フィンランドの教育
出典: Jinkawiki
2008年6月30日 (月) 23:26の版 Bunkyo-student2008 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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- | フィンランドにおいて「教育」は、すべての人の基本的権利であるとされている。フィンランドに住むすべての人は無償の義務教育を受ける権利があり、義務教育以降も教育は基本的に無償とされ、国家による教育給付金の受給権利がある。また年齢、居住地、経済状況、性別および母語に関わらず、国民すべてに平等な教育の機会を提供している。 | + | 北欧諸国では、質の高い平等な教育を目標として掲げており、公的資金での負担による基礎教育制度を確立させることを重要としている。その中でもフィンランドでは、教育を受ける権利は基本的権利の一つとなっている。現在のフィンランドの政府による教育政策に関わる計画では、「創造性」「専門的知識・技能」そして、「高い教養レベル」が必要であるとされている。また、教育の発展計画では、以下のことに重点が置かれている。 |
+ | 1.教育に対する平等な機会の保証 | ||
+ | 2.教育と研究の高い質の確保 | ||
+ | 3.高い専門的知識・技能を有する労働力の確保 | ||
+ | 4.大学と職業専門大学の発展 | ||
+ | 5.優秀で高い専門的知識・技能を有する教育者の確保 | ||
+ | これらの目標は、教育の質の向上というところにある。中でも障害や病気などの特別な支援が必要な生徒や、学力不足な生徒を特に発展の対象としている。そのために、生徒指導や学校を利用した放課後の活動、教員の指導なども重大な課題としている。そのようなフィンランドの教育制度は以下のようなものである。 | ||
+ | 1.教員は学ぶことと教えることを職業とする専門家でなければならない | ||
+ | 2.教員は担当する科目や分野における高度な知識を必要とする。 | ||
+ | 3.教員という職業には広い社会的・道徳的視野が必要とされる | ||
+ | 4.教員には仕事をする上での実践的能力が必要とされる | ||
+ | フィンランドの生徒たちが学業において優秀な成績を収めているのは、教員が修士号を取得しているという特徴があることが理由の一つとなっている。こうしてみてもわかるように、フィンランドの教育に関してみるときに最も重要なこととして教員の問題が挙げられる。 | ||
+ | このような教育環境にあるフィンランドの生徒たちは、OECDが三年に一度実施するPISA調査で、数学的能力が加盟国トップクラスとなる成績を収めている。その上、生徒間の点数のばらつきというものは非常に少なくなっている。また、読解能力に関しては加盟国第一位の成績を収めている。同じように、科学的能力、問題解決能力も最高レベルを示している。以上のように、フィンランドの生徒たちはPISA調査でみると成功を収めていることが分かる。しかしこのことからは同時に、顕著なトップクラスの生徒が学校から欠けているという問題点もみえてくる。 | ||
+ | フィンランドでは持続可能な発展を目指す10年計画というものも実施されている。今、持続可能な発展を目指すことは全世界共通で必要とされている。その中でもフィンランドは環境教育ということを重視してこの発展の計画を進めている。この環境教育に必要とされる活動が様々なレベルにおいて実施されるよう、国家教育委員会や政府機関、市民団体、教員が知恵と力を合わせている。そしてすべての学校がそれぞれの環境教育計画を作ることを求められ、以上のような形で、持続可能な発展を目指す教育が行われている。 | ||
- | フィンランドの義務教育は7歳から16歳の9年間における基礎学校(日本の小学校に相当する初等教育と、日本の中学校に相当する3年間の中等教育からなる)での教育である。基礎学校卒業後、大学や高等職業専門学校進学を希望する生徒が普通高校に、就職や職業教育機関での訓練を希望する生徒が職業学校へ進学する。高等教育機関には大学および高等職業専門学校があり、大学は学士課程3年・修士課程2年であるが、一般的には修士号取得をもって「大学卒業」とされる。また高等職業専門学校は学士が基本学位であり3~4年で取得できる。 | + | 参考文献:「北欧学のすすめ」 |
- | + | 編著者:東海大学文学部北欧学科 | |
- | フィンランドの就学年齢は7歳からであるが、6歳児向けの就学前教育(プレスクール)が学校やデイケアセンターで行なわれている。これは任意で参加でき、幼児教育とは異なる、集団行動や学習への姿勢等、就学の準備のための教育を行なう。また基礎学校終了後に1年間の補習教育(第10学年)を任意で受けられる。 | + | 発行所:東海大学出版会 |
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- | *フィンランドの教師 | + | |
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- | フィンランドでは教師は社会的な地位が高く、就きたい職業のトップである。それは今までの歴史の中で、高度な教育を受け、一般教養を広く身につけた人のみが教師になる資格があると考えられ、現在も教育機関以外の他分野においても社会発展に貢献しているからである。実際に、大学の教育学部に入れるのは志願者の1割という狭き門である。 | + | |
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- | すべての教師には年1回の研修が義務付けられ、教師たちはこうした能力向上のための研修やセミナーに参加する時間が保障されている。またクラブ活動等は別の専門家が受けもち、残業もほとんどない。授業の準備にじっくりと専念することが可能なのである。 | + | |
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- | <参考文献> | + | |
- | ヘイッキ・マキパー 『平等社会 フィンランドが育む 未来型学力』 | + | |
- | 2007 明石書店 | + |
最新版
北欧諸国では、質の高い平等な教育を目標として掲げており、公的資金での負担による基礎教育制度を確立させることを重要としている。その中でもフィンランドでは、教育を受ける権利は基本的権利の一つとなっている。現在のフィンランドの政府による教育政策に関わる計画では、「創造性」「専門的知識・技能」そして、「高い教養レベル」が必要であるとされている。また、教育の発展計画では、以下のことに重点が置かれている。 1.教育に対する平等な機会の保証 2.教育と研究の高い質の確保 3.高い専門的知識・技能を有する労働力の確保 4.大学と職業専門大学の発展 5.優秀で高い専門的知識・技能を有する教育者の確保 これらの目標は、教育の質の向上というところにある。中でも障害や病気などの特別な支援が必要な生徒や、学力不足な生徒を特に発展の対象としている。そのために、生徒指導や学校を利用した放課後の活動、教員の指導なども重大な課題としている。そのようなフィンランドの教育制度は以下のようなものである。 1.教員は学ぶことと教えることを職業とする専門家でなければならない 2.教員は担当する科目や分野における高度な知識を必要とする。 3.教員という職業には広い社会的・道徳的視野が必要とされる 4.教員には仕事をする上での実践的能力が必要とされる フィンランドの生徒たちが学業において優秀な成績を収めているのは、教員が修士号を取得しているという特徴があることが理由の一つとなっている。こうしてみてもわかるように、フィンランドの教育に関してみるときに最も重要なこととして教員の問題が挙げられる。 このような教育環境にあるフィンランドの生徒たちは、OECDが三年に一度実施するPISA調査で、数学的能力が加盟国トップクラスとなる成績を収めている。その上、生徒間の点数のばらつきというものは非常に少なくなっている。また、読解能力に関しては加盟国第一位の成績を収めている。同じように、科学的能力、問題解決能力も最高レベルを示している。以上のように、フィンランドの生徒たちはPISA調査でみると成功を収めていることが分かる。しかしこのことからは同時に、顕著なトップクラスの生徒が学校から欠けているという問題点もみえてくる。 フィンランドでは持続可能な発展を目指す10年計画というものも実施されている。今、持続可能な発展を目指すことは全世界共通で必要とされている。その中でもフィンランドは環境教育ということを重視してこの発展の計画を進めている。この環境教育に必要とされる活動が様々なレベルにおいて実施されるよう、国家教育委員会や政府機関、市民団体、教員が知恵と力を合わせている。そしてすべての学校がそれぞれの環境教育計画を作ることを求められ、以上のような形で、持続可能な発展を目指す教育が行われている。
参考文献:「北欧学のすすめ」 編著者:東海大学文学部北欧学科 発行所:東海大学出版会