環太平洋パートナーシップ協定
出典: Jinkawiki
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今回、最大の焦点となっていたコメについては、現在の関税は維持されることになった。アメリカとオーストラリアに合わせて7.8万トンの特別輸入枠(発効当初は5.6万トン)が設けられたものの、今回の合意によって増加する輸入米は全体1%未満で、肉類などに比べると影響は大きくないようだ。 | 今回、最大の焦点となっていたコメについては、現在の関税は維持されることになった。アメリカとオーストラリアに合わせて7.8万トンの特別輸入枠(発効当初は5.6万トン)が設けられたものの、今回の合意によって増加する輸入米は全体1%未満で、肉類などに比べると影響は大きくないようだ。 | ||
- | 特に恩恵を受ける産業が自動車と食品だ。自動車メーカーにとっては、日本から米国への自動車部品の関税が撤廃されることで価格競争力が増す。食品メーカーにとっては、関税の引き下げで原料のコストダウンにつながる。二つ目のプラス効果は、TPPによって、サービスや投資の規制緩和が進むことだ。表のように、小売業の規制緩和や政府調達の規制緩和で、外資が参入しやすくなる。国内市場が飽和気味のコンビニエンスストアなどの海外進出、日本企業のインフラ事業への参加が加速する可能性がある。(ただし、規制緩和の時期など詳細は決まっていない)。 | + | 三つのプラス効果が期待できる。一つ目は、農産品や工業製品にかけられる関税の大半が一定の期間を経て撤廃されることによる効果だ。企業にとってはTPPを活用した調達でコストダウンが可能になるとともに、TPP加盟国に自社製品を販売しやすくなる。市場の拡大で、日本経済の活性化につながる。特に恩恵を受ける産業が自動車と食品だ。自動車メーカーにとっては、日本から米国への自動車部品の関税が撤廃されることで価格競争力が増す。食品メーカーにとっては、関税の引き下げで原料のコストダウンにつながる。二つ目のプラス効果は、TPPによって、サービスや投資の規制緩和が進むことだ。表のように、小売業の規制緩和や政府調達の規制緩和で、外資が参入しやすくなる。国内市場が飽和気味のコンビニエンスストアなどの海外進出、日本企業のインフラ事業への参加が加速する可能性がある。(ただし、規制緩和の時期など詳細は決まっていない)。三つ目の効果は、中国や欧州連合(EU)などとのメガFTA(自由貿易協定)構想の前進につながることだ。日本はTPP以外に、日中韓FTA、EUとの経済連携協定(EPA)、東南アジア諸国などとの東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉も進めている。今回の大筋合意で、通商交渉の人材をこれらに振り向けることができ、TPPの基準をこれら交渉の際に参考として提示することもできる。 |
最新版
概要
TPP(Trans-Pacific Partnership)協定はこの略称である。
アジア太平洋地域において、モノの関税だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、金融サービス、電子商取引、国有企業の規律など、幅広い分野で21世紀型のルールを構築する経済連携協定である。日本は、2013年7月23日から正式に交渉に参加した。2015年10月5日(現地時間)、米国・アトランタで開催されたTPP閣僚会合において、TPP協定が大筋合意に至り、2016年2月4日(現地時間)、ニュージーランド・オークランドで開催されたTPP署名式において、TPP協定が署名された。2017年11月9日(現地時間)、ベトナム・ダナンで開催されたTPP閣僚会合において、TPP11協定が大筋合意に至り、2018年3月8日(現地時間)、チリ・サンティアゴで開催されたTPP11署名式において、TPP11協定が署名された。2018年12月30日、TPP11協定が発効した。
メリットとデメリット
TPP協定が発行される背景には、メリットとデメリットが存在する。
メリットとしては、
・国際競争力が高まる
・商品の価格が下がる
・国民医療費の増加抑制
・投資環境が整備される
・知的財産の保護が徹底される
・労働力の移動が活発になる ことが挙げられ、
デメリットとしては、
・デフレの可能性
・日本の農業が縮小する
・食の安全が脅かされる
・医療格差が広がる
が挙げられる。
影響
今回のTPP大筋合意により、幅広い品目の農水産物の関税が撤廃される(あるいは段階的に引き下げられる)ことになるが、なかでも肉類の関税引き下げは外食産業に大きな影響を及ぼすことが予想される。
現在、牛肉には38.5%の関税がかかっているが、1年目には27.5%、16年目には9%になる。豚肉の関税は現行1キログラム当たり最大482円だが、発効後に125円となり、5年目には70円、10年目には50円まで引き下げられる。また、ソーセージ、ベーコンについては、それぞれ6年目、11年目に関税がゼロになる。
今回、最大の焦点となっていたコメについては、現在の関税は維持されることになった。アメリカとオーストラリアに合わせて7.8万トンの特別輸入枠(発効当初は5.6万トン)が設けられたものの、今回の合意によって増加する輸入米は全体1%未満で、肉類などに比べると影響は大きくないようだ。
三つのプラス効果が期待できる。一つ目は、農産品や工業製品にかけられる関税の大半が一定の期間を経て撤廃されることによる効果だ。企業にとってはTPPを活用した調達でコストダウンが可能になるとともに、TPP加盟国に自社製品を販売しやすくなる。市場の拡大で、日本経済の活性化につながる。特に恩恵を受ける産業が自動車と食品だ。自動車メーカーにとっては、日本から米国への自動車部品の関税が撤廃されることで価格競争力が増す。食品メーカーにとっては、関税の引き下げで原料のコストダウンにつながる。二つ目のプラス効果は、TPPによって、サービスや投資の規制緩和が進むことだ。表のように、小売業の規制緩和や政府調達の規制緩和で、外資が参入しやすくなる。国内市場が飽和気味のコンビニエンスストアなどの海外進出、日本企業のインフラ事業への参加が加速する可能性がある。(ただし、規制緩和の時期など詳細は決まっていない)。三つ目の効果は、中国や欧州連合(EU)などとのメガFTA(自由貿易協定)構想の前進につながることだ。日本はTPP以外に、日中韓FTA、EUとの経済連携協定(EPA)、東南アジア諸国などとの東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉も進めている。今回の大筋合意で、通商交渉の人材をこれらに振り向けることができ、TPPの基準をこれら交渉の際に参考として提示することもできる。
参考文献
西川公也(2017)「TPPの真実」開拓社
山田正彦(2013)「TPP秘密交渉の正体 」竹書房新書