られていた習熟度編成方式から、統合学級方式、フィンランドの教育学でいう「異質生徒集団方式に取り替えたのである。それは、平等を推進し、競争を排除する教育方法をとることにしたのである。

国家カリキュラム大綱

 フィンランドでは、一連の根本的な教育改革は1993年の国会で採択された法律により、1994年から実施された。そして、行政的な規制緩和の一環としてほとんどの教育権限を地方自治体に移管した。また、1994年、国は学年別の記述をなくし最終学年時点の達成目標を大まかに示しただけの「国家カリキュラム大綱」を指定することのみにした。指定内容の分量は、かつての3分の1以下にまで削減された。この時点で、教えることを重視する教育から、学ぶことを重視する教育へと、教育観が根本的に転換された。

フィンランドの評価

 日常的に子どもの学力が教師によって把握されており、その都度適切な対処がなされるため序列をつけたり、他人と比較したりするためのテストはない。つまり、16歳まで他人と比較するテストがないことになる。単純な競争ではなく、個人の達成度を重視した教育がなされているといえる。

クラブ活動

 放課後のクラブ活動は、学校の施設を使用するが社会教育の仕事となり、学校の教師が担当するわけではない。クラブ活動は、スーパーアドバイザーといわれる別の指導員があたる。この専門家による指導員を求めて、他の学校の生徒も加わり、セカンドスクールへと変わる。地域によっては、特別な指導員を探せない場合に学校の教師が当たることもある。これには追加給与が支払われる。教師は正規の授業をこなせば、そのほかの時間にアルバイトをしてもよいことになっている。

少人数クラス

クラスの定員は地方自治体ごとに決める。授業では、一般的に1クラス生徒数が24人までとされてきた。さらに、外国語では、このクラスを半分に分ける。このように、フィンランドでは少人数のクラスづくりがめざされてきた。統計上の計算によると、1クラスあたりの生徒数は16人が平均となっている。

フィンランドの教員

フィンランドでは、教師の職は社会的に尊敬されている。学校の教師のことを「国民のロウソク」と呼ぶこともある。そして、各調査では高校生が志望する職種の1位、2位を争う。大学の教育学部のどこも人気があり、教育系の大学に入学できるのは志願者の1割程度である。このため、フィンランドンでは他の職と比べても極めて高い能力と意欲の高い教師を確保できる。


参考文献

福田誠治(2006)「競争をやめたら学力世界一」朝日新聞社

熊倉啓之(2013)「フィンランドの算数・数学教育」明石書店


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