北方領土2

出典: Jinkawiki

北方領土とは

 現在も、日本とロシアの間で論争が続いている北方領土。日本政府は「北方領土」と呼んでいるが、中立的な立場の言葉ではない。ロシア側は「南クリル諸島」と呼ぶ。クリル諸島とは日本語で千島列島のことであり、通常北千島、南千島と分けられる。日本政府が主張する「北方領土」は歯舞、色丹、国後、択捉からなっている。日本政府は現在、歯舞と色丹は北海道の一部であると主張し、国後と択捉は北海道には属さないが日本の領土であると説明する。これに対し、ロシア側は4島全てが北海道に属せず、ロシア領のクリル諸島に属するという立場だ。これは、サンフランシスコ条約で、日本が放棄した「千島」はどこからどこまでかという微妙な問題にかかわる。北方領土の面積合計は5032平方キロで千葉県に匹敵する。日本政府が北海道の一部と主張する歯舞と色丹を合わせて350平方キロとされ、残りの国後、択捉の4682平方キロと比べると、圧倒的に小さい。ロシア側は歯舞と色丹は日本側に引き渡してもいいとの立場を示したこともあるが、北方四島全体の7%しかないのだ。地質学的には火山活動から形成された島がほとんどである。また、環太平洋地震帯の一部をなしており、地震が多数発生する地域である。ロシアにとっては、太平洋への出口としての軍事・戦略的重要性を持つのである。

北方領土の選挙

 北方領土では、首長に当たる「地区長」がトップで、行政を担当する「行政庁」がナンバー2である。地区長は地区議会の議長も務める。人口規模からみて、村長や助役の役回りであろう。国後・色丹の南クリル地区では90年以降、ワシリー・ソロムコ氏が地区長を務めている。ウクライナ生まれで、極東の警察学校を出た後、国後の警察署長を経て09年の地区長選挙で当選した。行政全般を担当する地区行政長は、両地区とも公募・選考システムで選ばれる。クリル地区と南クリル地区は同じサハリン州に属しながら、交流はほとんどなく、行政的に完全に分離されている。

北方領土経済の実態

 択捉と国後・色丹の経済力を比較すると、択捉が優位に立つ。平均賃金や所得格差が大きく違うからである。人口規模からみて、最大企業をもつ択捉のほうが税収は多い。国後・色丹には図書館が5か所もあり、人口の割に多い。スポーツ施設や病院も多数存在する。択捉の企業数は11年時点で176。工場により生産、輸送も行っているのだ。学校や幼稚園もあり、年金受給者もいるのである。


参考文献

佐々木毅・鶴見俊輔・富永健一・中村政則・正村公宏・村山陽一郎(2005)「戦後史大事典」三省堂

名越健朗(2016)「北方領土の謎」海竜社

黒岩幸子・石郷岡建(2016)「北方領土の基礎知識」東洋書店新社


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