ESD

出典: Jinkawiki

目次

ESDの意味と環境教育との関連性

 ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳される。元々は1992年のリオデジャネイロで開催された国際環境開発会議において、「持続可能な発展のための教育の重要性」がアジェンダ21の中で提唱されたことに始まる。今日、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があるが、ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動を言う。つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育と密接に関連している。


ESDで目指すこと

(1)ESDの目標 ・全ての人が質の高い教育の恩恵を享受すること。 ・持続可能な開発のために求められる原則、価値観及び行動が、あらゆる教育や学びの場に取り込まれること。 ・環境、経済、社会の面において持続可能な将来が実現できるような価値観と行動の変革をもたらすこと。


(2)ESDで育みたい力 ・持続可能な開発に関する価値観(人間の尊重、多様性の尊重、非排他性、機会均等、環境の尊重等) ・体系的な思考力(問題や現象の背景の理解、多面的かつ総合的なものの見方) ・代替案の思考力(批判力) ・データや情報の分析能力 ・コミュニケーション能力 ・リーダーシップの向上


(3)学び方・教え方 ・「関心の喚起 → 理解の深化 → 参加する態度や問題解決能力の育成」を通じて「具体的な行動」を促すという一連の流れの中に位置付けること。 ・単に知識の伝達にとどまらず、体験、体感を重視して、探求や実践を重視する参加型アプローチをとること。 ・活動の場で学習者の自発的な行動を上手に引き出すこと。


(4) 我が国が優先的に取り組むべき課題 先進国が取り組むべき環境保全を中心とした課題を入り口として、環境、経済、社会の統合的な発展について取り組みつつ、開発途上国を含む世界規模の持続可能な開発につながる諸課題を視野に入れた取組を進めていくこと。(引用「我が国における「国連持続可能な開発のための教育の10年」実施計画」)


ESDの本質

 ESDは、平和教育、人権教育、環境教育、福祉教育、多文化共生教育、開発教育、ジェンダー教育などの教育活動を包括的(holistic)・潜在的(potential)・融合的(united)にしていくプロセスを本質としている。それは、単に様々な主体やテーマの相互理解や連携といった表面的なつながりや関わりではない。異なる学びのスタートを切った多種多様な教育が、それぞれの活動に固執せず、互いに対話し、融合していく必然的に必要になってくる。さらに、ESDは多様な主体が共通の課題を見出し、実は目指すべき問題解決への活動が同じ方向を向いていることに全ての人々が気づき、協働敵に実践することにある。すなわち、始まりは別々の入り口の教育活動であったとしても、実は解決すべき問題の本質は、持続不可能性という重要な概念をもとに同じ教育活動であることへの「気づき」から「行動」に変容していくプロセスがESDの本質である。


岡山市京山公民館の事例

 岡山市京山公民館は、人口約70万人の政令指定都市である岡山市の中心部に位置している。この公民館は、ESDを積極的に行うまさに持続可能な社会づくりの担い手の育成を目指す事業である。公民館の近隣には公立・私立大学を含む計10以上の学校施設、県の生涯学習センター、市立図書館、動物園、岡山大学の農場や自然教育環境林など複数の教育。学習施設があり、学習環境としては恵まれた地区に位置しているのである。  京山公民館は、2004年以降、地域及び学校と連携したESDに関する事業を推進してきた。2015年度で約11年間の実践を継続していることになる。地域や学校と連携した持続可能な社会づくりの担い手の育成をねらいとして、ESD推進事業を公民館事業の中核に位置づけ、地域や学校と一体となり多様なプログラムを計画・実施している。具体的な事業として例えば、川とともに生きる暮らしと文化の再構築を目指す事業として、a.水辺の環境点、b.「緑と水の道」ワークショップならびに映画「地域を育んだ用水」の制作、c.水神祭、d.上下流交流などの広域交流と体験事業などがある。さらに(2)京山地区を流れる旭川の夏・冬源流体験エコツアーや、(3)町内会、岡山大学、岡山市各課、市議会、県の都市計画担当者等と連携・協力した「緑と水の道」プランづくり、(4)「地域を育んだ用水」の映画製作、(5)劇団公民館京山「かわのこい」の演劇・ミュージカルの実施などがあり、いずれも地域の環境保全を重視する環境教育に関する多様な事業を展開している。


ユネスコスクール

 ユネスコスクールは、ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校である。文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールをESDの推進拠点として位置付けている。平成27年6月現在、世界182か国の国・地域で10,422校のユネスコスクールがある。日本国内の加盟校数は、「国連持続可能な開発のための教育の10年(DESD)」が始まった平成17年から飛躍的に増加していて、平成27年5月時点で939校となり、1か国当たりの加盟校数としては、世界最大となっている。  ユネスコスクールの活動目的は、ユネスコスクール・ネットワークの活用による世界中の学校と生徒間・教師間の交流を通じ、情報や体験を分かち合うことと、 地球規模の諸問題に若者が対処できるような新しい教育内容や手法の開発、発展を目指すことである。就学前教育・小学校・中学校・高等学校・技術学校・職業学校、教員養成機関は、国公私立を問わずユネスコスクールに加盟することができるが、ユネスコの理念に沿った取組を継続的に実施していることが必要である。加盟することのメリットは、世界のユネスコスクールの活動情報の提供、世界のユネスコスクールと交流する機会の増加、米国、韓国、中国等海外との教員交流、世界の教育事情、国連機関の活動の把握、ESDのための教材、情報の提供、ユネスコスクールHPを通じた情報交換、ワークショップ、研修会への参加、国内の関係機関との連携強化などである。加盟校に求められることしては、年に一度、日本ユネスコ国内委員会に報告書の提出や、ユネスコやその関係機関・団体が行う様々な活動に参加することである。


参考文献

小玉敏也、福井智紀『学校環境教育論』筑波書房

五島敦子、関口知子『未来をつくる教育ESD持続可能な多文化社会をめざして』明石書店

文部科学省HP [1]

岡山市京山公民館HP [2]


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