フィンランドの教育環境

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-教育費+[教育費]
- まず特筆すべき点は、授業費が幼稚園から大学・職業専門大学まですべて無料ということである。フィンランドには私立の学校もいくつかあるが、これらの授業料も一部を除いてすべて無料である。さらにまた、教科書等の教材費も、幼稚園から中学校まですべて無料である。高等教育・職業学校になると、教科書等は有料になり、普通の書店で購入することができる。また、どの学校にも食堂があり、そこでの食費は幼稚園から高等学校まで全て無料である。大学の食堂も、自治体から一部援助が出ていて、安価な料金で利用することができる。さらには、幼稚園から中学校まで、家が学校から遠方(5㎞以上)にあったり、徒歩での通学路が危険であったりする場合は、交通費も支援される。また、毎日の通学には3時間以上かかる場合は、食事付きの宿舎まで無料で提供される。これらの教育費は国が34%、地方自治体が66%を負担している。OECDの調査によれば、大学あるいは職業専門大学にかかる教育費について、教育費全体に占める私費の割合は2008年の場合に4.6%であった。OECD平均は31.1%、日本は66.7%であることを考えると国際的にみて、フィンランドでは個人が負担する教育費がいかに少ないかがよくわかる。また、学校外の教育活動について、日本のような塾や予備校はなく、書店にも問題集や参考書に相当する書物はほとんど見当たらず、発展的な教材集のような本がわずかにみられるだけであった。このことから、学校外の教育活動にかかる費用も、日本の場合と異なり、ほとんどかかっていないといってよいであろう。+
-学校での活動+まず特筆すべき点は、授業費が幼稚園から大学・職業専門大学まですべて無料ということである。フィンランドには私立の学校もいくつかあるが、これらの授業料も一部を除いてすべて無料である。さらにまた、教科書等の教材費も、幼稚園から中学校まですべて無料である。高等教育・職業学校になると、教科書等は有料になり、普通の書店で購入することができる。また、どの学校にも食堂があり、そこでの食費は幼稚園から高等学校まで全て無料である。大学の食堂も、自治体から一部援助が出ていて、安価な料金で利用することができる。さらには、幼稚園から中学校まで、家が学校から遠方(5㎞以上)にあったり、徒歩での通学路が危険であったりする場合は、交通費も支援される。また、毎日の通学には3時間以上かかる場合は、食事付きの宿舎まで無料で提供される。これらの教育費は国が34%、地方自治体が66%を負担している。OECDの調査によれば、大学あるいは職業専門大学にかかる教育費について、教育費全体に占める私費の割合は2008年の場合に4.6%であった。OECD平均は31.1%、日本は66.7%であることを考えると国際的にみて、フィンランドでは個人が負担する教育費がいかに少ないかがよくわかる。また、学校外の教育活動について、日本のような塾や予備校はなく、書店にも問題集や参考書に相当する書物はほとんど見当たらず、発展的な教材集のような本がわずかにみられるだけであった。このことから、学校外の教育活動にかかる費用も、日本の場合と異なり、ほとんどかかっていないといってよいであろう。
- 学校に通うのは、日本と同じ週5日間である。小学校・中学校の場合、学校に通う年間の日数は、国家カリキュラムで190日と定められている。また、フィンランドの授業日数は日本と比べると小学校の授業時数はどの学年も少なく、逆に中学校は少し多い。1年間のスケジュールは、8月中旬に新学期がスタートし、翌年5月下旬から6月上旬に終了する。休みは、年度替わりの夏休み(60日以上)とクリスマス休み、春には1週間のスポーツ休みがある。それ以外にも、学校によって秋休みがある。また、高等学校の場合、小学校・中学校と異なり、単位制である。卒業に必要な単位数はフィンランドが「47もしくは51単位(必修単位数)、75(合計単位数)」であり、日本の場合は「34もしくは52単位(必修単位数)、74(合計単位数)」となっている。フィンランドの場合、1単位時間は45分以上で、38単位数時間が1単位となる。一方、日本の場合は1単位時間が50分で、35単位時間が1単位である。日本の場合と比べると、卒業に必要な合計単位数はほぼ同じであるが、必修単位数は、日本の方が幅が大きいことがわかる。これは、日本の場合、高等学校への進学率が高く、高校生の学力が多様化していることに対応する必要があるからだ。1クラス人数は、これまで観察してきた授業では、学校によって、またクラスによって様々であったが、どのクラスも30人を超えることはなかった。日本の40人学級や35人学級に比べて少ないといえる。また、授業以外の活動で、日本の場合と大きく異なるのは、特に中学校や高等学校において部活動がないことである。生徒は授業が終了すると、前述した補習授業がない限り、すぐに下校する。日本のような部活動がない代わりに、下校後に地元の有料のスポーツクラブ等に通う生徒もいる。+
-教員の評価+[学校での活動]
- フィンランドでは、教師は国民からの信頼が厚く、学校の教師のことを「国民のロウソク」と呼ぶこともあるという。暗闇の中に明かりを照らし人々を導く、テーブルの真中に立っている1本のロウソクのような存在であることからである。このことは、大学の教育学部がどこも人気があり、大学に入るのは狭き門であることにも表れている。例えば、タンペレ大学の小学校教員養成過程の場合、定員64名に対して約2000~2500名が応募するという。教員の給料は他の職業に比べて決して高いわけではないが、狭き門をくぐり抜けた人がなれる憧れの職業である。実際、高校生を対象とした「なりたい職業」の調査によれば、教師は26%でトップであった。そのような教師の学校での生活は、日本の教師に比べると実にゆとりがある。1つの学校にじっくりと腰を据えて働くことができる。+ 
 +学校に通うのは、日本と同じ週5日間である。小学校・中学校の場合、学校に通う年間の日数は、国家カリキュラムで190日と定められている。また、フィンランドの授業日数は日本と比べると小学校の授業時数はどの学年も少なく、逆に中学校は少し多い。1年間のスケジュールは、8月中旬に新学期がスタートし、翌年5月下旬から6月上旬に終了する。休みは、年度替わりの夏休み(60日以上)とクリスマス休み、春には1週間のスポーツ休みがある。それ以外にも、学校によって秋休みがある。また、高等学校の場合、小学校・中学校と異なり、単位制である。卒業に必要な単位数はフィンランドが「47もしくは51単位(必修単位数)、75(合計単位数)」であり、日本の場合は「34もしくは52単位(必修単位数)、74(合計単位数)」となっている。フィンランドの場合、1単位時間は45分以上で、38単位数時間が1単位となる。一方、日本の場合は1単位時間が50分で、35単位時間が1単位である。日本の場合と比べると、卒業に必要な合計単位数はほぼ同じであるが、必修単位数は、日本の方が幅が大きいことがわかる。これは、日本の場合、高等学校への進学率が高く、高校生の学力が多様化していることに対応する必要があるからだ。1クラス人数は、これまで観察してきた授業では、学校によって、またクラスによって様々であったが、どのクラスも30人を超えることはなかった。日本の40人学級や35人学級に比べて少ないといえる。また、授業以外の活動で、日本の場合と大きく異なるのは、特に中学校や高等学校において部活動がないことである。生徒は授業が終了すると、前述した補習授業がない限り、すぐに下校する。日本のような部活動がない代わりに、下校後に地元の有料のスポーツクラブ等に通う生徒もいる。
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 +[教員の評価]
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 +フィンランドでは、教師は国民からの信頼が厚く、学校の教師のことを「国民のロウソク」と呼ぶこともあるという。暗闇の中に明かりを照らし人々を導く、テーブルの真中に立っている1本のロウソクのような存在であることからである。このことは、大学の教育学部がどこも人気があり、大学に入るのは狭き門であることにも表れている。例えば、タンペレ大学の小学校教員養成過程の場合、定員64名に対して約2000~2500名が応募するという。教員の給料は他の職業に比べて決して高いわけではないが、狭き門をくぐり抜けた人がなれる憧れの職業である。実際、高校生を対象とした「なりたい職業」の調査によれば、教師は26%でトップであった。そのような教師の学校での生活は、日本の教師に比べると実にゆとりがある。1つの学校にじっくりと腰を据えて働くことができる。
また、放課後は部活動の指導が少ないので、授業が終われば次の授業準備に充てるための給料が支払われているとのことであった。授業準備は学校で行ってもよいが、家に帰って行うこともある。タンペレ大学付属中・高等学校長アールニオ氏が「校長は勤務時間が朝7時~午後3時までなので大変忙しい」と述べていたのが印象的であった。日本の教師が聞けば、羨ましくなるような労働条件である。教科書の選択は、教師個人の裁量で行うことができ、指導内容や方法についても教師個人に任されている。タンペレ市教育委員会のカネルヴァ氏は「日々の教育実践について、きちんと実践されているかどうかについてのチェックシステムはあるにはあるが、実際にはチェックはルーズであり、信頼すれば信頼できる。という信念に基づいて教育活動を実践している」と述べていた。このように、国民から信頼されている教師は、自由度も高く、責任もあわせ持つことができる。 また、放課後は部活動の指導が少ないので、授業が終われば次の授業準備に充てるための給料が支払われているとのことであった。授業準備は学校で行ってもよいが、家に帰って行うこともある。タンペレ大学付属中・高等学校長アールニオ氏が「校長は勤務時間が朝7時~午後3時までなので大変忙しい」と述べていたのが印象的であった。日本の教師が聞けば、羨ましくなるような労働条件である。教科書の選択は、教師個人の裁量で行うことができ、指導内容や方法についても教師個人に任されている。タンペレ市教育委員会のカネルヴァ氏は「日々の教育実践について、きちんと実践されているかどうかについてのチェックシステムはあるにはあるが、実際にはチェックはルーズであり、信頼すれば信頼できる。という信念に基づいて教育活動を実践している」と述べていた。このように、国民から信頼されている教師は、自由度も高く、責任もあわせ持つことができる。
-参考文献+[参考文献]
・フィンランド教育の算数・数学教育「個の自立」と「活用力の育成」を重視した学び ・フィンランド教育の算数・数学教育「個の自立」と「活用力の育成」を重視した学び
発行日:2013年9月25日  発行社:明石書店 編著者:熊倉啓之 発行日:2013年9月25日  発行社:明石書店 編著者:熊倉啓之

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[教育費]

まず特筆すべき点は、授業費が幼稚園から大学・職業専門大学まですべて無料ということである。フィンランドには私立の学校もいくつかあるが、これらの授業料も一部を除いてすべて無料である。さらにまた、教科書等の教材費も、幼稚園から中学校まですべて無料である。高等教育・職業学校になると、教科書等は有料になり、普通の書店で購入することができる。また、どの学校にも食堂があり、そこでの食費は幼稚園から高等学校まで全て無料である。大学の食堂も、自治体から一部援助が出ていて、安価な料金で利用することができる。さらには、幼稚園から中学校まで、家が学校から遠方(5㎞以上)にあったり、徒歩での通学路が危険であったりする場合は、交通費も支援される。また、毎日の通学には3時間以上かかる場合は、食事付きの宿舎まで無料で提供される。これらの教育費は国が34%、地方自治体が66%を負担している。OECDの調査によれば、大学あるいは職業専門大学にかかる教育費について、教育費全体に占める私費の割合は2008年の場合に4.6%であった。OECD平均は31.1%、日本は66.7%であることを考えると国際的にみて、フィンランドでは個人が負担する教育費がいかに少ないかがよくわかる。また、学校外の教育活動について、日本のような塾や予備校はなく、書店にも問題集や参考書に相当する書物はほとんど見当たらず、発展的な教材集のような本がわずかにみられるだけであった。このことから、学校外の教育活動にかかる費用も、日本の場合と異なり、ほとんどかかっていないといってよいであろう。

[学校での活動]

学校に通うのは、日本と同じ週5日間である。小学校・中学校の場合、学校に通う年間の日数は、国家カリキュラムで190日と定められている。また、フィンランドの授業日数は日本と比べると小学校の授業時数はどの学年も少なく、逆に中学校は少し多い。1年間のスケジュールは、8月中旬に新学期がスタートし、翌年5月下旬から6月上旬に終了する。休みは、年度替わりの夏休み(60日以上)とクリスマス休み、春には1週間のスポーツ休みがある。それ以外にも、学校によって秋休みがある。また、高等学校の場合、小学校・中学校と異なり、単位制である。卒業に必要な単位数はフィンランドが「47もしくは51単位(必修単位数)、75(合計単位数)」であり、日本の場合は「34もしくは52単位(必修単位数)、74(合計単位数)」となっている。フィンランドの場合、1単位時間は45分以上で、38単位数時間が1単位となる。一方、日本の場合は1単位時間が50分で、35単位時間が1単位である。日本の場合と比べると、卒業に必要な合計単位数はほぼ同じであるが、必修単位数は、日本の方が幅が大きいことがわかる。これは、日本の場合、高等学校への進学率が高く、高校生の学力が多様化していることに対応する必要があるからだ。1クラス人数は、これまで観察してきた授業では、学校によって、またクラスによって様々であったが、どのクラスも30人を超えることはなかった。日本の40人学級や35人学級に比べて少ないといえる。また、授業以外の活動で、日本の場合と大きく異なるのは、特に中学校や高等学校において部活動がないことである。生徒は授業が終了すると、前述した補習授業がない限り、すぐに下校する。日本のような部活動がない代わりに、下校後に地元の有料のスポーツクラブ等に通う生徒もいる。

[教員の評価]

フィンランドでは、教師は国民からの信頼が厚く、学校の教師のことを「国民のロウソク」と呼ぶこともあるという。暗闇の中に明かりを照らし人々を導く、テーブルの真中に立っている1本のロウソクのような存在であることからである。このことは、大学の教育学部がどこも人気があり、大学に入るのは狭き門であることにも表れている。例えば、タンペレ大学の小学校教員養成過程の場合、定員64名に対して約2000~2500名が応募するという。教員の給料は他の職業に比べて決して高いわけではないが、狭き門をくぐり抜けた人がなれる憧れの職業である。実際、高校生を対象とした「なりたい職業」の調査によれば、教師は26%でトップであった。そのような教師の学校での生活は、日本の教師に比べると実にゆとりがある。1つの学校にじっくりと腰を据えて働くことができる。 また、放課後は部活動の指導が少ないので、授業が終われば次の授業準備に充てるための給料が支払われているとのことであった。授業準備は学校で行ってもよいが、家に帰って行うこともある。タンペレ大学付属中・高等学校長アールニオ氏が「校長は勤務時間が朝7時~午後3時までなので大変忙しい」と述べていたのが印象的であった。日本の教師が聞けば、羨ましくなるような労働条件である。教科書の選択は、教師個人の裁量で行うことができ、指導内容や方法についても教師個人に任されている。タンペレ市教育委員会のカネルヴァ氏は「日々の教育実践について、きちんと実践されているかどうかについてのチェックシステムはあるにはあるが、実際にはチェックはルーズであり、信頼すれば信頼できる。という信念に基づいて教育活動を実践している」と述べていた。このように、国民から信頼されている教師は、自由度も高く、責任もあわせ持つことができる。

[参考文献] ・フィンランド教育の算数・数学教育「個の自立」と「活用力の育成」を重視した学び 発行日:2013年9月25日  発行社:明石書店 編著者:熊倉啓之


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