アメリカの教員の資格2

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-1 1987年設立の「全国教職専門職基準委員会」NBPTSによる「教職に対する5つの中核概念」NBPTSではこれらの基準にそった資格証明の活動を開始し、全国委員会による資格証明された教師の数は年々増加している。+1 1987年設立の「全国教職専門職基準委員会」NBPTSによる「教職に対する5つの中核概念」NBPTSではこれらの基準にそった資格証明の活動を開始し、全国委員会による資格証明された教師の数は年々増加している。
2 「全米教師教育資格認定協議会」NCATEと「教師教育資格認定協議会」TEACが合併した「敎育者養成資格認定協議会」CAEPによる、「敎育者養成資格認定のためのCAEPスタンダード」 2 「全米教師教育資格認定協議会」NCATEと「教師教育資格認定協議会」TEACが合併した「敎育者養成資格認定協議会」CAEPによる、「敎育者養成資格認定のためのCAEPスタンダード」

2018年7月23日 (月) 14:20の版

目次

免許更新制と研修

公教育に関する権限は州にあるが、この権限の多くは地方学区に委譲されており、教員人事行政の主な部分(募集、採用、配置、研修、評価、給与、昇格、退職等)は学区の所管事項である。よって、教員の採用は各学区で書類審査や面接等により実施される。そして、新規に採用された教員は通常は任期付きの契約として雇用され、その後免許状を更新・上進していく。 アメリカにおける教員免許状の更新制、上進制は、社公的経済的地位が低いとされ志願者をさほど多く集められなかった教職に対して、教職に就いた者に教師としての適正判定や資質能力をレベルアップさせ、教師としての力量を生涯にわたって向上させていくという意図で策定された制度である。そして、現職時に受けた研修が免許の更新や上進と連動しており、さらにはそこで獲得した取得単位や取得学位が教員の給料等、教員の待遇に明確に反映されている。各州において教員免許状の名称等は異なるが、一般的には、初任者免許状 (3〜5年有効、更新不可)標準免許状(5年間友好、更新可)とそれらに加えて、さらに上級免許状(5年以上有効、更新可)の3種類 の州に分けられる。よって、アメリカにおける現職研修は、このような教員免許の更新制、上進制と連動したものとなっている。免許状の更新や上進の条件は各州により異なるが、基本的には教職経験年数と大学・大学院での単位取り得や学位(修士)取得、学区主催のワークショップ、学区や地域レベルで組織されるカリキュラム委員会等への参加、教育団体主催の現職教育活動等による研修を受ける。そして各州で、必要な大学·大学院の単位数、あるいは職能成長のための単位や受講時間等を設定している。最近では、より現場に対応した教科指導や学級経営等の実践力を獲得する月的で、学区主催のワークショップへの参加者の比率が高くなっている。また、各自目標を設定しその目標達成のための研修活動を選択していくような個別の研修計画、例えば「職能成長計画」等を作成し、それの実行を要件としている州もある。    

教員の取得学位

教師教育の高度化の動きはあるものの、それは免許状取得の要件として最初から修士を要求するのではなくて「免許更新、上進の要件として」学部レベル以上の5年目教育あるいは修士号を要求している。 アメリカにおける「公立学校教員の取得学位」(1987/88〜2012)からは公立学校教員の取得学位は年度とともに「学士」が減少し「修士」が増加する傾向にある。しかし、「年齢別にみた公立学校教員の取得学位」(2011\12年)で年齢別にみると、30歳未満では修士教員に対して学士教員が圧倒的に多い。年齢とともに修士教員の割合が高くなり、合わせて博士号取得教員も比例して高くなる。


教職スタンダード

このような免許の更新、上進と連動した研修は、各州で制定されている教職の専門的力量のビジョン、方向性、教師としての専門性の基本的な枠組みである「教職スタンダード」(Teaching Standards)に基づいたものである。これは、研修のみならず、教員養成プログラム、採用、免許制度等、州の一連の教師教育の指針となっている。   各州の「教職スタンダード」は、主に以下の全国組織の教職専門職基準を参考にして、独自に制定されている。


1 1987年設立の「全国教職専門職基準委員会」NBPTSによる「教職に対する5つの中核概念」NBPTSではこれらの基準にそった資格証明の活動を開始し、全国委員会による資格証明された教師の数は年々増加している。

2 「全米教師教育資格認定協議会」NCATEと「教師教育資格認定協議会」TEACが合併した「敎育者養成資格認定協議会」CAEPによる、「敎育者養成資格認定のためのCAEPスタンダード」

3 「州間評価支援協会」InTASCによる「モデル・コア教職スタンダード―州対話のためのリソース」である。


これらの教職スタンダードは、高度な資質能力を有する自律的な専門職としての教職をめざしており、単に知識の習得のみならずそれをどのように活用するのか、何をすることができるのかを問いパフォーマンスを重視したものとなっている。 1 9 9 4年の「2 0 0 0年の目標-アメリカ教育法」、「アメリカ学校改善法」の制定以降、教育目標とその指導内容に関する教育スタンダードが各州に求められるなか、多くの州でそれに沿った教師の指導力向上のための現職研修が積極的に展開されるようになってくる。特に「落ちこぼしのない教育法」(NCLB法)以降、学力テスト重視の中「読解」「数学」等主要科目を中心としたカリキュラムや教授法に関する研修が推進されている。 そして、2 0 0 8年「高等教育機会法」と連動して2009年「アメリカ復興再投資法」に基づく「頂点への競争」プログラムにより、学力テストに基づく学力と教員評価を連動させ、それがさらに養成機関、採用、研修といった一連の教師教育に影響を与えている。





教師の実態

では、このような公立学校に勤務する教師の実態 そこでの問題はどのようになっているのであろうか。 まずあげたいのは、教員不足、正確には、教師としての資格を証明する正規の教員免許を取得している教員がすべての学校、教室に配置されていないということである。そして、正規教員免許所有の教員が減少していることである。2002/03年の免許取得教員のパーセンテージをみると、90 %を切っている。この傾向はどの校種においてもみられるが、特に中学校教員の免許取得率が低い。またこの取得率は、貧困レベルの家庭からくる生徒の割合が高い学校や、マイノリティ生徒の割合が高い学校ほど低くなる。最も貧困率の高い中学校においては、全体の30 %あるいはそれ以上の教員が正規の教員免許をもたないのである。 一方で高校教員の免許取得率を教科別にみると、理科、数学の自然科学系の教員の取得率が低くなっている。また、フィラデルフィア学区では新採教員のなかで正規の免許取得者は少なく、そして新採教員の多くが貧困レベル生徒の割合の高い学校に配置されている。このような傾向は、フィラデルフィア市だけではなくアメリカの多くの都市部にみられる。 免許所有の教員以外で誰が授業を担当するのか。 フィラデルフィア学区の場合それは、臨時教員免許を付与された教員である。ペンシルベニア州においては、正式な教員免許は大学の教員養成プログラムの修了とそれとは別に教師の能力を保証するための試験であるプラクシス試験に合格することが求められる。しかし、臨時教員として採用された者は教員志願者として基礎学力を問う内容のプラクシス試験に合格していない。


参考文献

アメリカの教育 村田鈴子 信山社1997


  人間科学大事典

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