88年教育改革

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2014年7月28日 (月) 10:42の版
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イギリスが第二次大戦以後、戦勝国であるにも関わらず、前の黄金時代に見られたような国力やエネルギーを失い、産業、工業、経済をはじめ、国民生活の広い分野での衰退化が目立ち、「黄昏のイギリス」「老大国イギリス」「イギリス病国」と呼ばれるようになった。そのうえ、生徒の学力が他の先進国に比べて低下していることが危惧された。そこで、このような状況を打破するために、繁栄に導くための最大の課題は「教育の質の向上である」という当時のサッチャー首相の提言のもとに実施されたのが、1988年の教育改革である。 イギリスが第二次大戦以後、戦勝国であるにも関わらず、前の黄金時代に見られたような国力やエネルギーを失い、産業、工業、経済をはじめ、国民生活の広い分野での衰退化が目立ち、「黄昏のイギリス」「老大国イギリス」「イギリス病国」と呼ばれるようになった。そのうえ、生徒の学力が他の先進国に比べて低下していることが危惧された。そこで、このような状況を打破するために、繁栄に導くための最大の課題は「教育の質の向上である」という当時のサッチャー首相の提言のもとに実施されたのが、1988年の教育改革である。
この教育改革は初等教育、中等教育の範囲に留まらず、高等教育、さらには教育行政にまで及ぶ壮大なものであるが、生徒の学力維持あるいは学力回復を目標にしたその構想を要約すれば、教育界に競争原理とプライバティゼーション(個人生活重視主義)の導入をねらいとするものであるということができるだろう。 この教育改革は初等教育、中等教育の範囲に留まらず、高等教育、さらには教育行政にまで及ぶ壮大なものであるが、生徒の学力維持あるいは学力回復を目標にしたその構想を要約すれば、教育界に競争原理とプライバティゼーション(個人生活重視主義)の導入をねらいとするものであるということができるだろう。
 +しかし、このような教育改革には、必ず反対する側が存在するものなので、順調に達成されるとは思われない。たとえば、ナショナル・テストなども参加ボイコットなどの運動が当然起こってくるものだと考えられる。さらに、政権の交代も複雑な影響を及ぼし、これからも前途にはさまざまな困難が予想されるだろう。
 +この教育改革の中で、初等、中等教育に関してその中心となる内容は次の通りである。
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 +== ①ナショナル・カリキュラムの導入 ==
 +イギリスでは伝統的に各学校で独自に自主的カリキュラムを編成して教育を実施してきたが、一律に、全国共通のナショナル・カリキュラムを制定して、履修させることにした。このナショナル・カリキュラムを見ると、英語、数学、理科を「重要科目」とし、外国語、歴史、地理、技術、音楽、美術、体育を「基礎科目」として、公立学校では、5歳~16歳までの11年間の義務教育機関の必修科目と規定している。ただし、学校で必要と判断した場合には、その他の独自の教科や教育活動も認めている。
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 +== ②各教科の教育内容の基準の設定 ==
 +各教科の学習領域が教育担当大臣によって明確にされていて、それぞれの領域における「到達レベル」が10段階で示されている。また、各教科の指導内容が「学習プログラム」という形で示されている。しかし、日本の学習指導要領のように指導内容が学年によって決められているのではなく、キー・ステージと呼ばれる2年ないし4年間からなる年齢段階に応じて配分されている。
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 +== ③ナショナル・テスト(全国試験)の実施 ==
 +5歳から16歳までの義務教育に対して全国一律のカリキュラムが制定されたが、それに関連して、2学年終了時の7歳、6学年終了時の11歳、9学年終了時の14歳、義務教育終了時の16歳の時点で、それぞれの到達度を評価するために、全国一斉にナショナル・テストが実施されるようになった。1993年のナショナルカリキュラムの改定と同時に内容が簡素化され、1995年からは英語、数学、理科の3科目について実施されている。
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 +== ④シティ・テクノロジー・カレッジ、芸術テクノロジー・カレッジの新設 ==
 +主に都市部の12歳~18歳までの青少年を対象にして、科学技術や芸術のための技術に重点を置いた教育を行う学校で、一部は民間からの援助資金によって運営されている。日本でいうコース制の学校に相当するものである。
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 +== ⑤学校別全国成績一覧表の公開 ==
 +親の学校選択の拡大と学校間競争の活性化を目的に1992年から教育法に基づいて、GCSE、GCE、職業関連資格、インターナショナルバカロレアなど各種資格の取得結果が学校別に新聞などに掲載することになった。また、義務教育段階では出欠状況も明らかにされている。発表の時期は新年度が始まる直前の8月半ばである。shuto
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 +== 参考文献 ==
 +「諸外国の学校教育」文部省編 教育調査第122集
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 +「世界の学校―比較教育文化論の視点にいたって」福村出版 二宮皓
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 +「世界の教育改革―21世紀への架ヶ橋」 東信堂 佐藤三郎
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 +「イギリスの多文化・多民族教育」 国土社 佐久間孝正
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 +「世界の教育―欧米の教育を中心に―」 財団法人日本私学教育研究所

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イギリスが第二次大戦以後、戦勝国であるにも関わらず、前の黄金時代に見られたような国力やエネルギーを失い、産業、工業、経済をはじめ、国民生活の広い分野での衰退化が目立ち、「黄昏のイギリス」「老大国イギリス」「イギリス病国」と呼ばれるようになった。そのうえ、生徒の学力が他の先進国に比べて低下していることが危惧された。そこで、このような状況を打破するために、繁栄に導くための最大の課題は「教育の質の向上である」という当時のサッチャー首相の提言のもとに実施されたのが、1988年の教育改革である。 この教育改革は初等教育、中等教育の範囲に留まらず、高等教育、さらには教育行政にまで及ぶ壮大なものであるが、生徒の学力維持あるいは学力回復を目標にしたその構想を要約すれば、教育界に競争原理とプライバティゼーション(個人生活重視主義)の導入をねらいとするものであるということができるだろう。 しかし、このような教育改革には、必ず反対する側が存在するものなので、順調に達成されるとは思われない。たとえば、ナショナル・テストなども参加ボイコットなどの運動が当然起こってくるものだと考えられる。さらに、政権の交代も複雑な影響を及ぼし、これからも前途にはさまざまな困難が予想されるだろう。 この教育改革の中で、初等、中等教育に関してその中心となる内容は次の通りである。

目次

①ナショナル・カリキュラムの導入

イギリスでは伝統的に各学校で独自に自主的カリキュラムを編成して教育を実施してきたが、一律に、全国共通のナショナル・カリキュラムを制定して、履修させることにした。このナショナル・カリキュラムを見ると、英語、数学、理科を「重要科目」とし、外国語、歴史、地理、技術、音楽、美術、体育を「基礎科目」として、公立学校では、5歳~16歳までの11年間の義務教育機関の必修科目と規定している。ただし、学校で必要と判断した場合には、その他の独自の教科や教育活動も認めている。

②各教科の教育内容の基準の設定

各教科の学習領域が教育担当大臣によって明確にされていて、それぞれの領域における「到達レベル」が10段階で示されている。また、各教科の指導内容が「学習プログラム」という形で示されている。しかし、日本の学習指導要領のように指導内容が学年によって決められているのではなく、キー・ステージと呼ばれる2年ないし4年間からなる年齢段階に応じて配分されている。

③ナショナル・テスト(全国試験)の実施

5歳から16歳までの義務教育に対して全国一律のカリキュラムが制定されたが、それに関連して、2学年終了時の7歳、6学年終了時の11歳、9学年終了時の14歳、義務教育終了時の16歳の時点で、それぞれの到達度を評価するために、全国一斉にナショナル・テストが実施されるようになった。1993年のナショナルカリキュラムの改定と同時に内容が簡素化され、1995年からは英語、数学、理科の3科目について実施されている。

④シティ・テクノロジー・カレッジ、芸術テクノロジー・カレッジの新設

主に都市部の12歳~18歳までの青少年を対象にして、科学技術や芸術のための技術に重点を置いた教育を行う学校で、一部は民間からの援助資金によって運営されている。日本でいうコース制の学校に相当するものである。

⑤学校別全国成績一覧表の公開

親の学校選択の拡大と学校間競争の活性化を目的に1992年から教育法に基づいて、GCSE、GCE、職業関連資格、インターナショナルバカロレアなど各種資格の取得結果が学校別に新聞などに掲載することになった。また、義務教育段階では出欠状況も明らかにされている。発表の時期は新年度が始まる直前の8月半ばである。shuto

参考文献

「諸外国の学校教育」文部省編 教育調査第122集

「世界の学校―比較教育文化論の視点にいたって」福村出版 二宮皓

「世界の教育改革―21世紀への架ヶ橋」 東信堂 佐藤三郎

「イギリスの多文化・多民族教育」 国土社 佐久間孝正

「世界の教育―欧米の教育を中心に―」 財団法人日本私学教育研究所


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