腰痛
出典: Jinkawiki
2017年7月30日 (日) 11:36の版 Daijiten2014 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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== 概要 == | == 概要 == | ||
腰痛は先進諸国の国民の7割以上が、一生のうちに一度は腰痛を経験するといわれる症状である。 | 腰痛は先進諸国の国民の7割以上が、一生のうちに一度は腰痛を経験するといわれる症状である。 | ||
- | + | 腰痛の定義 として、「腰痛」とは疾患(病気)の名前ではなく、腰部を主とした痛みやはりなどの不快感といった症状の総称である。一般的に座骨神経痛を代表とする下肢(脚)の症状を伴う場合も含む。 | |
== 歴史的背景 == | == 歴史的背景 == | ||
約350万年~380万年前に人類が4足歩行から2本足で歩くようになってから、「人類と腰痛」の歴史は始まっている。 | 約350万年~380万年前に人類が4足歩行から2本足で歩くようになってから、「人類と腰痛」の歴史は始まっている。 | ||
はじめは、オスがメスに対して木の実などを取ってあげるために二足歩行をし始めたといわれており、その後、人類が農耕をはじめ、種まきなど前かがみになる体勢が椎間板などに負担をかけ椎間板が耐えられなくなっていった。 | はじめは、オスがメスに対して木の実などを取ってあげるために二足歩行をし始めたといわれており、その後、人類が農耕をはじめ、種まきなど前かがみになる体勢が椎間板などに負担をかけ椎間板が耐えられなくなっていった。 | ||
- | つまり、人が2本足で歩くためには、上半身の重みを腰で支えつつ、体の中心で柱で重力に対する緩衝機能の役割をしている背骨やその周辺に、大きな負担をかけているのだ。 | + | つまり、人が2本足で歩くためには、上半身の重みを腰で支えているため、腰に大きな負担がかかっているのだ。 |
- | 4足歩行のときは、背骨というのは上半身と下半身を繋ぐ梁の役割をしているため、前足、後ろ足での4点で安定した状態で支えられていた。 | + | 4足歩行のときは、背骨というのは上半身と下半身を繋ぐ役割をしているため、前足、後ろ足での4点で安定した状態で支えられていた。 |
- | ところが、2足歩行になってしまと、背骨は不安定ながらも直立的に立たざる得なくなり、元来、背骨とは梁として用いる骨格のため、違う用途にしよすると、無理が生じる。 | + | ところが、2足歩行になってしまと、背骨は不安定ながらも直立的に立たざるを得なくなり、元来、背骨とは梁として用いる骨格のため、違う用途にしようとすると、無理が生じる。 |
そのため、負荷が良く及ぶのが腰椎や骨盤であることが多く、腰痛などの症状がでる。 | そのため、負荷が良く及ぶのが腰椎や骨盤であることが多く、腰痛などの症状がでる。 | ||
== 原因 == | == 原因 == | ||
(1)長時間同じ姿勢でいることによる筋肉の緊張 | (1)長時間同じ姿勢でいることによる筋肉の緊張 | ||
- | 長時間座っていたり、立ちっぱなし、中腰など、無理な姿勢を続けると腰の筋肉が緊張してしまい、時間の経過とともに筋肉が疲労し、血行が悪くなり腰に痛みが起こる。 | ||
- | (2)運動不足、筋肉退化による筋力低下 | + | 長時間座っていたり、立ちっぱなし、中腰など、無理な姿勢を続けると腰の筋肉が緊張してしまい、時間の経過とともに筋肉が疲労し、血行が悪くなり腰に痛みが起こる症状である。 |
- | 腰の周りにある大腰筋(だいようきん)や大殿筋(だいでんきん)、中殿筋(ちゅうでんきん)の筋力が衰えると、腰椎に負担がかかり、腰痛を引き起こす。腹筋は横隔膜とともに背骨を支える働きがあるので、腹筋の筋力が低下し、正しい姿勢が保ちにくくなると、腰椎に負担をかけることになる。また骨盤の筋肉は姿勢を保つのに大きく関与し、これらの筋力の低下が、腰痛の要因となる。 | + | |
+ | (2)運動不足、筋肉の衰えによる筋力低下 | ||
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+ | 腰の周りにある大腰筋(だいようきん)や大殿筋(だいでんきん)、中殿筋(ちゅうでんきん)の筋力が衰えると、腰椎に負担がかかってしまい、腰痛を引き起こす原因となる。また、腹筋は横隔膜とともに背骨を支える働きがあるため、腹筋の筋力が低下により、正しい姿勢が保ちにくくなるので、腰椎に負担をかけることになってしまう。骨盤の筋肉は姿勢を保つのに大きく関係していて、これらの筋力の低下が、腰痛の症状を引き起こす原因となっている。 | ||
(3)過剰な動きや無理な負担 | (3)過剰な動きや無理な負担 | ||
- | 過度の運動によって筋肉は疲労し、徐々に緊張を強めて腰痛を引き起こす。また、腰に無理な力がかかるような動作を行うと、ぎっくり腰など急性の腰痛を招くことがある。 | + | |
+ | 過度の運動によって筋肉は疲労し、徐々に緊張を強めて腰痛を引き起こす。また、腰に無理な力がかかるような動作を行ってしまうと、ぎっくり腰などのような急性の腰痛を招くことがある。 | ||
== 腰痛をともなう疾患 == | == 腰痛をともなう疾患 == | ||
(1)ぎっくり腰 | (1)ぎっくり腰 | ||
- | 顔を洗うときの中腰の姿勢や、重いものを持ち上げるときの腰を折り曲げた姿勢などが原因で起こる。脊髄の近くにある椎間関節という小さな関節が捻挫を起こし、急激な痛みに襲われ、動けなくなる。腹筋や背筋が弱い人に起こりやすく、再発することも少ない。 | + | |
+ | 顔を洗うときの中腰の姿勢や、重いものを持ち上げるときに腰に負担がかかるような体勢で腰を折り曲げたりすることが原因で起こる。脊髄の近くにある椎間関節という小さな関節が捻挫を起こしてしまい、急激な痛みに襲われ、動けなくなってしまう。また、特に腹筋や背筋が弱い人に起こりやすく、再発することも少ない症状である。 | ||
(2)椎間板ヘルニア | (2)椎間板ヘルニア | ||
- | 骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂ができて、中の椎間板組織の一部が飛び出し、神経を圧迫することで起こります。首から腰にかけての痛みや足指のしびれや、坐骨神経痛と呼ばれる片側の足の後ろ側の痛みやしびれが代表的な症状。若い人にも比較的多く、動くと腰や足の激痛とつっぱりなどで動けなくなることもある。高齢者の場合、足などにも痛みが及び、歩行困難になることが少なくない。 | + | |
+ | 骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂ができて、中の椎間板組織の一部が飛び出してしまい、そのことによって神経を圧迫して起こる症状である。首から腰にかけての痛み、足の指のしびれや、坐骨神経痛と呼ばれる片側の足の後ろ側の痛みやしびれが代表的な症状である。若い人にも比較的多く、動くと腰や足に動けなくなるほどの激痛やつっぱりなどの症状が起こる。高齢者の場合だと足などにも痛みが及び、歩行困難になることがある。 | ||
(3)脊椎分離症 | (3)脊椎分離症 | ||
- | 過激な運動で脊椎骨の一部が骨折して離れると、腰が重く感じられ、ときどき腰痛があらわれる。しかし、痛みを感じないこともあるので、放置されることも少なくない。脊椎分離症は小学生高学年から中学生に多くみられ、脊椎分離が起こると分離すべり症に移行したり、椎間板ヘルニアを併発することもある。 | + | |
+ | 過激な運動で脊椎骨の一部が骨折して離れると、腰が重い感じ、ときどき腰痛があらわれる症状である。しかし、痛みを感じないこともあるので、放置されることもある。脊椎分離症は特に小学生高学年から中学生に多くみられ、脊椎分離が起こると分離すべり症に移行したり、椎間板ヘルニアを併発することもある症状である。 | ||
(4)すべり症 | (4)すべり症 | ||
- | 縦に連なっている脊椎が前後にずれて、神経を圧迫し、強い痛みが生じ、しびれをともなうこともある。脊椎の一部が骨折して分離した分離すべり症と、加齢による椎間板の変形が原因の脊椎(変形)すべり症があり、いずれも40~50代の中高年に多くみられる。 | + | |
+ | 縦に連なっている脊椎が前後にずれてしまい、神経を圧迫することで強い痛みが生じ、しびれをともなう症状である。このすべり症には2種類あり、脊椎の一部が骨折して分離した「分離すべり症」と、加齢による椎間板の変形が原因の「脊椎(変形)すべり症」がある。この症状はいずれも40~50代の中高年に多くみられるものである。 | ||
(5)腰部変形性脊椎症(変形性腰椎症) | (5)腰部変形性脊椎症(変形性腰椎症) | ||
- | 加齢とともに腰椎が変形し、突出することがあり、トゲのようにも見えるため、骨棘(こっきょく)と呼ばれる。骨棘の尖った部分が神経を圧迫すると、腰痛を引き起こし、起きあがったときやトイレに立つときなど、動き始めに痛みが起こりやすいという特徴がある。 | + | |
+ | 加齢とともに腰椎が変形し、突出するようなものであり、それがトゲのようにも見えるため、骨棘(こっきょく)と呼ばれる症状である。骨棘の尖った部分が神経を圧迫すると、腰痛を引き起こし、起きあがったときやトイレに立つときなど、動き始めに痛みが起こりやすいという特徴がある。 | ||
(6)腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう) | (6)腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう) | ||
- | 長年腰に負担がかかって、椎間板が変性したことが原因となって神経の通り道である背骨の脊柱管が狭くなり、神経を圧迫するために起こる。安静時には症状が軽い場合が多いが、歩き続けると下肢のしびれや痛みが生じて動けなくなることもある。立ち止まって休憩をとると症状が緩和し、歩き出してしばらくすると、また悪化するといった状態を繰り返すのが特徴的。 | + | |
+ | 長年腰に負担がかかって、椎間板が変性したことが原因となって起こる症状である。神経の通り道である背骨の脊柱管が狭くなってしまい、神経を圧迫するために起こる。安静時には症状が軽い場合が多いが、歩き続けると下肢のしびれや痛みが生じて動けなくなることもある。いったん、立ち止まって休憩をとると症状が緩和するが、再び歩き出してしばらくすると、また悪化するといった状態を繰り返すのが特徴である。 | ||
(7)骨粗しょう症 | (7)骨粗しょう症 | ||
- | 骨量が減少し、骨がスカスカの状態になり、日常のささいな動きで小さな骨折を起こしたり、自分の体重が支え切れず圧迫骨折を起こしたりする疾患。骨折すると腰痛を引き起こし、閉経後の女性やお年寄りに多くみられる。 | + | |
+ | 骨量が減少し、骨がスカスカの状態になり、日常のささいな動きだけでも小さな骨折を起こしたり、自分の体重が支え切れず圧迫骨折を起こしたりする疾患。骨折すると腰痛を引き起こしたり、閉経後の女性やお年寄りに多くみられる症状である。 | ||
(8)腰痛症 | (8)腰痛症 | ||
- | レントゲンなどの検査をしても、腰痛の原因となるような異常がないのに腰痛があることをまとめて腰痛症と呼ぶ。痛みの原因が主に腰背筋の疲労や炎症にあると考えられる腰痛で、疲労性の腰痛ともいわれる。姿勢、動き、柔軟性、筋力、バランスなどの機能的な問題によって起こり、本格的に腰椎の変形や変性を起こす初期段階にあるとも考えられる。 | + | |
+ | レントゲンなどの検査をしても、腰痛の原因となるような異常が見つからないのに腰痛があるということをまとめて腰痛症と呼ぶ。痛みの原因が主に腰背筋の疲労や炎症にあると考えられる腰痛で、疲労性の腰痛ともいわれる。姿勢、動き、柔軟性、筋力、バランスなどの機能的な問題によって起こり、本格的に腰椎の変形や変性を起こす初期段階にあるとも考えられている。 | ||
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+ | == 厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」 == | ||
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+ | 仕事中の腰痛は労働災害となっている。腰痛の発生件数が増加のに伴い、厚生労働省は、2013年に「職場における腰痛予防対策指針」の改訂版を発表した。 | ||
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+ | 「作業管理の対策」 | ||
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+ | ①自動化・省力化 | ||
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+ | 機械による重量物の取り扱いや自動化を推進させ、または台車など補助機器の補完を目指す。 | ||
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+ | ②作業姿勢・動作 | ||
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+ | 不自然な姿勢を強いる作業台などの改善を目指す。 | ||
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+ | ③靴・服装 | ||
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+ | 適切な姿勢や動作を妨げない作業服の導入を目指す。 | ||
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+ | 厚生労働省が発表した指針の中には、上記以外にも腰に負担の多い作業の分業化や、技能レベルによる作業者の選定、そして適度な休憩時間の導入を呼びかけている。 | ||
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+ | 「作業環境管理の対策」 | ||
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+ | ①温度 | ||
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+ | 低温の場所での作業は腰痛を発生させやすくさせるので、注意すること。 | ||
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+ | ②作業空間 | ||
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+ | 凹凸な段差のない、滑りにくい床面の確保が必須すること。 | ||
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+ | ③振動 | ||
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+ | 車両系機器の操作は振動がおこるため、腰痛を発生させやすいので、軽減を図ること。 | ||
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+ | 厚生労働省が発表した指針は、上記以外にも足元や周囲の安全確認が容易となる照明の重要性も述べている。 | ||
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・人類の歴史=腰痛の歴史 http://www.t-h-s.top/archives/855/ | ・人類の歴史=腰痛の歴史 http://www.t-h-s.top/archives/855/ | ||
- | ・ハンドルネーム みっつ | + | ・職場での腰痛予防 http://www.youtsu-help.com/steps/atoffice.html |
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+ | ・NHKスペシャル 「病の起源」2013.5.18 | ||
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+ | ・腰痛対策 - 厚生労働省 | ||
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+ | ハンドルネーム みっつ |
最新版
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概要
腰痛は先進諸国の国民の7割以上が、一生のうちに一度は腰痛を経験するといわれる症状である。 腰痛の定義 として、「腰痛」とは疾患(病気)の名前ではなく、腰部を主とした痛みやはりなどの不快感といった症状の総称である。一般的に座骨神経痛を代表とする下肢(脚)の症状を伴う場合も含む。
歴史的背景
約350万年~380万年前に人類が4足歩行から2本足で歩くようになってから、「人類と腰痛」の歴史は始まっている。 はじめは、オスがメスに対して木の実などを取ってあげるために二足歩行をし始めたといわれており、その後、人類が農耕をはじめ、種まきなど前かがみになる体勢が椎間板などに負担をかけ椎間板が耐えられなくなっていった。 つまり、人が2本足で歩くためには、上半身の重みを腰で支えているため、腰に大きな負担がかかっているのだ。 4足歩行のときは、背骨というのは上半身と下半身を繋ぐ役割をしているため、前足、後ろ足での4点で安定した状態で支えられていた。 ところが、2足歩行になってしまと、背骨は不安定ながらも直立的に立たざるを得なくなり、元来、背骨とは梁として用いる骨格のため、違う用途にしようとすると、無理が生じる。 そのため、負荷が良く及ぶのが腰椎や骨盤であることが多く、腰痛などの症状がでる。
原因
(1)長時間同じ姿勢でいることによる筋肉の緊張
長時間座っていたり、立ちっぱなし、中腰など、無理な姿勢を続けると腰の筋肉が緊張してしまい、時間の経過とともに筋肉が疲労し、血行が悪くなり腰に痛みが起こる症状である。
(2)運動不足、筋肉の衰えによる筋力低下
腰の周りにある大腰筋(だいようきん)や大殿筋(だいでんきん)、中殿筋(ちゅうでんきん)の筋力が衰えると、腰椎に負担がかかってしまい、腰痛を引き起こす原因となる。また、腹筋は横隔膜とともに背骨を支える働きがあるため、腹筋の筋力が低下により、正しい姿勢が保ちにくくなるので、腰椎に負担をかけることになってしまう。骨盤の筋肉は姿勢を保つのに大きく関係していて、これらの筋力の低下が、腰痛の症状を引き起こす原因となっている。
(3)過剰な動きや無理な負担
過度の運動によって筋肉は疲労し、徐々に緊張を強めて腰痛を引き起こす。また、腰に無理な力がかかるような動作を行ってしまうと、ぎっくり腰などのような急性の腰痛を招くことがある。
腰痛をともなう疾患
(1)ぎっくり腰
顔を洗うときの中腰の姿勢や、重いものを持ち上げるときに腰に負担がかかるような体勢で腰を折り曲げたりすることが原因で起こる。脊髄の近くにある椎間関節という小さな関節が捻挫を起こしてしまい、急激な痛みに襲われ、動けなくなってしまう。また、特に腹筋や背筋が弱い人に起こりやすく、再発することも少ない症状である。
(2)椎間板ヘルニア
骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂ができて、中の椎間板組織の一部が飛び出してしまい、そのことによって神経を圧迫して起こる症状である。首から腰にかけての痛み、足の指のしびれや、坐骨神経痛と呼ばれる片側の足の後ろ側の痛みやしびれが代表的な症状である。若い人にも比較的多く、動くと腰や足に動けなくなるほどの激痛やつっぱりなどの症状が起こる。高齢者の場合だと足などにも痛みが及び、歩行困難になることがある。
(3)脊椎分離症
過激な運動で脊椎骨の一部が骨折して離れると、腰が重い感じ、ときどき腰痛があらわれる症状である。しかし、痛みを感じないこともあるので、放置されることもある。脊椎分離症は特に小学生高学年から中学生に多くみられ、脊椎分離が起こると分離すべり症に移行したり、椎間板ヘルニアを併発することもある症状である。
(4)すべり症
縦に連なっている脊椎が前後にずれてしまい、神経を圧迫することで強い痛みが生じ、しびれをともなう症状である。このすべり症には2種類あり、脊椎の一部が骨折して分離した「分離すべり症」と、加齢による椎間板の変形が原因の「脊椎(変形)すべり症」がある。この症状はいずれも40~50代の中高年に多くみられるものである。
(5)腰部変形性脊椎症(変形性腰椎症)
加齢とともに腰椎が変形し、突出するようなものであり、それがトゲのようにも見えるため、骨棘(こっきょく)と呼ばれる症状である。骨棘の尖った部分が神経を圧迫すると、腰痛を引き起こし、起きあがったときやトイレに立つときなど、動き始めに痛みが起こりやすいという特徴がある。
(6)腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
長年腰に負担がかかって、椎間板が変性したことが原因となって起こる症状である。神経の通り道である背骨の脊柱管が狭くなってしまい、神経を圧迫するために起こる。安静時には症状が軽い場合が多いが、歩き続けると下肢のしびれや痛みが生じて動けなくなることもある。いったん、立ち止まって休憩をとると症状が緩和するが、再び歩き出してしばらくすると、また悪化するといった状態を繰り返すのが特徴である。
(7)骨粗しょう症
骨量が減少し、骨がスカスカの状態になり、日常のささいな動きだけでも小さな骨折を起こしたり、自分の体重が支え切れず圧迫骨折を起こしたりする疾患。骨折すると腰痛を引き起こしたり、閉経後の女性やお年寄りに多くみられる症状である。
(8)腰痛症
レントゲンなどの検査をしても、腰痛の原因となるような異常が見つからないのに腰痛があるということをまとめて腰痛症と呼ぶ。痛みの原因が主に腰背筋の疲労や炎症にあると考えられる腰痛で、疲労性の腰痛ともいわれる。姿勢、動き、柔軟性、筋力、バランスなどの機能的な問題によって起こり、本格的に腰椎の変形や変性を起こす初期段階にあるとも考えられている。
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」
仕事中の腰痛は労働災害となっている。腰痛の発生件数が増加のに伴い、厚生労働省は、2013年に「職場における腰痛予防対策指針」の改訂版を発表した。
「作業管理の対策」
①自動化・省力化
機械による重量物の取り扱いや自動化を推進させ、または台車など補助機器の補完を目指す。
②作業姿勢・動作
不自然な姿勢を強いる作業台などの改善を目指す。
③靴・服装
適切な姿勢や動作を妨げない作業服の導入を目指す。
厚生労働省が発表した指針の中には、上記以外にも腰に負担の多い作業の分業化や、技能レベルによる作業者の選定、そして適度な休憩時間の導入を呼びかけている。
「作業環境管理の対策」
①温度
低温の場所での作業は腰痛を発生させやすくさせるので、注意すること。
②作業空間
凹凸な段差のない、滑りにくい床面の確保が必須すること。
③振動
車両系機器の操作は振動がおこるため、腰痛を発生させやすいので、軽減を図ること。
厚生労働省が発表した指針は、上記以外にも足元や周囲の安全確認が容易となる照明の重要性も述べている。
参考文献
・タケダ健康サイト http://takeda-kenko.jp/navi/navi.php?key=youtsu&navi=text
・人類の歴史=腰痛の歴史 http://www.t-h-s.top/archives/855/
・職場での腰痛予防 http://www.youtsu-help.com/steps/atoffice.html
・NHKスペシャル 「病の起源」2013.5.18
・腰痛対策 - 厚生労働省
ハンドルネーム みっつ