大鏡
出典: Jinkawiki
2010年2月12日 (金) 00:34の版 Bunkyo-studen2008 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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== 概要 == | == 概要 == | ||
『大鏡』は、12世紀初め、平安時代後期(白河院政期)に成立した紀伝体の歴史物語である。『世継物語』『世継の翁が物語』『世継のかがみの巻』ともいう。いわゆる「四鏡」の最初の作品であり、内容的には2番目に古い時代を扱っている。非凡な歴史観がうかがえる問答体の書で、三巻本・六巻本・八巻本がある。 | 『大鏡』は、12世紀初め、平安時代後期(白河院政期)に成立した紀伝体の歴史物語である。『世継物語』『世継の翁が物語』『世継のかがみの巻』ともいう。いわゆる「四鏡」の最初の作品であり、内容的には2番目に古い時代を扱っている。非凡な歴史観がうかがえる問答体の書で、三巻本・六巻本・八巻本がある。 | ||
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+ | 平安末~鎌倉に、今鏡 - 水鏡 - 増鏡 | ||
書名の「大鏡」とは、「歴史を明らかに映し出す優れた鏡」の意味である。 | 書名の「大鏡」とは、「歴史を明らかに映し出す優れた鏡」の意味である。 | ||
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道長の栄華を批判的に叙述。 | 道長の栄華を批判的に叙述。 | ||
作者は不詳だが、摂関家やその縁戚の村上源氏に近い男性官人説が有力である。作者については諸説あり、藤原為業・藤原能信・藤原資国・源道方・源経信・源俊明・源俊房・源顕房・源雅定らの名前が挙げられているが、近年では村上源氏の源顕房とする説がやや有力とされている。 | 作者は不詳だが、摂関家やその縁戚の村上源氏に近い男性官人説が有力である。作者については諸説あり、藤原為業・藤原能信・藤原資国・源道方・源経信・源俊明・源俊房・源顕房・源雅定らの名前が挙げられているが、近年では村上源氏の源顕房とする説がやや有力とされている。 | ||
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+ | 文徳天皇即位から後一条天皇の万寿2年(1025年)に至るまで14代176年間の宮廷の歴史を、藤原北家、ことに道長の栄華を軸にして、ある寺で、大宅世継(190歳)と夏山繁樹(180歳)という長命な二人の老人が、雲林院の菩提講で居合わせた人々の前で、平安時代前期から中期にかけての出来事について語り合い、それを若侍が批評するという対話形式で書かれている。 | ||
+ | 語られるエピソードは、文徳天皇(850年)の代から後一条天皇(1025年)の代まで。各天皇にまつわる話や、当時の出来事、有力貴族であった藤原氏の面々の政治上のかけひきについてなど、まさに見てきたかのような歴史物語が披露される。特に、平安史上もっとも有力であった政治家・藤原道長が権力を獲得していく経緯など、こと細かに綴られている。 | ||
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+ | 和語(大和言葉)に漢語・仏教用語を交えて書かれており、簡潔でありながら劇的な表現に富む。藤原兼通・兼家兄弟の権力争いや藤原道兼が花山天皇を欺いて出家させる場面では権力者の個性的な人物像や謀略が活写されており特に圧巻である。そこには飽くなき権力欲への皮肉も垣間見える。 | ||
+ | 歴史上の事実を淡々と羅列するというわけではなく、人間的かつ臨場感あふれるエピソードが、”歴史書”ではなく”歴史物語”としての大鏡を印象づけていると言える。 | ||
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+ | また、結末の後に増補された折に「二の舞の翁の物語」などと称される後日談が書かれており、これについては「皇后宮大夫」が書いたとされていることから、増補されたと考えられる時期に同職を務めた源雅定(あるいは前任の藤原家忠)が増補者であろうと推測されている。 | ||
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+ | == 参考資料 == | ||
+ | 小学館 日本古典文学全集20 大鏡 | ||
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+ | [Ti] |
最新版
概要
『大鏡』は、12世紀初め、平安時代後期(白河院政期)に成立した紀伝体の歴史物語である。『世継物語』『世継の翁が物語』『世継のかがみの巻』ともいう。いわゆる「四鏡」の最初の作品であり、内容的には2番目に古い時代を扱っている。非凡な歴史観がうかがえる問答体の書で、三巻本・六巻本・八巻本がある。
平安末~鎌倉に、今鏡 - 水鏡 - 増鏡
書名の「大鏡」とは、「歴史を明らかに映し出す優れた鏡」の意味である。
道長の栄華を批判的に叙述。 作者は不詳だが、摂関家やその縁戚の村上源氏に近い男性官人説が有力である。作者については諸説あり、藤原為業・藤原能信・藤原資国・源道方・源経信・源俊明・源俊房・源顕房・源雅定らの名前が挙げられているが、近年では村上源氏の源顕房とする説がやや有力とされている。
内容
文徳天皇即位から後一条天皇の万寿2年(1025年)に至るまで14代176年間の宮廷の歴史を、藤原北家、ことに道長の栄華を軸にして、ある寺で、大宅世継(190歳)と夏山繁樹(180歳)という長命な二人の老人が、雲林院の菩提講で居合わせた人々の前で、平安時代前期から中期にかけての出来事について語り合い、それを若侍が批評するという対話形式で書かれている。 語られるエピソードは、文徳天皇(850年)の代から後一条天皇(1025年)の代まで。各天皇にまつわる話や、当時の出来事、有力貴族であった藤原氏の面々の政治上のかけひきについてなど、まさに見てきたかのような歴史物語が披露される。特に、平安史上もっとも有力であった政治家・藤原道長が権力を獲得していく経緯など、こと細かに綴られている。
和語(大和言葉)に漢語・仏教用語を交えて書かれており、簡潔でありながら劇的な表現に富む。藤原兼通・兼家兄弟の権力争いや藤原道兼が花山天皇を欺いて出家させる場面では権力者の個性的な人物像や謀略が活写されており特に圧巻である。そこには飽くなき権力欲への皮肉も垣間見える。 歴史上の事実を淡々と羅列するというわけではなく、人間的かつ臨場感あふれるエピソードが、”歴史書”ではなく”歴史物語”としての大鏡を印象づけていると言える。
また、結末の後に増補された折に「二の舞の翁の物語」などと称される後日談が書かれており、これについては「皇后宮大夫」が書いたとされていることから、増補されたと考えられる時期に同職を務めた源雅定(あるいは前任の藤原家忠)が増補者であろうと推測されている。
参考資料
小学館 日本古典文学全集20 大鏡
[Ti]