インフォームド・コンセント2
出典: Jinkawiki
2008年7月31日 (木) 11:43の版 Bunkyo-student2008 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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4 行 | 4 行 | ||
・「説明との同意」の5つの原則 | ・「説明との同意」の5つの原則 | ||
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1. 「疾患の主体」は患者である。 | 1. 「疾患の主体」は患者である。 | ||
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2. 医療関係者は、患者の「考え方」を変えることは出来ない。 | 2. 医療関係者は、患者の「考え方」を変えることは出来ない。 | ||
- | 3. 医療関係者は、患者の「考え方」に合わせて説明しなければならない。 | + | |
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+ | 3. 医療関係者は、患者の「考え方」に合わせて説明しなければならない。 | ||
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4. 医学用語、医学的概念を(説明なしで)、そのまま説明に用いてはいけない。 | 4. 医学用語、医学的概念を(説明なしで)、そのまま説明に用いてはいけない。 | ||
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5. 「治療の主体(責任者)」は、医師である。 | 5. 「治療の主体(責任者)」は、医師である。 | ||
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医師は、患者がそのうちの一つを選択できるように、複数の治療法を患者に提示する義 | 医師は、患者がそのうちの一つを選択できるように、複数の治療法を患者に提示する義 | ||
務がある。患者の「自発的同意」がない医療行為は「傷害行為(違法)」となる。 | 務がある。患者の「自発的同意」がない医療行為は「傷害行為(違法)」となる。 | ||
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第1条の4 第1項 | 第1条の4 第1項 | ||
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医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第1条の2に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。 | 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第1条の2に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。 | ||
第1条の4 第2項 | 第1条の4 第2項 | ||
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医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。 | 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。 | ||
(発端) | (発端) | ||
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第2次世界大戦終結までは医療の歴史の中では、むしろインフォームド・コンセントとは逆のことが言われていた。“知らしむべからず、由らしむべし”という一貫した医師の考えがあり、医師の絶対支配下のもと医療は行われてきた。 | 第2次世界大戦終結までは医療の歴史の中では、むしろインフォームド・コンセントとは逆のことが言われていた。“知らしむべからず、由らしむべし”という一貫した医師の考えがあり、医師の絶対支配下のもと医療は行われてきた。 | ||
だが、第二次世界大戦のときに、ドイツのナチスが考えられないような“人体実験”を行ったのが、ニュールンベルグ裁判で問題になり、やがてそれが「ヘルシンキ宣言」に発展した。ここからアメリカやイギリスで、薬の人体実験の方法が展開され、やがて医療全般が、患者に説明されて同意されなければ実施すべきではないという傾向になり、インフォームド・コンセントが医療の世界で定着するようになった。これには背景として、患者の人権問題がある。欧米でも長い間、医療は医師の絶対支配権の下に行われてきたが、人権思想の発達によってインフォームド・コンセントを意思の側に認めさせるに至ったとも言える。 | だが、第二次世界大戦のときに、ドイツのナチスが考えられないような“人体実験”を行ったのが、ニュールンベルグ裁判で問題になり、やがてそれが「ヘルシンキ宣言」に発展した。ここからアメリカやイギリスで、薬の人体実験の方法が展開され、やがて医療全般が、患者に説明されて同意されなければ実施すべきではないという傾向になり、インフォームド・コンセントが医療の世界で定着するようになった。これには背景として、患者の人権問題がある。欧米でも長い間、医療は医師の絶対支配権の下に行われてきたが、人権思想の発達によってインフォームド・コンセントを意思の側に認めさせるに至ったとも言える。 | ||
29 行 | 40 行 | ||
(5つの反対論) | (5つの反対論) | ||
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1.患者は治療上の危険は知りたくないのではないか | 1.患者は治療上の危険は知りたくないのではないか | ||
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ランクトンらの調査によると、麻酔の危険について詳しい説明を受けた数10人の約4分の1に相当する十六人が、その説明に驚きを示し、そのうちの三人は説 明を中止してほしいと申し出た。しかし、ランクトンのデータとは全く逆の例もある。アルフィディの調査によると、血管造影術に伴う危険性の説明を詳しく 受けた89%の患者が説明を受けたことについて好意的、積極的な評価をしていたという。こういうことは心理的な面も影響するので一概には言えないが説明を しなくてもいいという根拠は見出せないのではないかもしれない。 | ランクトンらの調査によると、麻酔の危険について詳しい説明を受けた数10人の約4分の1に相当する十六人が、その説明に驚きを示し、そのうちの三人は説 明を中止してほしいと申し出た。しかし、ランクトンのデータとは全く逆の例もある。アルフィディの調査によると、血管造影術に伴う危険性の説明を詳しく 受けた89%の患者が説明を受けたことについて好意的、積極的な評価をしていたという。こういうことは心理的な面も影響するので一概には言えないが説明を しなくてもいいという根拠は見出せないのではないかもしれない。 | ||
2.説明しても情報を理解できない患者がいる。 | 2.説明しても情報を理解できない患者がいる。 | ||
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認知症の患者だったら説明を理解できないのは当然であって、このときには家族に説 | 認知症の患者だったら説明を理解できないのは当然であって、このときには家族に説 | ||
明するしか方法はない。そうではなく、一般に患者に説明しても、覚えていないというロビンソンらの調査がある。またキャサエルスらはガン治療の際、化学 療法・放射線療法・外科手術について200人の患者に詳しく説明し、実際に治療を開始する1~2日前に患者が理解しているかどうか筆記テストをした。その結果 81.5%の患者は診断については識別したが、それ以外の項目は乏しい答えしか得られず、60%の患者は自分が受ける治療行為を正確に書けなかった。 | 明するしか方法はない。そうではなく、一般に患者に説明しても、覚えていないというロビンソンらの調査がある。またキャサエルスらはガン治療の際、化学 療法・放射線療法・外科手術について200人の患者に詳しく説明し、実際に治療を開始する1~2日前に患者が理解しているかどうか筆記テストをした。その結果 81.5%の患者は診断については識別したが、それ以外の項目は乏しい答えしか得られず、60%の患者は自分が受ける治療行為を正確に書けなかった。 | ||
39 行 | 53 行 | ||
3.患者に自己決定権を与えても、患者は医師の言うままに治療を受けるので無意味だ | 3.患者に自己決定権を与えても、患者は医師の言うままに治療を受けるので無意味だ | ||
- | 患者は治療を受けたいと思うときには不快感があり、何かをしなければならないと思 | + | |
- | う、患者は多数の専門集団に囲まれて無力感がある、医師患者関係では転移現象(トランスフィアランス)によって患者は医師の指示するとおりに行動する― 以上の3つのことによって患者に自己決定権を与えても無意味だという考えがある。 | + | 患者は治療を受けたいと思うときには不快感があり、何かをしなければならないと思う、患者は多数の専門集団に囲まれて無力感がある、医師患者関係では 転移現象(トランスフィアランス)によって患者は医師の指示するとおりに行動する― 以上の3つのことによって患者に自己決定権を与えても無意味だという 考えがある。 |
4.患者に与える情報によっては、患者がショックを受けて不利益な結果をもたらす | 4.患者に与える情報によっては、患者がショックを受けて不利益な結果をもたらす | ||
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これは説明自体が有害だという考え方で、がんの告知をめぐって、しばしば言われてきたことである。 | これは説明自体が有害だという考え方で、がんの告知をめぐって、しばしば言われてきたことである。 | ||
5.インフォームド・コンセントをしていると時間がかかりすぎる | 5.インフォームド・コンセントをしていると時間がかかりすぎる | ||
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こうした意見は医師の間に多い。ゆっくりと説明していたら待合室にあふれている患者を処理できないという意見である。 | こうした意見は医師の間に多い。ゆっくりと説明していたら待合室にあふれている患者を処理できないという意見である。 | ||
- | (参考) | + | (引用・参考文献) |
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「インフォームド・コンセント 医療現場における説明と同意」(中公新書) 著:水野 肇 | 「インフォームド・コンセント 医療現場における説明と同意」(中公新書) 著:水野 肇 |
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インフォームド・コンセントという言葉は、日本では「説明と同意」と訳されており、端的にいえば、医療の現場では、医師は必ず、患者の病状を説明して、どういう処置をするか説明し、患者の同意を得たうえで、それから治療をするということである。医師が患者に承諾を取ればいいということではなく、治療について承諾を得るためには、その前段階として十分に説明をしておかなくてはいけない。インフォームド・コンセントは患者の承諾と医師の説明義務の両方が必要であり、片方だけではいけないのである。 日本とは異なり欧米の先進国ではインフォームド・コンセントはごく当たり前のこととして実施されている。例えば、ある患者を治療する場合に大別して3つの方法があった場合、医師はその3つの方法を全て患者に説明して、そのどれを選ぶかは患者が決めることになっている。これを「患者の自己決定権」と言い、診療を受けるのは患者である以上、投薬・手術・放射線照射など、いずれも人間の体に障害(薬の副作用も含めて)を与える以上、それを決める権利は医師にはなくて、患者にあるのである。
・「説明との同意」の5つの原則
1. 「疾患の主体」は患者である。
2. 医療関係者は、患者の「考え方」を変えることは出来ない。
3. 医療関係者は、患者の「考え方」に合わせて説明しなければならない。
4. 医学用語、医学的概念を(説明なしで)、そのまま説明に用いてはいけない。
5. 「治療の主体(責任者)」は、医師である。
医師は、患者がそのうちの一つを選択できるように、複数の治療法を患者に提示する義 務がある。患者の「自発的同意」がない医療行為は「傷害行為(違法)」となる。
・「医療法」
第1条の4 第1項
医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第1条の2に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。
第1条の4 第2項
医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。
(発端)
第2次世界大戦終結までは医療の歴史の中では、むしろインフォームド・コンセントとは逆のことが言われていた。“知らしむべからず、由らしむべし”という一貫した医師の考えがあり、医師の絶対支配下のもと医療は行われてきた。 だが、第二次世界大戦のときに、ドイツのナチスが考えられないような“人体実験”を行ったのが、ニュールンベルグ裁判で問題になり、やがてそれが「ヘルシンキ宣言」に発展した。ここからアメリカやイギリスで、薬の人体実験の方法が展開され、やがて医療全般が、患者に説明されて同意されなければ実施すべきではないという傾向になり、インフォームド・コンセントが医療の世界で定着するようになった。これには背景として、患者の人権問題がある。欧米でも長い間、医療は医師の絶対支配権の下に行われてきたが、人権思想の発達によってインフォームド・コンセントを意思の側に認めさせるに至ったとも言える。
(5つの反対論)
1.患者は治療上の危険は知りたくないのではないか
ランクトンらの調査によると、麻酔の危険について詳しい説明を受けた数10人の約4分の1に相当する十六人が、その説明に驚きを示し、そのうちの三人は説 明を中止してほしいと申し出た。しかし、ランクトンのデータとは全く逆の例もある。アルフィディの調査によると、血管造影術に伴う危険性の説明を詳しく 受けた89%の患者が説明を受けたことについて好意的、積極的な評価をしていたという。こういうことは心理的な面も影響するので一概には言えないが説明を しなくてもいいという根拠は見出せないのではないかもしれない。
2.説明しても情報を理解できない患者がいる。
認知症の患者だったら説明を理解できないのは当然であって、このときには家族に説 明するしか方法はない。そうではなく、一般に患者に説明しても、覚えていないというロビンソンらの調査がある。またキャサエルスらはガン治療の際、化学 療法・放射線療法・外科手術について200人の患者に詳しく説明し、実際に治療を開始する1~2日前に患者が理解しているかどうか筆記テストをした。その結果 81.5%の患者は診断については識別したが、それ以外の項目は乏しい答えしか得られず、60%の患者は自分が受ける治療行為を正確に書けなかった。
3.患者に自己決定権を与えても、患者は医師の言うままに治療を受けるので無意味だ
患者は治療を受けたいと思うときには不快感があり、何かをしなければならないと思う、患者は多数の専門集団に囲まれて無力感がある、医師患者関係では 転移現象(トランスフィアランス)によって患者は医師の指示するとおりに行動する― 以上の3つのことによって患者に自己決定権を与えても無意味だという 考えがある。
4.患者に与える情報によっては、患者がショックを受けて不利益な結果をもたらす
これは説明自体が有害だという考え方で、がんの告知をめぐって、しばしば言われてきたことである。
5.インフォームド・コンセントをしていると時間がかかりすぎる
こうした意見は医師の間に多い。ゆっくりと説明していたら待合室にあふれている患者を処理できないという意見である。
(引用・参考文献)
「インフォームド・コンセント 医療現場における説明と同意」(中公新書) 著:水野 肇