ヘッドスタート計画5

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2016年7月28日 (木) 19:54の版
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 ヘッドスタートとは、アメリカが1960年代の半ばから行っているプログラムで、低所得者層の3歳から4歳の子供を対象としたものである。当初のアメリカには主要な事業が3つあり、  ヘッドスタートとは、アメリカが1960年代の半ばから行っているプログラムで、低所得者層の3歳から4歳の子供を対象としたものである。当初のアメリカには主要な事業が3つあり、
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①ジョブ・コープ:低所得者層や無職者に対して教育及び職業訓練の機会を提供する事業で ①ジョブ・コープ:低所得者層や無職者に対して教育及び職業訓練の機会を提供する事業で
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②コミュニティ活動事業:指定を受けた地域において住民代表が意思決定に参加するかたちで地域開発を推進する ②コミュニティ活動事業:指定を受けた地域において住民代表が意思決定に参加するかたちで地域開発を推進する
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③VISTA:国内の貧困地区において支援活動に従事する若者を派遣する ③VISTA:国内の貧困地区において支援活動に従事する若者を派遣する
- 2つ目のコミュニティ活動事業では行政に圧力をかけ、制御不能になるケースも出てきたため、代わりに自治体政府を納得させる目的でヘッドスタート計画が始まった。+ 
- ヘッドスタート計画は個人や世帯に直接給付が行われるのではなく、ヘッドスタート計画を推進する機関に対して連邦政府が補助金を交付し、その機関が利用条件を満たす世帯に対して関連サービスを提供するという制度設計になっている。政府の補助金の交付先機関には、民間非営利組織やコミュニティ活動事業を推進する機関、公立学校等がある。+2つ目のコミュニティ活動事業では行政に圧力をかけ、制御不能になるケースも出てきたため、代わりに自治体政府を納得させる目的でヘッドスタート計画が始まった。
- 通常、ヘッドスタート計画では、拠点となる施設に参加自動を集め、半日の教育プログラムを提供する。どのようなことをして過ごすかは自由で、児童の希望に合わせてスタッフが多様な選択肢を用意する。また、児童の自宅でプログラムを提供する場合には、スタッフが利用者宅を訪問し、親が子供の学習を促進できるように支援する。全国共通のプログラムが定められているわけではなく、「教育プログラム」「保健プログラム」「親の関与を促進するプログラム」「ソーシャルサービス」の4つの柱から各機関がプログラムを構築する。+ 
- ヘッドスタート計画にかかわる研究を推進していたジグラーらによれば、本計画は教育プログラムをはるかに超えるものであり、アカデミックな知識の教授という狭義での教育ではなく、事業を利用する親子が自立した生活を営む力を身に付けるエンパワメントができるように、児童、家族、コミュニティの複雑な関係を意識して広く介入することを意識した事業であるという。+ヘッドスタート計画は個人や世帯に直接給付が行われるのではなく、ヘッドスタート計画を推進する機関に対して連邦政府が補助金を交付し、その機関が利用条件を満たす世帯に対して関連サービスを提供するという制度設計になっている。政府の補助金の交付先機関には、民間非営利組織やコミュニティ活動事業を推進する機関、公立学校等がある。
- ヘッドスタート計画によって貧困世帯の学力は向上したようにみえたが、それは一時的なものであり、評価は低迷していた。しかし、長期的にみると、学力以外の社会的な側面(保健、医療、保護者の教育とキャリア対策など)において効果を発揮しているという報告がなされ、予算規模と事業規模は拡大していった。+ 
 +通常、ヘッドスタート計画では、拠点となる施設に参加自動を集め、半日の教育プログラムを提供する。どのようなことをして過ごすかは自由で、児童の希望に合わせてスタッフが多様な選択肢を用意する。また、児童の自宅でプログラムを提供する場合には、スタッフが利用者宅を訪問し、親が子供の学習を促進できるように支援する。全国共通のプログラムが定められているわけではなく、「教育プログラム」「保健プログラム」「親の関与を促進するプログラム」「ソーシャルサービス」の4つの柱から各機関がプログラムを構築する。
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 +ヘッドスタート計画にかかわる研究を推進していたジグラーらによれば、本計画は教育プログラムをはるかに超えるものであり、アカデミックな知識の教授という狭義での教育ではなく、事業を利用する親子が自立した生活を営む力を身に付けるエンパワメントができるように、児童、家族、コミュニティの複雑な関係を意識して広く介入することを意識した事業であるという。
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 +ヘッドスタート計画によって貧困世帯の学力は向上したようにみえたが、それは一時的なものであり、評価は低迷していた。しかし、長期的にみると、学力以外の社会的な側面(保健、医療、保護者の教育とキャリア対策など)において効果を発揮しているという報告がなされ、予算規模と事業規模は拡大していった。
参考文献 参考文献
子どもの貧困/不利/困難を考える P169 室田信一(2015年、ミネルヴァ書房) 子どもの貧困/不利/困難を考える P169 室田信一(2015年、ミネルヴァ書房)

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 ヘッドスタートとは、アメリカが1960年代の半ばから行っているプログラムで、低所得者層の3歳から4歳の子供を対象としたものである。当初のアメリカには主要な事業が3つあり、

①ジョブ・コープ:低所得者層や無職者に対して教育及び職業訓練の機会を提供する事業で

②コミュニティ活動事業:指定を受けた地域において住民代表が意思決定に参加するかたちで地域開発を推進する

③VISTA:国内の貧困地区において支援活動に従事する若者を派遣する   2つ目のコミュニティ活動事業では行政に圧力をかけ、制御不能になるケースも出てきたため、代わりに自治体政府を納得させる目的でヘッドスタート計画が始まった。   ヘッドスタート計画は個人や世帯に直接給付が行われるのではなく、ヘッドスタート計画を推進する機関に対して連邦政府が補助金を交付し、その機関が利用条件を満たす世帯に対して関連サービスを提供するという制度設計になっている。政府の補助金の交付先機関には、民間非営利組織やコミュニティ活動事業を推進する機関、公立学校等がある。   通常、ヘッドスタート計画では、拠点となる施設に参加自動を集め、半日の教育プログラムを提供する。どのようなことをして過ごすかは自由で、児童の希望に合わせてスタッフが多様な選択肢を用意する。また、児童の自宅でプログラムを提供する場合には、スタッフが利用者宅を訪問し、親が子供の学習を促進できるように支援する。全国共通のプログラムが定められているわけではなく、「教育プログラム」「保健プログラム」「親の関与を促進するプログラム」「ソーシャルサービス」の4つの柱から各機関がプログラムを構築する。   ヘッドスタート計画にかかわる研究を推進していたジグラーらによれば、本計画は教育プログラムをはるかに超えるものであり、アカデミックな知識の教授という狭義での教育ではなく、事業を利用する親子が自立した生活を営む力を身に付けるエンパワメントができるように、児童、家族、コミュニティの複雑な関係を意識して広く介入することを意識した事業であるという。   ヘッドスタート計画によって貧困世帯の学力は向上したようにみえたが、それは一時的なものであり、評価は低迷していた。しかし、長期的にみると、学力以外の社会的な側面(保健、医療、保護者の教育とキャリア対策など)において効果を発揮しているという報告がなされ、予算規模と事業規模は拡大していった。

参考文献 子どもの貧困/不利/困難を考える P169 室田信一(2015年、ミネルヴァ書房)


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