ES細胞

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2010年2月9日 (火) 23:27の版
Bunkyo-studen2008 (ノート | 投稿記録)

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== 経緯 == == 経緯 ==
-1998年11月、米国・ウィスコンシン大学のトムソン教授らによって人間のES細胞(Embryonic Stem Cell、胚幹細胞)を取り出すことに成功した。+ 1998年11月、米国・ウィスコンシン大学のトムソン教授らによって人間のES細胞(Embryonic Stem Cell、胚幹細胞)を取り出すことに成功した。
ES細胞は人体を形づくるあらゆる細胞にへと変ぼうすることのできるおおもとの細胞であるとともに、変ぼうする前の状態のまま自らをいくらでも分裂させて増やすことができる特性を持っている。そのようなES細胞を手に入れることができるようになったということは同時に、ES細胞を上手に誘導してやれば目的とする必要な細胞、組織、器官を意図的に作り出し、さまざまな治療に生かせる可能性が大いに広がったということを意味する。以来、各国の研究者はES細胞を使った研究に力を注いでいる。日本では昨年秋に文部科学省から「ヒトES細胞に関する樹立と使用に関する指針」が示され、一定の条件のもとでES細胞を利用した研究にゴーサインが出された。 ES細胞は人体を形づくるあらゆる細胞にへと変ぼうすることのできるおおもとの細胞であるとともに、変ぼうする前の状態のまま自らをいくらでも分裂させて増やすことができる特性を持っている。そのようなES細胞を手に入れることができるようになったということは同時に、ES細胞を上手に誘導してやれば目的とする必要な細胞、組織、器官を意図的に作り出し、さまざまな治療に生かせる可能性が大いに広がったということを意味する。以来、各国の研究者はES細胞を使った研究に力を注いでいる。日本では昨年秋に文部科学省から「ヒトES細胞に関する樹立と使用に関する指針」が示され、一定の条件のもとでES細胞を利用した研究にゴーサインが出された。
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-すべての生物は細胞という最小単位によって構成され、人間ではその細胞の数は200種類以上、約60兆個あるといわれている。このような極めて多数の細胞も、もとをたどれば受精卵という一つの細胞に行き着く。日々生死を繰り返している多種多様な細胞それぞれにも、もとをたどると親の細胞に行き当たる。それを幹細胞と呼ぶ。英語ではstem cellと呼ぶが、stemは木の幹のことである。幹から多くの枝が分かれ大きな木へと成長していくように幹細胞からも多くの細胞が分かれていき、身体の組織や器官を形作るさまざまな細胞へと変化を遂げていく。幹細胞には胚幹細胞と成体幹細胞がある。胚幹細胞は英語でEmbryonic Stem Cellと呼ばれるためES細胞と呼ばれるのである。 + すべての生物は細胞という最小単位によって構成され、人間ではその細胞の数は200種類以上、約60兆個あるといわれている。このような極めて多数の細胞も、もとをたどれば受精卵という一つの細胞に行き着く。日々生死を繰り返している多種多様な細胞それぞれにも、もとをたどると親の細胞に行き当たる。それを幹細胞と呼ぶ。英語ではstem cellと呼ぶが、stemは木の幹のことである。幹から多くの枝が分かれ大きな木へと成長していくように幹細胞からも多くの細胞が分かれていき、身体の組織や器官を形作るさまざまな細胞へと変化を遂げていく。幹細胞には胚幹細胞と成体幹細胞がある。胚幹細胞は英語でEmbryonic Stem Cellと呼ばれるためES細胞と呼ばれるのである。
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-ES細胞は、胚から取り出されて作られる。胚は受精卵が成長を続ける初期の段階をさす。卵子と精子が一つになった受精卵は胎児へと成長していく途中で二つ、四つ、八つ…と分裂を繰り返し5、6日目には胚盤胞と呼ばれる状態になる。胚盤胞は直径0.1ミリほどの球状の形をしており、外側の細胞層である栄養外胚葉と、将来、体を作るもとになる細胞のかたまりである内部細胞塊を抱く胞胚腔から構成されている。内側の細胞塊はいずれ内胚葉、中胚葉、外胚葉へと成長し体のあらゆる細胞を形作っていく部分で、栄養外胚葉はそれらの胎盤を形成し、また胚を外界から隔離する袋を形成する。+ ES細胞は、胚から取り出されて作られる。胚は受精卵が成長を続ける初期の段階をさす。卵子と精子が一つになった受精卵は胎児へと成長していく途中で二つ、四つ、八つ…と分裂を繰り返し5、6日目には胚盤胞と呼ばれる状態になる。胚盤胞は直径0.1ミリほどの球状の形をしており、外側の細胞層である栄養外胚葉と、将来、体を作るもとになる細胞のかたまりである内部細胞塊を抱く胞胚腔から構成されている。内側の細胞塊はいずれ内胚葉、中胚葉、外胚葉へと成長し体のあらゆる細胞を形作っていく部分で、栄養外胚葉はそれらの胎盤を形成し、また胚を外界から隔離する袋を形成する。
 この内部細胞塊をほぐした後細胞を取り出し、これらの細胞をある細胞が増殖しても分化しない環境で培養するとES細胞ができあがる。  この内部細胞塊をほぐした後細胞を取り出し、これらの細胞をある細胞が増殖しても分化しない環境で培養するとES細胞ができあがる。
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 +== 問題点 ==
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 + さまざまな細胞を作ることができて再生医療が現実のものとなるためにはES細胞を目的の細胞へ導いていくための研究が進められなければならない。また、移植のためにはいかに目的とする細胞だけを確保するかという技術も重要だ。仮にES細胞が混じっていたりすると移植後の体内で思わぬ細胞を作り出してしまうおそれがあるからである。ES細胞の培養には動物製剤などが使われている。人間の治療に使うためには安全性の面で問題があり、こうした面での研究も必要になる。
 + そしてES細胞において何より解決されなければならないことは移植したときに生じる免疫拒絶の問題。人間の体は他人の細胞が入ってきたときにそれを受け付けずに拒否反応を起こすようにできているからである。この問題を解決するために、患者自身の体細胞の核を、卵子の核と入れ替えることによって作り出したクローン胚からES細胞を取り出すという方法がある。
 +  ただ、ヒトクローン胚研究については「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」(2001年6月施行)に基づいて作られた「特定胚の取り扱いに関する指針」によって日本では今のところ研究が禁じられている。ES細胞の性質を備えながら、患者本人に免疫拒絶を起こさないような細胞を生み出すことができれば治療への可能性は大いに広がってくる。マウスなどのモデルを用いた研究では世界中で研究が急速に進んでいるが、実際にヒトで研究することに関しては、胚を新規に作成することの懸念があり、一部の国でのみ研究が許されているのが現状だ。
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 +== 参考文献・資料 ==
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 +「ES細胞の最前線」クリストファー・T・スコット 矢野 真千子
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 +http://cellbank.nibio.go.jp/visitercenter/whatsculture/cellculture04.html
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 +http://www.ibri-kobe.org/trc/cont/00_www/basics/02_01.html
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目次

経緯

 1998年11月、米国・ウィスコンシン大学のトムソン教授らによって人間のES細胞(Embryonic Stem Cell、胚幹細胞)を取り出すことに成功した。 ES細胞は人体を形づくるあらゆる細胞にへと変ぼうすることのできるおおもとの細胞であるとともに、変ぼうする前の状態のまま自らをいくらでも分裂させて増やすことができる特性を持っている。そのようなES細胞を手に入れることができるようになったということは同時に、ES細胞を上手に誘導してやれば目的とする必要な細胞、組織、器官を意図的に作り出し、さまざまな治療に生かせる可能性が大いに広がったということを意味する。以来、各国の研究者はES細胞を使った研究に力を注いでいる。日本では昨年秋に文部科学省から「ヒトES細胞に関する樹立と使用に関する指針」が示され、一定の条件のもとでES細胞を利用した研究にゴーサインが出された。


幹細胞

 すべての生物は細胞という最小単位によって構成され、人間ではその細胞の数は200種類以上、約60兆個あるといわれている。このような極めて多数の細胞も、もとをたどれば受精卵という一つの細胞に行き着く。日々生死を繰り返している多種多様な細胞それぞれにも、もとをたどると親の細胞に行き当たる。それを幹細胞と呼ぶ。英語ではstem cellと呼ぶが、stemは木の幹のことである。幹から多くの枝が分かれ大きな木へと成長していくように幹細胞からも多くの細胞が分かれていき、身体の組織や器官を形作るさまざまな細胞へと変化を遂げていく。幹細胞には胚幹細胞と成体幹細胞がある。胚幹細胞は英語でEmbryonic Stem Cellと呼ばれるためES細胞と呼ばれるのである。


ES細胞とは

 ES細胞は、胚から取り出されて作られる。胚は受精卵が成長を続ける初期の段階をさす。卵子と精子が一つになった受精卵は胎児へと成長していく途中で二つ、四つ、八つ…と分裂を繰り返し5、6日目には胚盤胞と呼ばれる状態になる。胚盤胞は直径0.1ミリほどの球状の形をしており、外側の細胞層である栄養外胚葉と、将来、体を作るもとになる細胞のかたまりである内部細胞塊を抱く胞胚腔から構成されている。内側の細胞塊はいずれ内胚葉、中胚葉、外胚葉へと成長し体のあらゆる細胞を形作っていく部分で、栄養外胚葉はそれらの胎盤を形成し、また胚を外界から隔離する袋を形成する。  この内部細胞塊をほぐした後細胞を取り出し、これらの細胞をある細胞が増殖しても分化しない環境で培養するとES細胞ができあがる。



問題点

 さまざまな細胞を作ることができて再生医療が現実のものとなるためにはES細胞を目的の細胞へ導いていくための研究が進められなければならない。また、移植のためにはいかに目的とする細胞だけを確保するかという技術も重要だ。仮にES細胞が混じっていたりすると移植後の体内で思わぬ細胞を作り出してしまうおそれがあるからである。ES細胞の培養には動物製剤などが使われている。人間の治療に使うためには安全性の面で問題があり、こうした面での研究も必要になる。  そしてES細胞において何より解決されなければならないことは移植したときに生じる免疫拒絶の問題。人間の体は他人の細胞が入ってきたときにそれを受け付けずに拒否反応を起こすようにできているからである。この問題を解決するために、患者自身の体細胞の核を、卵子の核と入れ替えることによって作り出したクローン胚からES細胞を取り出すという方法がある。   ただ、ヒトクローン胚研究については「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」(2001年6月施行)に基づいて作られた「特定胚の取り扱いに関する指針」によって日本では今のところ研究が禁じられている。ES細胞の性質を備えながら、患者本人に免疫拒絶を起こさないような細胞を生み出すことができれば治療への可能性は大いに広がってくる。マウスなどのモデルを用いた研究では世界中で研究が急速に進んでいるが、実際にヒトで研究することに関しては、胚を新規に作成することの懸念があり、一部の国でのみ研究が許されているのが現状だ。


参考文献・資料

「ES細胞の最前線」クリストファー・T・スコット 矢野 真千子

http://cellbank.nibio.go.jp/visitercenter/whatsculture/cellculture04.html

http://www.ibri-kobe.org/trc/cont/00_www/basics/02_01.html

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