首都直下地震
出典: Jinkawiki
2019年1月19日 (土) 03:49の版 Daijiten2014 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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概要
現在、政府の地震調査委員会の発表で、「南関東または首都直下でマグニチュード 7クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は、70%」といわれている。国の防災対策を検討する「中央防災会議」では、東京湾北部直下のプレート境界でマグニチュード 7.3 の地震が発生した場合、建物約 20 万戸が全壊、火災が広がった場合には 65 万戸が焼失する。時間帯によっては 1 万 1000 人が死亡し、650 万人の帰宅困難者が出るといわれている。
首都が受ける被害
首都が受ける被害として大きく6つ挙げられる。 ①帰宅困難者 ②閉じ込められる被災者 ③街の危険 ④震災時の医療機関 ⑤火災 ⑥生活に欠かすことのできないライフライン この6つである。順を追って説明していく。
帰宅困難者
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の際には、鉄道やバスなど多くの交通機関が運行停止し、首都圏を中心に約10万人の帰宅困難者が続出する事態となった。 首都圏直下型地震が起きた場合はさらに帰宅困難者が増える恐れがある。 また、帰宅困難者になった場合多くの危険を受ける可能性がある。 廣井悠(東京大学准教授)がまとめたものを挙げる。 (1)滞留(その場に留めること)に失敗すると…… 1.大量の徒歩帰宅者で大渋滞、2001年明石歩道橋のような集団転倒が発生 2.災害情報も得られず、大量の徒歩帰宅者が大規模火災発生地域へ突入 3.余震で建物倒壊や外壁が落下、これを避けきれず徒歩帰宅者が被害 4.大量の帰宅者・車で大渋滞、救急/消火/救助/災害対応が大幅に遅れ 5.滞留に失敗し、大量の帰宅者・車で大渋滞、避難行動の阻害になる (2)物流がストップ・備蓄もないと…… 大都市中心部で発生するモノ不足(そして避難所へ殺到) (3)安全な場所が見つからないと…… 1.駅前ターミナルなど各所から人が流入,溢れて転倒事故など 2.災害情報も得られず、津波・大規模火災の襲来 3.安全確認をしないまま高層ビルなどに滞留、余震被害や高層ビル火災 こういった、危険を防ぐには ①滞留の成功 ②備蓄の用意 ③安全確認を含めた安全な場所の確保 ④災害情報の共有 この4点が必要不可欠である。その為には、事前にしっかりと自身が起きたことを想定し、準備しておく必要があるだろう。
閉じ込められる被災者
震災時、誰しもが広く逃げやすい場所に身を置いているとは限らない。超高層ビルの最上階、マンションのエレベーターの中、地下鉄の中など様々である。また、ビルが高ければ高いほど、上の階は激しい横揺れに晒されるのである。例えば 50 階建て、高さ 200 メートルの超高層ビルの場合、最上階は最大で5~6メートルの横揺れが起きると考えられる。ビルが倒壊するという恐れはないものの、部屋の中の家具などによる被害は相当なものになるだろう。この対策には地震が発生したら安全な場所に避難する。また、エレベーターなどの閉じ込められる場所には行かないことだ。
街の危険
震災時、建物の中にいた人々は、建物の倒壊から身を守るため、何が起こったのか外へ出て確かめるため、安全な広い場所へ避難するために屋内から屋外へと移動する。危険はその時にも発生する。古い建物の窓ガラスや壁面が地震によって破損し、頭上から降ってくる恐れがあるのだ。他にも看板、室外機等が落下してくる可能性もある。落下物以外にも危険はある。路上駐輪してある自転車がドミノ上に崩れてきたり、電信柱、ブロック塀、自 動販売機なども倒れてくるだろう。 「中央防災会議では、1970 年以前に建築された古い建物のうち3 割から窓ガラスや壁面 などが落下すると想定している。首都圏にある鉄骨・鉄筋住宅は全国の35.7%にあたる512 万戸だが、このうち1970年以前のものは62 万戸で、全国比は40.7%となる。M7.3の東京湾北部の地震の場合、首都圏全体で2万1000棟の建物から落下物があり、80人が亡くなると予測されている。ブロック塀や自動販売機に関しても、首都圏全体でブロック塀は 11 万ヵ所、自動販売機は6万3000ヵ所が転倒するという。人通りの多い日中であれば、その下敷きとなって合計 640 人が命を落とすとの予測だ。」(Newton ムック想定される日本の大地震 [2006] p.30)首都圏は何処も彼処も密集した住宅街である。震災時、むやみに外に出ると落下物、転倒物が襲い掛かってくるのである。頭上の安全を確認することは勿論、ヘルメット、防災頭巾などの頭部を守るアイテムを身につけて行動することは必須である。
震災時の医療機関
震災直後、瓦礫と化した家屋の下から何とか救出された人でも、その後搬送された先の病院が急患でいっぱいで、治療が間に合わず命を落としてしまうといった死が考えられる。 病院の対応としても重篤患者から優先して治療にあたるはずであるが、それでもこのケー スで死亡する被災者は後を絶たないだろう。この原因として第一に想定の範囲を超える患者が病院に向かうからである。その中には重篤患者も数多く含まれるため、治療のスピードが患者の量に追いつかなくなるだろう。第二に病院自体の被害が甚大なことである。病院の建物が全壊するということは考えにくいが、様々な医療機器・薬品に損害が発生し、治療がままならない状態に陥る可能性は十分に考えられる。また職員が死亡・怪我、またはライフラインの都合で病院に駆けつけることが出来ないということもある。また、道路が瓦礫によって寸断、または渋滞によって緊急車両が思うように通れない恐れもある。実際に東北地方太平洋沖地震のときも、首都では緊急車両が渋滞によって通れないことがあった。首都直下地震ではより深刻になると考えられる。ここで大事なことは、いかに迅速に重篤患者を体制の整った病院に搬送するか、また多数の医師を被災地に投入するかということである。やはりヘリコプターの手段が最も良いのだろう。震災時、医療目的の他、マスコミなど多数のヘリが飛ぶことが予想される。(東北地方太平洋沖地震が実例として挙げられる) 緊急時に備え、ヘリの機数の充足、首都圏上空の管制を十分にしておくことが大切である。 「現在、ヘリコプターの管制は誰がやるのか決まっていない状態である。また東京都の被害想定では、負傷者が15万8000 人、重傷者がそのうち1万7500人発生し、区部でベッドが5000床余り足らなくなるとしている。」(図解東京直下大地震―大惨事を生き抜く知恵と対策 [2005] p.107)
火災
地震の際、最も警戒すべきは火災である。建物の倒壊から身を守ることが出来たとして も、二次災害として襲ってくるのが、火災なのである。建物の倒壊の次に多い死因が火災による焼死である。しかし実際の被害の大きさは条件次第で大きく変化する。 「阪神・淡路大震災の事例から、揺れによる全壊率が高い地域ほど出火率も高いことが分かっている。つまり古い木造住宅密集地は、建物が軒並み倒壊する危険があるために出火率も高いのだ。また季節や時間帯によってストーブなどの使用状況が異なるため、当然これらの条件によって出火率は変化する。暖房器具を多く利用し、なおかつ各家庭が夕食 の準備を行っている冬の午後 6 時頃の出火率が最も高くなる。このとき延焼スピードは風 速に関係してくる。M7.3 の東京湾北部の地震が冬の午後6時に発生した場合、風速が3メートルなら全焼は29万棟、死者約2400人にとどまる。ところが風速15メートルなら全焼は65 万棟、死者約 6200 人に及ぶというのだ。その場合、延焼スピードが速すぎて、消火活動はほとんど不可能だという。」(Newton ムック 想定される日本の大地震 [2006] p.34) 何故火災から逃れることが出来ないのだろうか。その原因として考えられるのが、倒壊した建物が被災者の逃げ道を塞いでしまうことである。逃げ場を失った人々はそのまま煙に飲まれて死んでしまう。「阪神・淡路大震災のとき、震度 7 といわれた地域ではほとんどの細街路が、壊れて倒れこんできた家屋によって閉鎖されてしまい、歩くのも困難という状態になった。」(図解東 京直下大地震―大惨事を生き抜く知恵と対策 [2005] p.90) また震災時、火災は同時発生すると思われる。その時、1つ1つの火災は小規模であっても、それらが合流し、普通では考えられない規模の火災になる場合がある。これが2つ目の原因である。この大規模な火災により、想定以上の死者が出ることになるだろう。3つ目の原因として考えられるのが、通電火災である。停電した住宅街に電気が戻ってくる瞬間、電気機器がショートし火災に繋がるというケースである。これらの問題をいかに解決していくかにより、死者数を軽減することも可能なはずである。
生活に欠かすことのできないライフライン
震災時、電気、ガス、水、これらのライフラインも当然機能しなくなる可能性がある。 電気、ガス、水が使用不可の場合、それは最低限の生活が出来ない状態を意味する。電気 が使えなければ明かりもない、通信機能もままならない。ガスが使えなければ、火を起こ すことが出来ず、料理も作れない。水が使えなければ、飲料水は勿論、下水道の損害によ り、水洗トイレが使用出来ないのである。もし真冬に首都直下型地震が発生した場合、そ の寒さを凌ぐ暖房器具が使用できない可能性もある。交通機関のライフラインも大事であ るが、これら生活に欠かすことの出来ないライフラインによる影響も大きいのである。 電力システムについては 1 番最初に回復するだろうといわれている。コンピューターな どの機器類なしでは生活出来ない現代だが、震災で被害を受けた場合、各個人が持つ機器類(インターネット・携帯電話)に関しては、一部に異常が発生しても、それが連鎖しない仕組みになっているようだ。企業の重要な情報(例えば顧客情報)に関しては、首都圏の様々な場所でバックアップが出来るようになっている。しかし「インターネットに関しては、大手プロバイダー業者の相互接続点である東京都千代田区付近がダメージを受けた場合、サブのネットワークに過剰な負担がかかりパンクする可能性がある。携帯電話に関しては、ほとんど繋がらなくなるそうだ。」(Newton ムック 想定される日本の大地震 [2006] p.60) 電力が回復し、通信機能が使用出来なければ家族の安否情報もまともに分からない。携帯電話社会において、緊急時携帯電話が使用出来ないという状況が 1 番ダメージとして大きいのかもしれない。震災時に携帯電話が繋がらなくなる原因だが、被災地に通信が殺到するため、電話会社が意図的に通信を規制するという。新潟県中越地震の場合、電話会社により通信を規制されていたため、携帯電話が繋がるまでに半日を要した。
首都直下地震に対する備え
内閣府の防災情報のページでは以下のことが挙げられている。
持ち出し品を準備しておく
飲料水、非常食、軍手、常備薬、懐中電灯、携帯ラジオ、予備電池、洗面用具、乳幼児がいる方は哺乳瓶や紙おむつ等をあらかじめリュックサックに入れておくなどし、貴重品と併せて持ち出せるように準備しておく。
非常時のために食料や物資を備蓄しておく
各家庭で最低3日間、できれば一週間過ごせるよう、飲料水(一人1日3リットル)、食料等を備蓄しておく。保存期間の長い普段の食料を多めに買っておき、期限の近いものから消費、使った分を買い足す「ローリング・ストック方式」も効果的である。また、カセットコンロや下着、トイレットペーパー、携帯トイレ等も備蓄してあるといざというとき役に立つので用意しておく。
非常時の連絡先や集合場所を家族・親族で確認しておく
普段から、家族・親族間で災害時の安否確認方法や集合場所等を確認する。また、「171災害用伝言ダイヤル」などのサービスを活用する。
私たちはしっかりとした防災意識を持ち、今後予想される巨大地震にしっかりと備えることが大変重要になってくるだろう。
参考文献
https://shisokuyubi.com/special-column/syuto-earthquake/2 (廣井悠(東京大学准教授)講演録) http://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/jishin.html (内閣府防災情報)
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