シュタイナー教育4

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(シュタイナー教育理念の特徴)
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==概要== ==概要==
- シュタイナー教育(Waldorf education)とはドイツの教育者ルドルフ・シュタイナーが提唱及び実践した教育思想のことである。1919年にシュトゥットガルトにて開校した自由学校から始まったとされる。主に子どもの自主性を尊重した教育手法。+ シュタイナー教育とは、国家からの影響を受けない自由な教育を求めるために実践されたフリースクールの一つである。1861年にオーストラリアで生まれ、ドイツやスイスで活躍した思想家であるルドルフ・シュタイナーによってシュタイナー学校は創設された。ルドルフ・シュタイナーは子供時代から哲学と文学に興味を持っており、当初からゲーテの強い影響を受け、哲学者、思想家となった。極めて幅広い思想家とし、アントポゾフィー(神智学)という思想を打ち立てた。この思想から「シュタイナー教育」がうまれた。この教育思想は、ドイツでは一般にバルドルフ教育学と呼ばれている。シュタイナー学校として今現在30カ国に600の学校が存在し約12万人が通っている。
- シュタイナー教育を小中高一貫教育として実践するのがシュタイナー学校である。世界各国のシュタイナー学校では基本理念を共有してはいるが、その国の文化や民族性に合った形でカリキュラムを組むことが要求されている。 
- +==シュタイナー教育理念の特徴==
- +
-==シュタイナー教育の理念・思想==+
'''4つの構成体''' '''4つの構成体'''
 + シュタイナー教育の原理は、発達段階に対する独自の見解と、人間の構成体に関する見解が結びついて形成されており、その構成体には「物質体」「生命体」「感情体」「自我」の4つがある。
- 人間は以下の4つの構成体によって成り立っていると考えられている。+●「物質体」:0歳、4つの構成体で唯一眼に見えるもので、重力の法則に従って落下する
 +性質を持つ。
 +●「生命体」:7才頃、生成や繁殖の力をつかさどり、重力に逆らって上に伸びようとする
 +力を持つ。
-・物質体……0歳に生まれる。体そのもので、引力によって上から下に落ちる。+●「感情体」:14歳頃、欲望や感情を表出させる要素で快・不快などといった喜怒哀楽の感
- +情に結びつく動き。
-・生命体……7歳ごろに生まれる。引力に逆らって下から上に伸びたり、起き上がったり、成長や繁殖したりする力。+
- +
-・感情体……14歳ごろに生まれる。快感および不快感といった感情の結びついた動き。+
- +
-・自我……21歳ごろに生まれる。自分で考えたり、会話したりなど、「私」を持っていること。+
- +
- +
- シュタイナー教育では以上の4つを前提として実現される。+
 +●「自我」:21歳頃、考えたり、言葉を話したりなど理性にかかわる要素で、「私」という
 +意識を持つこと。
'''七年周期説''' '''七年周期説'''
 + 4つの構成体にあるように、シュタイナーの考えでは人間の節目が7年ごとにある。0歳~7歳までを「第一・七年期」、7歳~14歳までを「第二・七年期」、14歳~21歳までを「第三・七年期」とよぶ。
- 人間は7年を1つの周期とし、その各々に特徴が見られると考えられている。+●「第一・七年期」
 + この時期の課題は、身体の諸機能をしっかり働かせるようにしすることが課題となる。そのことで、次第に意志力や行動力の源となる。また、子どもは、きれいなものを見ることによって、きれいな心を身に付け、おいしいものを食べることによって、おいしさの味覚を知っていく。したがって、子どもに吸収されてよいものを身の回りに置く。周囲の大人は、模倣されてよい存在でなければならない。
 +●「第二・七年期」
 + この時期の課題は、いろいろな芸術的刺激を与えることである。芸術体験によって、世界は美しいと感じる教育を目指し、また感情体験として感じさせることで豊かな感情や思考力を持つことを目指す。
-・第1七年期……0~7歳+●「第三・七年期」
- + この時期は、抽象概念、思考力によって世界について包括的な認識を持ち、思考力、知力、判断力というものを作り出していくことが課題となる。大人は長所も短所もある人間として子供と接することが大切である。しかし、教育者としてある1つの分野で絶対というものを持って接しなくてはいけない。こうして21歳迎え、真の自立した大人として巣立っていくことが、シュタイナー教育の構図である。また意志、感情、思考を順番通りに身につけ、バランスが取れた人を「自由を獲得した人間」だとシュタイナーは言う。
- この7年間ではしっかりと体を動かし、肉体を作っていくことが課題である。またこの時期は周囲の大人などの影響を受けやすいので、大人は模倣されることを自覚して行動する必要がある。さらにきれいなものを見せたり、美味しいものを食べさせるなど子どもに良い環境を与えることも大切である。+
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-・第2七年期……7~14歳+
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- この時期には芸術的な感性・感情が形成されるので、様々な芸術的刺激を与えることが重要。ただし、あくまでも芸術を体験として吸収させることが大事で、世の中は美であふれていることを目指す。+
- +
- +
-・第3七年期……14~21歳+
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- この時期によって思考力、判断力などが形成されてくる。つまり自我がはっきりしてくる時期である。大人はより鮮明な世界観を持って子どもと接することが大切。世の中の真実をはっきり理解させることを目指す。+
- +
'''4つの気質''' '''4つの気質'''
 + シュタイナーは、「気質」は人間が生まれながらに持っており、個性と親からの遺伝との混合により作られると考えている。
- 人間が生まれながらにして持っている個性のこと。上記で説明した「4つの構成体」のうちの優劣を見ることによって子どもの気質を4つのタイプに分ける。+●胆汁質
 + 自我、アストラル体、エーテル体、物質体の4つの構成要素のうち自我が最も強い。自
 +己主張や意志が強く、カッとなりやすい。自我の肉体的な表現は、血液循環組織である。●憂鬱質
 +憂鬱質は物質体が優勢で、シュタイナーいわく、物質体が強すぎるため扱いきれない感じがある。それは物事を悲観的に考えやすく、痛み、不快、悲しみとして感じる。
-・胆汁質+●粘液質
- +エーテル体が最も強い。エーテル体の中で満足し、自分自身にかかりっきりになり他のことに関心を示さない。休む、食べる、寝ることが大好きであったり、人から注目されることを嫌い、放っておいてほしいと思うなど内的快感を重視する。
- 特徴……非常に生き生きとして活発。周囲との衝突が激しい。物事に明瞭な概念をつけることを好む。+教えることは、子どもには迷惑な行為になる。子どもは親の反応に刺激をうけ、自分から関心を持つようになる。
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- 対策……子どもの行うことに興味・関心を持つ。高難度の課題を与えることで自信過剰になるのを防ぐことができる。+
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-・憂鬱質+
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- 特徴……冷静で内向的。物事を悲観的に考えやすい。一度始めたものは長く続ける。+
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- 対策……大人が子どもに興味を持ち、様々なことに気付いてあげることが重要。+
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-・多血質+
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- 特徴……一つのことにじっくり取り組むことが出来ず、外部からの刺激を受けやすい。社交的で、広範囲に渡って関心を抱く。+
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- 対策……せかせかした一面を持つので、大人がそれを導いてやる必要がある。+
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-==シュタイナー教育の実践・手法==+
- ここでは具体的なシュタイナー教育の実践・手法について例を挙げていく。+
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-・子どもが安心できるような環境を作り出すべく、シュタイナー学校では淡いピンク色を基調とした学校づくりを行っている。先生もピンク色を元にエプロンやスカートを身につける。+
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-・教師による自由性および自主性が問われる。教科書をそのまま使用するのではなく、時代や地域などに会わせた授業を行い、教師自身が授業をその都度創造していくことが目指される。そのため、教師は授業の準備に多くの時間を費やすことが特徴である。+
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-・幼稚園では年齢を問わないクラス編成、小学校以上は担任教師を変えずに8年間続け、12年制の一貫した教育を行っている。+
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-・言葉(音楽)を身体で表すといったオイリュトミーの授業や、フォルメンを積極的に取り入れている。+
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-・「テスト」という概念そのものが一切存在しない。+
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-・その日のはじめに2時間程度設け、その時間に数週間続けて同じ学科を学習するといったエポック授業を取り入ている。+
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-・基本的に鉛筆ではなくクレヨンを使う。+
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-==シュタイナー教育への批判==+
- 日本ではシュタイナー教育に対する批判を聞くことは少ない。むしろその教育手法に感銘を受けたとする体験談などが出版されている。しかし、ドイツではシュタイナー教育を批判的にとらえた本が数々存在する。その一つとして、ドイツ人で3人の子どもをシュタイナー学校に入学させた母親の例がある。+
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-(以下「保険毎日新聞 2003年8月28日号掲載」を抜粋)+
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-「僕たちをひどい学校へどうして入れたのだ!」と子供たちから罵倒されるまでになり、母親の期待は見事に裏切られた。この母親は子供たちをシュタイナー学校に入れるまでは、既成の学校に幻滅したのでシュタイナー学校に大いなる希望を抱いていた。成績をつけることもなく、落第もなく、情緒教育で子供たちの個性を伸ばし、両親にとっても安心できるはずの学校であった。+
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- だが子供は怒った。「シュタイナー学校は本当の勉強ができる環境ではない」と。シュタイナー学校ではなによりも、普通の教科はさておき、オイリトミーという、「意識の芸術」が重視される。創設者ルドルフ・シュタイナー(1862-1925)の言葉によれば、これは体操でも演技でも発声練習でもなく(実際はこれらの混合)、言葉と音が持っている霊的かつ精神的な空間上の動きによって、自分と世界とのあいだにある調和を身体で表現する、つまり一種のパーフォーマンスにほかならない。これを毎日、練習する。子供たちは家に帰っても練習しなければならない。+
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- シュタイナー学校から“脱退した”親によると、この学校では常に「シュタイナー教育」のことを考えさせられ、少しでも疑問を呈したり批判したりすると非難されるので、交友関係もシュタイナー学校に通う子供たちの親に限られてきた。それだけでなく、テレビはだめ、ウオークマンまで禁止。親は洋服についてまで指示を受け、家庭生活のすみずみまで監視されたというから、一体、シュタイナーとは自由な教育どころか、“不自由な全体主義思想”ではないかとも思ったのだそうだ。(以上)+
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- この記事から、シュタイナー教育に対する痛烈な批判を感じ取ることができる。自由な教育を掲げているシュタイナー教育が、結果的に保護者からは不自由であると感じられている。こういった課題をどう解決していくかが今後のポイントになるだろう。+
 +●多血質
 + これはアストラル体が最も強く、肉体的に神経組織が優勢となる。さまざまなことに幅広く関心を持ち、一つのことにじっくり取り組むことができないなど感情者や想念が揺れ動いていおり、1つの印象にとどめてはならない。とても明るく快不快、喜びや悲しみに対して敏感である。
 +==シュタイナー教育のシステム==
 + 生活に意味を与え、head,heart,handを全面的に教育することを目的としている。知能の遅れた子供や才能のある子供などとして区別することはない。小学校の1~8年の間は担任教師は変わらず、競争や評価といったものはない。学科は低学年では重視されず、低学年のうちはすべての学科を美術的感覚で教えられる。また、mainstreamとして美術、音楽、園芸、外国語が取り入れられ、歴史、理科、言葉、算数などを毎日2~3時間のmain lesson blockで行う。祭りや式典ごとは重要視されている。
==参考文献== ==参考文献==
- 大辞泉 小学館+ All about シュタイナー教育の理念 http://allabout.co.jp/gm/gc/184257/
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- All About シュタイナー教育の理念 http://allabout.co.jp/gm/gc/184257/+
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- All About シュタイナーの具体的手法 http://allabout.co.jp/gm/gc/184258/+
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- 多様な教育を推進するためのネットワーク http://altjp.net/+
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- シュタイナー教育という幻想(上) 保険毎日新聞 2003年8月28日号掲載 http://www.tkumagai.de/Steiner%201.htm+
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- +
-javelin+ 国際教育論 太田 和敬 http://www.asahi-net.or.jp/~fl5k-oot/kokukyo2010-2.pdf

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概要

 シュタイナー教育とは、国家からの影響を受けない自由な教育を求めるために実践されたフリースクールの一つである。1861年にオーストラリアで生まれ、ドイツやスイスで活躍した思想家であるルドルフ・シュタイナーによってシュタイナー学校は創設された。ルドルフ・シュタイナーは子供時代から哲学と文学に興味を持っており、当初からゲーテの強い影響を受け、哲学者、思想家となった。極めて幅広い思想家とし、アントポゾフィー(神智学)という思想を打ち立てた。この思想から「シュタイナー教育」がうまれた。この教育思想は、ドイツでは一般にバルドルフ教育学と呼ばれている。シュタイナー学校として今現在30カ国に600の学校が存在し約12万人が通っている。


シュタイナー教育理念の特徴

4つの構成体  シュタイナー教育の原理は、発達段階に対する独自の見解と、人間の構成体に関する見解が結びついて形成されており、その構成体には「物質体」「生命体」「感情体」「自我」の4つがある。

●「物質体」:0歳、4つの構成体で唯一眼に見えるもので、重力の法則に従って落下する 性質を持つ。

●「生命体」:7才頃、生成や繁殖の力をつかさどり、重力に逆らって上に伸びようとする 力を持つ。

●「感情体」:14歳頃、欲望や感情を表出させる要素で快・不快などといった喜怒哀楽の感 情に結びつく動き。

●「自我」:21歳頃、考えたり、言葉を話したりなど理性にかかわる要素で、「私」という 意識を持つこと。


七年周期説  4つの構成体にあるように、シュタイナーの考えでは人間の節目が7年ごとにある。0歳~7歳までを「第一・七年期」、7歳~14歳までを「第二・七年期」、14歳~21歳までを「第三・七年期」とよぶ。

●「第一・七年期」  この時期の課題は、身体の諸機能をしっかり働かせるようにしすることが課題となる。そのことで、次第に意志力や行動力の源となる。また、子どもは、きれいなものを見ることによって、きれいな心を身に付け、おいしいものを食べることによって、おいしさの味覚を知っていく。したがって、子どもに吸収されてよいものを身の回りに置く。周囲の大人は、模倣されてよい存在でなければならない。

●「第二・七年期」  この時期の課題は、いろいろな芸術的刺激を与えることである。芸術体験によって、世界は美しいと感じる教育を目指し、また感情体験として感じさせることで豊かな感情や思考力を持つことを目指す。

●「第三・七年期」  この時期は、抽象概念、思考力によって世界について包括的な認識を持ち、思考力、知力、判断力というものを作り出していくことが課題となる。大人は長所も短所もある人間として子供と接することが大切である。しかし、教育者としてある1つの分野で絶対というものを持って接しなくてはいけない。こうして21歳迎え、真の自立した大人として巣立っていくことが、シュタイナー教育の構図である。また意志、感情、思考を順番通りに身につけ、バランスが取れた人を「自由を獲得した人間」だとシュタイナーは言う。


4つの気質  シュタイナーは、「気質」は人間が生まれながらに持っており、個性と親からの遺伝との混合により作られると考えている。

●胆汁質  自我、アストラル体、エーテル体、物質体の4つの構成要素のうち自我が最も強い。自 己主張や意志が強く、カッとなりやすい。自我の肉体的な表現は、血液循環組織である。●憂鬱質 憂鬱質は物質体が優勢で、シュタイナーいわく、物質体が強すぎるため扱いきれない感じがある。それは物事を悲観的に考えやすく、痛み、不快、悲しみとして感じる。

●粘液質 エーテル体が最も強い。エーテル体の中で満足し、自分自身にかかりっきりになり他のことに関心を示さない。休む、食べる、寝ることが大好きであったり、人から注目されることを嫌い、放っておいてほしいと思うなど内的快感を重視する。 教えることは、子どもには迷惑な行為になる。子どもは親の反応に刺激をうけ、自分から関心を持つようになる。

●多血質  これはアストラル体が最も強く、肉体的に神経組織が優勢となる。さまざまなことに幅広く関心を持ち、一つのことにじっくり取り組むことができないなど感情者や想念が揺れ動いていおり、1つの印象にとどめてはならない。とても明るく快不快、喜びや悲しみに対して敏感である。

シュタイナー教育のシステム

 生活に意味を与え、head,heart,handを全面的に教育することを目的としている。知能の遅れた子供や才能のある子供などとして区別することはない。小学校の1~8年の間は担任教師は変わらず、競争や評価といったものはない。学科は低学年では重視されず、低学年のうちはすべての学科を美術的感覚で教えられる。また、mainstreamとして美術、音楽、園芸、外国語が取り入れられ、歴史、理科、言葉、算数などを毎日2~3時間のmain lesson blockで行う。祭りや式典ごとは重要視されている。

参考文献

 All about シュタイナー教育の理念 http://allabout.co.jp/gm/gc/184257/

 国際教育論 太田 和敬 http://www.asahi-net.or.jp/~fl5k-oot/kokukyo2010-2.pdf


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