大東亜共栄圏

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・『アジアからみた「大東亜共栄圏」』 内海愛子・田辺寿夫著 1983年 梨の木舎<br>・『「大東亜共栄圏」の思想』 栄沢幸二著 1995年 講談社<br>・『帝国という幻想―「大東亜共栄圏」の思想と現実』 ピーター・ドウス著/小林英夫編 1998年 青木書店 ・『アジアからみた「大東亜共栄圏」』 内海愛子・田辺寿夫著 1983年 梨の木舎<br>・『「大東亜共栄圏」の思想』 栄沢幸二著 1995年 講談社<br>・『帝国という幻想―「大東亜共栄圏」の思想と現実』 ピーター・ドウス著/小林英夫編 1998年 青木書店

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 中国や東南アジア諸国を欧米帝国主義国の支配から解放し、日本を盟主に共存共栄の広域経済圏をつくりあげるという主張。太平洋戦争期に日本の対アジア侵略戦争を合理化するために唱えられたスローガンである。

「大東亜共栄圏」の登場

 はじめて公式に使われたのは、1940(昭和15)年8月1日のことである。時の近衛内閣の松岡洋右外相が、政府の外交方針について、記者会見で次のように述べている。

「私は年来皇道を世界に宣布することが皇国の使命であると主張して来た者でありますが(中略)我国現前の外交方針としてはこの皇道の大精神に則り、先ず日満支をその一環とする大東亜共栄圏の確立を図るにあらねばなりませぬ。(中略)更に進んで我に同調する友邦と提携、不退転の勇猛心を以て、天より課せられたる我が民族の理想と使命の達成を期すべきものと堅く信じて疑わぬものであります」

 用語としての「大東亜共栄圏」は、この松岡発言が初めてではあっても、思想としての「大東亜共栄圏」は、日中戦争の泥沼化にともなって、確実に形成されてきていた。それは、「東亜新秩序」とか「大東亜新秩序」と称されるものである。

 1940(昭和15)年7月、政権の座についた第二次近衛文麿内閣は、政策の基本方針として「基本国策要網」うぃ決める。それは、大東亜新秩序の建設と国防国家体制の完成をめざすものであった。この方針は、軍部を含んだ当時政策決定の場である大本営政府連絡会議でさらに具体化される。7月27日に出された「世界情勢の推移に伴ふ時局処理要網」がそれである。ここでは、南方への武力行使と、ドイツ、イタリアとの政治的結束の強化がうたわれていた。

 それらの主な狙いは、日中戦争の局面を打開することにあった。すなわち、1937(昭和12)年7月盧溝橋事件に始まる日中戦争は、中国人民の激しい抵抗、アメリカ、イギリスなどの援助体制もあって、日本にとっては思うにまかせぬ状況になっていた。これを、ドイツ・イタリアのファシズム勢力と組むことによってアメリカに手をひかせる、さらには、東南アジアに進出することによって、日本の国力の維持・増強を図ろうとしたのである。この路線の続きとして、松岡外相の「大東亜共栄圏の確立」の発言があらわれるのである。

「大東亜共栄圏」思想の源流

 明治以降、日本の国作りの基本思想は、「脱亜入欧」という標語で表現される。近代化の遅れをとりもどすために、先進国・欧米に追いつき、追いこせとする発想であった。その時のアジアイメージは、遅れたアジア、足手まといのアジアであった。

 日本の資本主義化に伴い、近隣のアジア諸国は、まずその市場、あるいは資源を得る場所となっていた。それはやがて、台湾・朝鮮・満州の植民地化へと拡がっていく。福沢諭吉の『脱亜論』に代表される日本アジア認識は、日本の近代化に伴うアジア侵略を正当化することになる。その意味で、「大東亜共栄圏」建設の思想へとつながっていくのである。

 アジアの解放などといっても、所詮は、日本人の身勝手な発想でしかなかった。アジアの人々の状況、その独立への要求を何ほども汲みとるものではなかったのである。だから、日本がアジアに勢力範囲を拡げていくにつれて、大アジア主義は、それにのっかってしまうことになった。さらにはこの、一方的にアジアを「助けて」やるんだという考え方は、八紘一宇などという国家主義的なイデオロギーの基づく「大東亜共栄圏」建設の思想に取り込まれてしまったのである。


≪参考文献≫

・『アジアからみた「大東亜共栄圏」』 内海愛子・田辺寿夫著 1983年 梨の木舎
・『「大東亜共栄圏」の思想』 栄沢幸二著 1995年 講談社
・『帝国という幻想―「大東亜共栄圏」の思想と現実』 ピーター・ドウス著/小林英夫編 1998年 青木書店


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