障害者自立支援法
出典: Jinkawiki
2010年2月2日 (火) 10:17の版 Daijiten2009 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
2010年2月2日 (火) 10:37の版 Daijiten2009 (ノート | 投稿記録) 次の差分へ → |
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しかし日本は、各法律で示している障害者の定義が不明確であり、その判定基準は医学的判断が強い。世界の多くの国はICF(国際生活機能分類)の考え方を採用しており、障害者数において日本と明確な相違が認められる。また、障害者施策の根幹はなんといっても財源であるが、国民総生産に対する障害者福祉施策の財源の比率を2001年度で見ると、日本は0.66%、米国がその2倍、ドイツは5倍、スウェーデンはその9倍の予算を使っている。さらに脱施設化に関しても、施設に入所している知的障害者の数において米国は日本の4分の1以下、スウェーデンに至っては10分の1以下であり、ほとんどが地域生活に移行している。精神障害でも同じことが以前から指摘されつづけている。先進諸国の中で日本だけ精神病床が2~7倍と多く、入院期間も桁外れに長いことからも、いかに日本の障害者施策が貧困であるかは明白である。この状況の打開に少しでも役立つことを期待して、自立支援法が成立されたのである。 | しかし日本は、各法律で示している障害者の定義が不明確であり、その判定基準は医学的判断が強い。世界の多くの国はICF(国際生活機能分類)の考え方を採用しており、障害者数において日本と明確な相違が認められる。また、障害者施策の根幹はなんといっても財源であるが、国民総生産に対する障害者福祉施策の財源の比率を2001年度で見ると、日本は0.66%、米国がその2倍、ドイツは5倍、スウェーデンはその9倍の予算を使っている。さらに脱施設化に関しても、施設に入所している知的障害者の数において米国は日本の4分の1以下、スウェーデンに至っては10分の1以下であり、ほとんどが地域生活に移行している。精神障害でも同じことが以前から指摘されつづけている。先進諸国の中で日本だけ精神病床が2~7倍と多く、入院期間も桁外れに長いことからも、いかに日本の障害者施策が貧困であるかは明白である。この状況の打開に少しでも役立つことを期待して、自立支援法が成立されたのである。 | ||
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+ | この法律の国会への提案理由説明によると、主題を「障害児及び障害者の地域における自立した生活を支援する」とし、現状認識として「身体障害、知的障害、精神障害といった障害種別等によって福祉サービスや公費負担医療の利用の仕組みや内容などが異なっており、これを一元的なことにすることや、その利用者の増加に対応できるよう、制度をより安定かつ効率的なものとすることが求められております」となっている。主な内容として次の5つを掲げている。 | ||
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+ | ①自立支援給付は障害福祉サービス、自立支援医療、補装具の購入などに要する費用の支給とし、当該給付を受けようとする者は、市町村等に申請を行い、その支給決定等を受けようとする者は、市町村等に申請を行い、その支給決定等を受けることとする。 | ||
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+ | ②自立支援給付の額は、障害福祉サービス等に通常要する額の100分の90を原則として給付割合の引き上げを行うなど、負担の軽減を講ずる。 | ||
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+ | ③市町村および都道府県が行う地域生活支援事業に関することを定める。 | ||
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+ | ④市町村および都道府県は、国の定める基本方針に則して障害福祉サービスや地域生活支援事業等提供体制の確保に関する障害福祉計画を定める。 | ||
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+ | ⑤自立支援給付に要する費用は一部都道府県が思弁するものを除き市町村が支弁し、その4分の1を都道府県が、2分の1を国が、それぞれ負担する。 | ||
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+ | 今までの障害福祉財源は裁量的経費であったが、この法律による財源は一部を除いて義務的経費とするという、財源確保についての大きな変化が含まれている。 |
2010年2月2日 (火) 10:37の版
障害者自立支援法は平成17年11月に公布され、障害者の地域生活と就労を進め、自立を支援する観点から、これまで障害種別ごとで異なる法律に基づいて提供されてきた福祉サービス、公費負担医療等について、共通の制度のもとで一元的に提供する仕組みに改めたものである。
理念と背景
2004年10月12日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部は「今後の障害保健施策について」の副題を「改革のグランドデザイン案」(以下、グランドデザイン)として公表した。この案は、地域の基盤や実施体制の整備に一定の準備期間を要する項目や、制度の維持可能性の確保の観点から速やかに実施すべき項目等に区分して、実施スケジュールを整理するとし、障害者固有の問題については「精神保健医療福祉の改革ビジョン」にもとづき改革を進めるとしている。このグランドデザインを示した国は、同年12月まで介護保険サービスの障害者への拡充を模索しつづけ、財源確保問題も解決しようとしていた。しかしその実現が困難となり、障害者福祉施策の統合をめざして2005年2月、通常国会に「障害者自立支援法案」を上程した。
この障害者自立支援法(以下、自立支援法)は、身体、知的、精神の三障害を統合し、生まれてから死ぬまでのライフサイクルに対応させた‘総合’の理念と、施設福祉から地域ケアへの移行という‘脱施設化’と、制度が持続可能な財源確保を行うという理念のもとに作られた。これは、数十年続いてきた日本の障害保健福祉政策において最も大きな改革といえる。身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法、児童福祉法をまとめた法律となっている。
しかし日本は、各法律で示している障害者の定義が不明確であり、その判定基準は医学的判断が強い。世界の多くの国はICF(国際生活機能分類)の考え方を採用しており、障害者数において日本と明確な相違が認められる。また、障害者施策の根幹はなんといっても財源であるが、国民総生産に対する障害者福祉施策の財源の比率を2001年度で見ると、日本は0.66%、米国がその2倍、ドイツは5倍、スウェーデンはその9倍の予算を使っている。さらに脱施設化に関しても、施設に入所している知的障害者の数において米国は日本の4分の1以下、スウェーデンに至っては10分の1以下であり、ほとんどが地域生活に移行している。精神障害でも同じことが以前から指摘されつづけている。先進諸国の中で日本だけ精神病床が2~7倍と多く、入院期間も桁外れに長いことからも、いかに日本の障害者施策が貧困であるかは明白である。この状況の打開に少しでも役立つことを期待して、自立支援法が成立されたのである。
主題と主な内容
この法律の国会への提案理由説明によると、主題を「障害児及び障害者の地域における自立した生活を支援する」とし、現状認識として「身体障害、知的障害、精神障害といった障害種別等によって福祉サービスや公費負担医療の利用の仕組みや内容などが異なっており、これを一元的なことにすることや、その利用者の増加に対応できるよう、制度をより安定かつ効率的なものとすることが求められております」となっている。主な内容として次の5つを掲げている。
①自立支援給付は障害福祉サービス、自立支援医療、補装具の購入などに要する費用の支給とし、当該給付を受けようとする者は、市町村等に申請を行い、その支給決定等を受けようとする者は、市町村等に申請を行い、その支給決定等を受けることとする。
②自立支援給付の額は、障害福祉サービス等に通常要する額の100分の90を原則として給付割合の引き上げを行うなど、負担の軽減を講ずる。
③市町村および都道府県が行う地域生活支援事業に関することを定める。
④市町村および都道府県は、国の定める基本方針に則して障害福祉サービスや地域生活支援事業等提供体制の確保に関する障害福祉計画を定める。
⑤自立支援給付に要する費用は一部都道府県が思弁するものを除き市町村が支弁し、その4分の1を都道府県が、2分の1を国が、それぞれ負担する。
今までの障害福祉財源は裁量的経費であったが、この法律による財源は一部を除いて義務的経費とするという、財源確保についての大きな変化が含まれている。