グレーヴェ鑑定書
出典: Jinkawiki
2011年1月28日 (金) 19:41の版 Bunkyo-studen2008 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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「教育行政及び将来の私立学校立法との関係における私立学校の法的地位」と題す専門鑑定<br>書田園教育舎ビルクレホーフ校の校長ピヒトが、ボン基本法の制定に伴い、第7条の専門鑑定を、フライブルク大学公法学教授グレーヴェに依頼し、グレーヴェが執筆したもの。<br>私立学校を設立する権利の重要性に着目し、この新たな基本権に依拠しつつ、私立学校の自由を明確に基礎づけた最初の文章。 | 「教育行政及び将来の私立学校立法との関係における私立学校の法的地位」と題す専門鑑定<br>書田園教育舎ビルクレホーフ校の校長ピヒトが、ボン基本法の制定に伴い、第7条の専門鑑定を、フライブルク大学公法学教授グレーヴェに依頼し、グレーヴェが執筆したもの。<br>私立学校を設立する権利の重要性に着目し、この新たな基本権に依拠しつつ、私立学校の自由を明確に基礎づけた最初の文章。 | ||
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===ボン基本法=== | ===ボン基本法=== | ||
- | 1949年5月23日発行(ドイツ連邦共和国の実質的憲法)<br>*第7条<br>(1)全学校制度は国家の監督に服する。<br>(2)教育権者は、子供を宗教教授に参加させることについて決定する権利を有する。 | + | 1949年5月23日発行(ドイツ連邦共和国の実質的憲法)<br>*第7条<br>(1)全学校制度は国家の監督に服する。<br>(2)教育権者は、子供を宗教教授に参加させることについて決定する権利を有する。<br>(3)宗教教授は、公立学校においては、宗教に関係のない学校を除いて、正規の教科目である。宗教教授は、国家の監督を妨げることなく、宗教団体の教養に従って行われる。いかなる教師もその意に反して宗教教授を行う義務を負わされてはならない。<br>(4)私立学校を設立する権利は保障される。公立学校の代替としての私立学校は国家の認可を必要とし、州の法律に従う。認可は、私立学校がその教育目的及び設備並びに教師の学問的専門教育が公立学校に劣らず、かつ両親の資産状態に応じて生徒の差別待遇がなされないため場合に、与えられなければならない。認可は、教師の経済的及び法律的地位が十分に確保されない場合には、拒否されなければならない。<br>(5)私立の国民学校は、教育行政当局が特別の教育的利益を認める場合にのみ、または教育権者の申し立てにより国民学校が共同体学校、宗派学校もしくは世界観学校として設立されるべき場合で、かつ市町村にこの種の公立国民学校が存在しない場合にのみ、許されなければならない。<br>(6)予備学校は、廃止されたままとする。 |
- | (3)宗教教授は、公立学校においては、宗教に関係のない学校を除いて、正規の教科目である。宗教教授は、国家の監督を妨げることなく、宗教団体の教養に従って行われる。いかなる教師もその意に反して宗教教授を行う義務を負わされてはならない。 | + | |
- | (4)私立学校を設立する権利は保障される。公立学校の代替としての私立学校は国家の認可を必要とし、州の法律に従う。認可は、私立学校がその教育目的及び設備並びに教師の学問的専門教育が公立学校に劣らず、かつ両親の資産状態に応じて生徒の差別待遇がなされないため場合に、与えられなければならない。認可は、教師の経済的及び法律的地位が十分に確保されない場合には、拒否されなければならない。 | + | |
- | (5)私立の国民学校は、教育行政当局が特別の教育的利益を認める場合にのみ、または教育権者の申し立てにより国民学校が共同体学校、宗派学校もしくは世界観学校として設立されるべき場合で、かつ市町村にこの種の公立国民学校が存在しない場合にのみ、許されなければならない。 | + | |
- | (6)予備学校は、廃止されたままとする。 | + | ===注目すべき点=== |
+ | ●ボン基本法第7条が、第4項第1文で新たな教育権として「私立学校を設立する権利」が規定されていることを高く評価している。この「私立学校を設立する権利」は、教育制度における、より大きな自由を保障したものであり、この点が、ボン基本法とワイマル憲法との間の明確で重要な差異であることが確認されている。 | ||
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+ | ●私立学校の認可条件は、ボン基本法第7条第4項で列挙されている条件ですべて網羅されており、州の立法がこの条件以外の条件を追加されることは認められていないことが明言されている。 | ||
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+ | ●法的に保障された自由を侵害する行為の禁止、また、教員国家試験に合格していなくとも、ほかの方法でその能力を証明した者を教員として採用する自由も認められるべきであり、そうした自由が保障されてこそ、私立学校はその本質的機能を実現することが出来ると指摘している。 | ||
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+ | ●私立学校に対する学校監督は、あくまで基本法に列挙された認可条件の遵守を確認するだけの、従って限定的な法的監督だけを内容とすべきであることが指摘されていて、国家の学校監督の縮減の方向性が明確に提示されている。 | ||
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+ | ===参考文献=== | ||
+ | 勁草書房「管理から自立へ 戦後ドイツの学校改革」遠藤孝夫 著 N.I |
最新版
「教育行政及び将来の私立学校立法との関係における私立学校の法的地位」と題す専門鑑定
書田園教育舎ビルクレホーフ校の校長ピヒトが、ボン基本法の制定に伴い、第7条の専門鑑定を、フライブルク大学公法学教授グレーヴェに依頼し、グレーヴェが執筆したもの。
私立学校を設立する権利の重要性に着目し、この新たな基本権に依拠しつつ、私立学校の自由を明確に基礎づけた最初の文章。
ボン基本法
1949年5月23日発行(ドイツ連邦共和国の実質的憲法)
*第7条
(1)全学校制度は国家の監督に服する。
(2)教育権者は、子供を宗教教授に参加させることについて決定する権利を有する。
(3)宗教教授は、公立学校においては、宗教に関係のない学校を除いて、正規の教科目である。宗教教授は、国家の監督を妨げることなく、宗教団体の教養に従って行われる。いかなる教師もその意に反して宗教教授を行う義務を負わされてはならない。
(4)私立学校を設立する権利は保障される。公立学校の代替としての私立学校は国家の認可を必要とし、州の法律に従う。認可は、私立学校がその教育目的及び設備並びに教師の学問的専門教育が公立学校に劣らず、かつ両親の資産状態に応じて生徒の差別待遇がなされないため場合に、与えられなければならない。認可は、教師の経済的及び法律的地位が十分に確保されない場合には、拒否されなければならない。
(5)私立の国民学校は、教育行政当局が特別の教育的利益を認める場合にのみ、または教育権者の申し立てにより国民学校が共同体学校、宗派学校もしくは世界観学校として設立されるべき場合で、かつ市町村にこの種の公立国民学校が存在しない場合にのみ、許されなければならない。
(6)予備学校は、廃止されたままとする。
注目すべき点
●ボン基本法第7条が、第4項第1文で新たな教育権として「私立学校を設立する権利」が規定されていることを高く評価している。この「私立学校を設立する権利」は、教育制度における、より大きな自由を保障したものであり、この点が、ボン基本法とワイマル憲法との間の明確で重要な差異であることが確認されている。
●私立学校の認可条件は、ボン基本法第7条第4項で列挙されている条件ですべて網羅されており、州の立法がこの条件以外の条件を追加されることは認められていないことが明言されている。
●教育目的、設備、教員の学問的教養が公立学校に劣らないという認可条件は、同質性(公立学校と質的に同一)ではなく、同価値性(公立学校と価値的に同一であれば十分)を意味している。
●法的に保障された自由を侵害する行為の禁止、また、教員国家試験に合格していなくとも、ほかの方法でその能力を証明した者を教員として採用する自由も認められるべきであり、そうした自由が保障されてこそ、私立学校はその本質的機能を実現することが出来ると指摘している。
●私立学校に対する学校監督は、あくまで基本法に列挙された認可条件の遵守を確認するだけの、従って限定的な法的監督だけを内容とすべきであることが指摘されていて、国家の学校監督の縮減の方向性が明確に提示されている。
参考文献
勁草書房「管理から自立へ 戦後ドイツの学校改革」遠藤孝夫 著 N.I