ロシアからのガス輸入

出典: Jinkawiki

ロシアからのガス輸入

 サハリン―1では、日本に天然ガスをパイプラインで持ってこようということを、ずっと模索していた。2004年11月に、結局こはだめだということで、当時のエクソンのレイモンド会長が小泉総理のところまで来て、計画の打ち切りを伝えた。そして中国に対して売ることで合意した。  一方で、ロスネフチは、LNGにして輸出したいと言っているがこれはロシア側の本音である。一部の日本のユーザーは、依然パイプラインを考えてほしいという気持ちを表明している。ただ、正式な申し入れはしていない。すぐLNGにできるかどうかは、まだなかなかわからない。もう一つのLNG計画は、サハリン―2である。これを拡張するということで、こちらは、ロスネフチと対抗して、ガスプロムとシェルが検討している。  日本の輸入しているLNGの値段は、2013年で百万英国熱量単位当たり16ドルであった。同じ頃、ドイツの国境でロシアのパイプラインの天然ガス価格がだいたい10ドル交であるから、LNGに比べてパイプラインのガス価格は、基本的にかなり安いレンジで推移する。基本的には、LNGよりもパイプラインという可能性を期待する声がだんだん大きくなっている。  六本木ヒルズでのエネルギー利用の形態を紹介する。ここの特徴は、ガスのコジェネレーションで電気と熱を供給するという形でやっているということだ。ビルの地下にガスによる発電機があって、このような方式を「分散型発電」といっている。天然ガスが来ていれば、必ず発電できる。絶対に停電しないということで、特に外資系は喜んで、すぐにテナントが埋まってしまった。ガスを燃焼させて、タービンを回して電気ができる。一方でボイラーからは、熱も出てくる。エネルギー効率が70%ぐらいまでいく。これからの省エネで一番効いてくると言われている方式で、ヨーロッパも当然やっている。  さらに日本では、同じくもう一つの分散型発電としてガスを使う燃料電池「エネファーム」というものがある。これだと各家庭で必要な電気をガスから自前で発電して、足りないときは電力会社から買うという形にする。もちろん電力会社としては、このような分散型発電は嫌でいままでは否定的だったが、東日本大震災以降、だいぶ風向きが変わってきた。ただ、これをやるためには、パイプラインでガスが来ることが前提である。ところがいま、LNG受け入れ基地からのパイプライン自体ごく限られた範囲にしかきていないため、これをもっと繋げていって、非常に広範囲に、面的にカバーする形が本当は望ましい。そのためには、幹線ガス・パイプラインを引く必要がある。韓国は将来的には、ロシアからのガス・パイプラインを想定しているので、初めからこのような広域のパイプライン・ネットワークを作った。日本は、LNG基地があるとそこで扇形に狭い範囲だけで広がるだけなのだが、韓国は広域のパイプライン網をしっかり作っている。やはり、LNGとパイプラインを比較すると、近い距離では当然パイプラインの方が安い。そのようなわけで、日本における天然ガスパイプラインが議論されているところである。一方で、ロシア側がLNGを優先しているためすぐにできないとは思うが、このような可能性は、常に検討しておく必要がある。天然ガスのパイプラインができると、マイクロガスタービンによって、分散型で併熱供給、省エネができるという期待ができる。サハリン、東シベリアという資源地域が近くにあるので、そのようなところと国際パイプラインで連結することで、安定的で低廉で、柔軟なエネルギー供給ができるだろう。これはエネルギー安全保障上、寄与が大きいということである。

参考文献

塩川伸明・池田嘉郎編(2016)東大塾 社会人のための現代ロシア講義 東京大学出版会 河原祐馬・島田幸典・玉田芳史編(2011)移民と政治 ナショナル・ポピュリズムの国際比較 昭和堂


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