発達障害
出典: Jinkawiki
2010年1月24日 (日) 22:38の版 Daijiten2009 (ノート | 投稿記録) (→定義 と概念) ← 前の差分へ |
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== 発達障害とは == | == 発達障害とは == | ||
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(1)全般的な認知機能の障害(知的障害) | (1)全般的な認知機能の障害(知的障害) | ||
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(2)社会性の障害(自閉症を中心とする広汎性発達障害) | (2)社会性の障害(自閉症を中心とする広汎性発達障害) | ||
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(3)特定の発達の側面のみが限定的に障害される、学習の障害などの部分的障害(特異的発達障害、LD) | (3)特定の発達の側面のみが限定的に障害される、学習の障害などの部分的障害(特異的発達障害、LD) | ||
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(4)注意を中心とする行動の障害(ADHD) | (4)注意を中心とする行動の障害(ADHD) | ||
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(1)つねに乳児期か児童期の発症であること | (1)つねに乳児期か児童期の発症であること | ||
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(2)中枢神経系の生物学的成熟に強く関係する機能の発達の障害あるいは遅れであること | (2)中枢神経系の生物学的成熟に強く関係する機能の発達の障害あるいは遅れであること | ||
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(3)多くの精神障害を特徴づける傾向のある軽快や再発のない安定した経過であること | (3)多くの精神障害を特徴づける傾向のある軽快や再発のない安定した経過であること | ||
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(1)障害された機能には言語・視空間機能および協調運動が含まれ、成長するにつれてこれらの障害は次第に軽快するのが特徴である。 | (1)障害された機能には言語・視空間機能および協調運動が含まれ、成長するにつれてこれらの障害は次第に軽快するのが特徴である。 | ||
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(2)通常、遅滞や障害は、その発現が明確にとらえられるよりもずっと前から存在しており、正常な発達期間を経た後に発症することはない。 | (2)通常、遅滞や障害は、その発現が明確にとらえられるよりもずっと前から存在しており、正常な発達期間を経た後に発症することはない。 | ||
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(3)同様の障害あるいは類似した障害が家族歴に認められることが多く、遺伝的要因が関与していると考えられている。 | (3)同様の障害あるいは類似した障害が家族歴に認められることが多く、遺伝的要因が関与していると考えられている。 | ||
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(4)環境要因が発達障害の症状形成過程に影響していることはしばしば認められるが、発症の原因となることはない。 | (4)環境要因が発達障害の症状形成過程に影響していることはしばしば認められるが、発症の原因となることはない。 | ||
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(5)多くの症例では病因は不明で、それぞれの発達障害の教会が重なり合ったり、不明瞭なことが多い。 | (5)多くの症例では病因は不明で、それぞれの発達障害の教会が重なり合ったり、不明瞭なことが多い。 | ||
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+ | == 新しい障害観としての発達障害 == | ||
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+ | '''医学モデルから社会モデルへ''' | ||
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+ | 障害を、その意図のもつ固有の疾病・疾患から発生する特定の能力・機能の低下ととらえる従来の医学モデルでは、アプローチの仕方としては、治療や訓練・指導が中心となる。つまり、障害をその当事者個人に固有の特性としてとらえるものである。 | ||
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+ | 対して、社会モデルとは障害を社会的文脈との関係においてとらえようとする見方であり、いかに重い障害があろうとも、社会参加をめざし、そのための社会的支援を用意しようというのである。そのため、障害の改善や社会参加のためのアプローチは、当事者だけでなく環境にも向けられることになる。 | ||
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+ | この医学モデルと社会モデルについて、WHOは1980年に、「国際障害分類(ICIDH)」を発表した。この障害概念は、疾病→機能・形態障害→社会的不利から構成される。しかし、この障害概念は教育・福祉の関係者からは環境や生活条件が十分に考慮されず、支援のアプローチが機能障害への治療・訓練に限定されるとの問題点が指摘された。 | ||
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+ | その後、1990年代にWHOで改訂の議論が進められ、2001年5月に「国際生活機能分類(ICF)」が採択された。ICFは従来の機能障害と社会的不利に依拠した障害分類を見直し、多様な「環境因子」を重視し、障害の活動や参加を機能的に評価している。障害児・者の医療・教育・福祉関係者の共通言語として活用することで具体的な支援に結びつけることが意図されている。したがって本人のプラスの側面を評価するための肯定的な表現が用いられている。 | ||
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+ | '''発達障害者支援法の成立''' | ||
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+ | アメリカの精神遅滞学会は2007年1月からその名称をアメリカ知的障害・発達障害学会(AAIDD)と変更した。その背景には、これまで十分に定義されてこなかった、したがって十分な支援が用意されてこなかった、知的な遅れの比較的軽度な人々も含めて対応していこうとの意図がある。 | ||
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+ | これと時を同じくして、我が国においても、これまでの知的障害者福祉法、身体障害者福祉法、精神保健福祉法で対象とされていなかった、すなわち、いわば法の谷間に置き去りにされていた、発達障害のある人たちを対象にした発達障害者支援法が成立した。この法律では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」と規定している。 | ||
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+ | これまで研究者の間には、発達障害を広義にとらえ、知的障害はそこに含まれるとする見方もあり、発達障害者支援法でいうところの発達障害がきわめて限定的な用語となっていることには違和感がある。知的障害と発達障害の用語に関しては今後も議論が続けられると予想される。 | ||
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+ | '''特別支援教育の対象''' | ||
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+ | 2003年3月に文部科学省の調査研究協力者会議によって取りまとめられた「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」では、「特別支援教育とは、従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的ニーズを把握して、そのもてる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである」と述べている。 | ||
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+ | これまで日本の特殊教育で対象としてきた障害のある児童生徒に加えて、学習障害(LD)注意欠陥/多動性障(ADHD)、高機能自閉症などの経度発達障害といわれる特別な教育ニーズをもつ児童生徒を含めて教育していこうするのが特別支援教育であり、特殊教育と比較して、教育する児童生徒の対象範囲が拡大していることがあげられる。 | ||
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+ | ''参考文献'' | ||
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+ | 特別支援教育の基礎知識 橋本創一 霜田浩信 林安紀子 池田一成 小林巌 大伴潔 菅野敦 編著 | ||
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+ | 発達障害児の心と行動 太田昌孝 | ||
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+ | 発達障害児の基本理解 山崎晃資 宮崎英憲 須田初枝 編著 |
最新版
発達障害とは
中枢神経系の高次機能の障害が推測され発達期(18歳くらいまで)に生じる生活や学習などに困難さを示すものをいう。発達障害は一般的に、
(1)全般的な認知機能の障害(知的障害)
(2)社会性の障害(自閉症を中心とする広汎性発達障害)
(3)特定の発達の側面のみが限定的に障害される、学習の障害などの部分的障害(特異的発達障害、LD)
(4)注意を中心とする行動の障害(ADHD)
に大きく分類される。医学領域でADHDは行動障害に分類されているが、発達障害の枠組みに入れることの方が多い。
定義 と概念
現在使用されている診断基準にアメリカ精神医学会(APA)のDSM-IV-TR(診断と統計マニュアル第4版テキスト改訂版:2000)と世界保健機関(WHO)のICD-10(国際疾病分類規準第10版)がある。
アメリカ精神医学会(APA)の考え方
精神医学の診断分類体系の中で「発達障害」が明確な形で取り上げられたのは、1980年に公刊されたアメリカ精神医学会の「精神障害の診断の統計のためのマニュアル・第3版(DSM-Ⅲ」が始めてである。DSM-Ⅲでは、知的障害として精神遅滞を、発達障害として広汎性発達障害と特異的発達障害をまとめたが、1987年の改訂版(DSM-Ⅲ-R)では、「発達障害」という新しい項目のもとに包括された。そして、精神遅滞では「全般的な遅れ」が、PDD(自閉症など)では「広汎な領域における発達の質的な歪み」が、そしてSDDでは「特定の技能領域の獲得の遅れまたは失敗」が特徴であると記載された。発達障害は慢性の経過をとり、障害のいくつかの徴候は固定した形で成人期まで持続するが、軽症例では適応障害が改善されることもある。
その後、1994年にAPAはWHOのICD-10との互換性を考慮して、第4版(DSM-Ⅳ)をまとめ、2000年にはDSM-Ⅳの診断基準が一部変更されDSM-Ⅳ-Text Revision(DSM-Ⅳ-TR)が公刊されたが、発達障害関連の診断基準についての大幅な修正はない。
世界保健機関(WHO)の考え方
1992年に公刊されたWHOの「国際疾病分類・第10版(ICD-10)」では、精神遅滞にはあらゆるタイプの精神遅滞が合併し得るし、症状の発現には社会的および文化的な影響が関与していることから「精神遅滞」を独立的に扱い、「心理的発達の障害」に共通するものとして次の3項目をあげている。
(1)つねに乳児期か児童期の発症であること
(2)中枢神経系の生物学的成熟に強く関係する機能の発達の障害あるいは遅れであること
(3)多くの精神障害を特徴づける傾向のある軽快や再発のない安定した経過であること
さらに、発達障害について次のように述べている。
(1)障害された機能には言語・視空間機能および協調運動が含まれ、成長するにつれてこれらの障害は次第に軽快するのが特徴である。
(2)通常、遅滞や障害は、その発現が明確にとらえられるよりもずっと前から存在しており、正常な発達期間を経た後に発症することはない。
(3)同様の障害あるいは類似した障害が家族歴に認められることが多く、遺伝的要因が関与していると考えられている。
(4)環境要因が発達障害の症状形成過程に影響していることはしばしば認められるが、発症の原因となることはない。
(5)多くの症例では病因は不明で、それぞれの発達障害の教会が重なり合ったり、不明瞭なことが多い。
新しい障害観としての発達障害
医学モデルから社会モデルへ
障害を、その意図のもつ固有の疾病・疾患から発生する特定の能力・機能の低下ととらえる従来の医学モデルでは、アプローチの仕方としては、治療や訓練・指導が中心となる。つまり、障害をその当事者個人に固有の特性としてとらえるものである。
対して、社会モデルとは障害を社会的文脈との関係においてとらえようとする見方であり、いかに重い障害があろうとも、社会参加をめざし、そのための社会的支援を用意しようというのである。そのため、障害の改善や社会参加のためのアプローチは、当事者だけでなく環境にも向けられることになる。
この医学モデルと社会モデルについて、WHOは1980年に、「国際障害分類(ICIDH)」を発表した。この障害概念は、疾病→機能・形態障害→社会的不利から構成される。しかし、この障害概念は教育・福祉の関係者からは環境や生活条件が十分に考慮されず、支援のアプローチが機能障害への治療・訓練に限定されるとの問題点が指摘された。
その後、1990年代にWHOで改訂の議論が進められ、2001年5月に「国際生活機能分類(ICF)」が採択された。ICFは従来の機能障害と社会的不利に依拠した障害分類を見直し、多様な「環境因子」を重視し、障害の活動や参加を機能的に評価している。障害児・者の医療・教育・福祉関係者の共通言語として活用することで具体的な支援に結びつけることが意図されている。したがって本人のプラスの側面を評価するための肯定的な表現が用いられている。
発達障害者支援法の成立
アメリカの精神遅滞学会は2007年1月からその名称をアメリカ知的障害・発達障害学会(AAIDD)と変更した。その背景には、これまで十分に定義されてこなかった、したがって十分な支援が用意されてこなかった、知的な遅れの比較的軽度な人々も含めて対応していこうとの意図がある。
これと時を同じくして、我が国においても、これまでの知的障害者福祉法、身体障害者福祉法、精神保健福祉法で対象とされていなかった、すなわち、いわば法の谷間に置き去りにされていた、発達障害のある人たちを対象にした発達障害者支援法が成立した。この法律では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」と規定している。
これまで研究者の間には、発達障害を広義にとらえ、知的障害はそこに含まれるとする見方もあり、発達障害者支援法でいうところの発達障害がきわめて限定的な用語となっていることには違和感がある。知的障害と発達障害の用語に関しては今後も議論が続けられると予想される。
特別支援教育の対象
2003年3月に文部科学省の調査研究協力者会議によって取りまとめられた「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」では、「特別支援教育とは、従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的ニーズを把握して、そのもてる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである」と述べている。
これまで日本の特殊教育で対象としてきた障害のある児童生徒に加えて、学習障害(LD)注意欠陥/多動性障(ADHD)、高機能自閉症などの経度発達障害といわれる特別な教育ニーズをもつ児童生徒を含めて教育していこうするのが特別支援教育であり、特殊教育と比較して、教育する児童生徒の対象範囲が拡大していることがあげられる。
参考文献
特別支援教育の基礎知識 橋本創一 霜田浩信 林安紀子 池田一成 小林巌 大伴潔 菅野敦 編著
発達障害児の心と行動 太田昌孝
発達障害児の基本理解 山崎晃資 宮崎英憲 須田初枝 編著