ヘッドスタート計画

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ヘッド・スタート計画は「貧困との戦い」(War on Poverty)という貧困対策の政策群の一つとして登場した経緯からも明らかのように、福祉の理念・特質に結びついたものと考え、政府が国民の幸福追求のために、どの領域において介入するのかを決定する。ただし、福祉先進国において介入形態・領域は異なっている。 ヘッド・スタート計画は「貧困との戦い」(War on Poverty)という貧困対策の政策群の一つとして登場した経緯からも明らかのように、福祉の理念・特質に結びついたものと考え、政府が国民の幸福追求のために、どの領域において介入するのかを決定する。ただし、福祉先進国において介入形態・領域は異なっている。
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 +==アメリカの就学前教育 ==
 +国防教育法がエリート教育を志向したものであるのに対して、公民権運動とも絡んだ「貧困による低学力」などの事態に対する政策として1964年にリンドン・ジョンソン大統領によって始められたのがヘッド・スタート計画で、これは初等・中等教育法により、資金の援助を受けるもので、経済機会法による地域貧困対策であり、地域行動計画(theCommunity Action Program)の一環として行われるものでアメリカでは最も長い国家事業である。
 +この計画が出来た動機は次のようなものであると考えられる。
 +1つ目は幼児期に教育を行う事は、貧困階級・黒人・メキシコ人・インディアンの子ども達の初等学校における学業成績,認識力,要求水準における劣位を矯正するもっとも良い方法であること。2つ目は、知能は早期に適切な教育を行えば矯正し得るという考え方が計画の基底にあったこと。そして3つ目は、政治的なもので経済機会局(OEO)が採用した一連の貧困対策教育のうち、ヘッド・スタート計画は最も人気のあるものであったことである。
 +ヘッド・スタート計画の主な目的は、4歳と5歳の子どもを小学校就学に向けて準備する就学前教育であった。対象は白人と黒人の両方で、計画が発足した1965年の夏には全国の郡(County) のうち、65%がこの計画に対して補助金の申請を出し、1967年の秋までには200万人以上の児童が計画に参加したと言われている。ところが、実際に多くの子どもは医者あるいは歯科医に一度も診てもらうことなく入学していたため、多くの子どもが適切な栄養摂取や免疫法などの常用診療により予防出来る健康問題に苦しんでいた。そこで、子ども達に栄養のある食物を与え、身体検査、医学的・歯科的な治療と半日の教育が行われた。
 +ヘッド・スタート計画の立案実施については、地域社会の自主性も尊重されている。そのため、地域により計画の内容は異なっていて、 夏季計画と通年計画があるが、通年と言っても期間は3月間から8月間まで様々である。授業の形態は,非構造的(Unstructured)なもので、助言によって社会化を主要な日的として行われる。教師1人当りの児童数は,全国1人当り14.3人で、最低3人、最高で29人である。従って、学習能力をはじめとする読解能力の改善、地域社会の改善が計画の狙いであったとされる。
 +計画に刺激を受けたアメリカの教育委員会の多くが、新しい授業方法、父兄の学校運営の参加、貧国児教育に関心を示し始めたことで、ヘッド・スタート計画は大きな国民的運動へと発展していった。
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 +==参考文献==
 +「ヘッド・スタート計画」研究 教育と福祉 添田久美子 学文社 2005年
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 +北海道大学教育学部紀要第38号 『アメリカの貧困児教育』 高山武志 1981年
 +http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/29236/1/38_P73-82.pdf

2013年1月31日 (木) 13:15の版

ヘッド・スタート計画は「貧困との戦い」(War on Poverty)という貧困対策の政策群の一つとして登場した経緯からも明らかのように、福祉の理念・特質に結びついたものと考え、政府が国民の幸福追求のために、どの領域において介入するのかを決定する。ただし、福祉先進国において介入形態・領域は異なっている。


アメリカの就学前教育

国防教育法がエリート教育を志向したものであるのに対して、公民権運動とも絡んだ「貧困による低学力」などの事態に対する政策として1964年にリンドン・ジョンソン大統領によって始められたのがヘッド・スタート計画で、これは初等・中等教育法により、資金の援助を受けるもので、経済機会法による地域貧困対策であり、地域行動計画(theCommunity Action Program)の一環として行われるものでアメリカでは最も長い国家事業である。 この計画が出来た動機は次のようなものであると考えられる。 1つ目は幼児期に教育を行う事は、貧困階級・黒人・メキシコ人・インディアンの子ども達の初等学校における学業成績,認識力,要求水準における劣位を矯正するもっとも良い方法であること。2つ目は、知能は早期に適切な教育を行えば矯正し得るという考え方が計画の基底にあったこと。そして3つ目は、政治的なもので経済機会局(OEO)が採用した一連の貧困対策教育のうち、ヘッド・スタート計画は最も人気のあるものであったことである。 ヘッド・スタート計画の主な目的は、4歳と5歳の子どもを小学校就学に向けて準備する就学前教育であった。対象は白人と黒人の両方で、計画が発足した1965年の夏には全国の郡(County) のうち、65%がこの計画に対して補助金の申請を出し、1967年の秋までには200万人以上の児童が計画に参加したと言われている。ところが、実際に多くの子どもは医者あるいは歯科医に一度も診てもらうことなく入学していたため、多くの子どもが適切な栄養摂取や免疫法などの常用診療により予防出来る健康問題に苦しんでいた。そこで、子ども達に栄養のある食物を与え、身体検査、医学的・歯科的な治療と半日の教育が行われた。 ヘッド・スタート計画の立案実施については、地域社会の自主性も尊重されている。そのため、地域により計画の内容は異なっていて、 夏季計画と通年計画があるが、通年と言っても期間は3月間から8月間まで様々である。授業の形態は,非構造的(Unstructured)なもので、助言によって社会化を主要な日的として行われる。教師1人当りの児童数は,全国1人当り14.3人で、最低3人、最高で29人である。従って、学習能力をはじめとする読解能力の改善、地域社会の改善が計画の狙いであったとされる。 計画に刺激を受けたアメリカの教育委員会の多くが、新しい授業方法、父兄の学校運営の参加、貧国児教育に関心を示し始めたことで、ヘッド・スタート計画は大きな国民的運動へと発展していった。

参考文献

「ヘッド・スタート計画」研究 教育と福祉 添田久美子 学文社 2005年

北海道大学教育学部紀要第38号 『アメリカの貧困児教育』 高山武志 1981年 http://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/29236/1/38_P73-82.pdf


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