環境難民

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==環境難民とは== ==環境難民とは==
 + 環境難民とは、特に統一された定義はないが、干ばつや砂漠化などの環境破壊や海面上昇、浸水、気候変化などの影響によりその地域に居住することが困難になった人々を指す。環境難民を説明するにあたり、自然環境の変化においては、その原因が自然的か人為的かは問わない。移動も国外・国内共に自由である。このような広い意味合いにより、国際法の「難民」に含まれる可能性は低いと思われる。
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 +==環境難民の課題==
 + 環境難民の最大の問題は、国際社会において環境難民が「難民」として認められていないということである。国際連合は難民の地位に関する条約の中に環境難民を含めていない。そのため、戦争・迫害での難民と平等な扱いを受けていないのである。定義が曖昧なために、支援策もなく環境難民にとっては、かなり厳しい状況である。よって、これからの課題は、環境難民と判断する基準や支援を開始する基準を設ける必要があるということだろう。なぜなら、具体的な支援が始まれば、難民として正式に認められる可能性が高くなるからである。戦争や迫害から生じた難民と同様に、住む場所がなく、つらい思いをしているということを国際社会に認識させることができるのである。このようにまずは環境難民を難民として認識してもらえるような取り組みがこれからの課題である。
 + そして、もう一つの課題は、環境難民は戦争や迫害から生じる難民よりもゆっくりなペースで生じるという認識を取り除くことである。なぜなら、環境破壊や気候変動は必ずしもすべてが徐々に起こるものではないからである。例えば、ツバルでの突発的な高波がそれを顕著に示している。時には時間をかけて、時には一瞬で変わるのが自然や気候なのである。
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 +==環境難民の実例==
 + 太平洋に浮かぶ島国であるツバルは、地球温暖化に影響により近年、海面上昇に苦しめられている。1990年以降になると海岸浸食が顕著化し始め、現在もその水位は上昇している。ツバルに人々は浸水により住む場所を失い、作物の収穫が減り、突然高波が襲ってきたり、干ばつが頻繁に起こったりと、生活をすることが困難な状態にある。しかしそれでもなお、彼らは正式に難民ではなく、「環境難民」とだけ言われ、支援もままならない状況なのである。
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 +==環境難民の歴史==
 + 環境難民は、現代だからこそそのような呼び方をするのであって、ただ単に難民の部類ではなく、人類が誕生した時から繰り返し行われてきた大切な活動なのである。例えば、中世ヨーロッパを生きたゲルマン人の大移動も、寒冷化したユーラシア大陸からの脱出だと捉えると、環境難民に当てはまる。今現在は国という仕切りが存在するため、やはり、国際規模での環境難民への理解が必要不可欠である。
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 +==環境難民のこれから==
 + 環境難民はこれからの時代、ますます増加すると思われる。なぜなら、近年の異常気象や地球温暖化の進行、人口の増加が懸念されているからである。環境問題と人口増加が更なる環境難民を生み出し、国際社会からの認識を強めていくだろう。その中で、我々はこれらを地球規模の問題であると捉え、環境への代償を払わなくてはいけなくなる。そして、環境難民は受け入れられ、さらには気候や自然環境によって私たちも移動しなければならなくなる時代が来るだろう。
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 +==参考文献==
 +・「難民問題」 墓田桂 中公新書
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 +・「難民を知るための基礎知識」 瀧澤三郎/山田満 明石書店
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 +YS

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目次

環境難民とは

 環境難民とは、特に統一された定義はないが、干ばつや砂漠化などの環境破壊や海面上昇、浸水、気候変化などの影響によりその地域に居住することが困難になった人々を指す。環境難民を説明するにあたり、自然環境の変化においては、その原因が自然的か人為的かは問わない。移動も国外・国内共に自由である。このような広い意味合いにより、国際法の「難民」に含まれる可能性は低いと思われる。

環境難民の課題

 環境難民の最大の問題は、国際社会において環境難民が「難民」として認められていないということである。国際連合は難民の地位に関する条約の中に環境難民を含めていない。そのため、戦争・迫害での難民と平等な扱いを受けていないのである。定義が曖昧なために、支援策もなく環境難民にとっては、かなり厳しい状況である。よって、これからの課題は、環境難民と判断する基準や支援を開始する基準を設ける必要があるということだろう。なぜなら、具体的な支援が始まれば、難民として正式に認められる可能性が高くなるからである。戦争や迫害から生じた難民と同様に、住む場所がなく、つらい思いをしているということを国際社会に認識させることができるのである。このようにまずは環境難民を難民として認識してもらえるような取り組みがこれからの課題である。  そして、もう一つの課題は、環境難民は戦争や迫害から生じる難民よりもゆっくりなペースで生じるという認識を取り除くことである。なぜなら、環境破壊や気候変動は必ずしもすべてが徐々に起こるものではないからである。例えば、ツバルでの突発的な高波がそれを顕著に示している。時には時間をかけて、時には一瞬で変わるのが自然や気候なのである。  

環境難民の実例

 太平洋に浮かぶ島国であるツバルは、地球温暖化に影響により近年、海面上昇に苦しめられている。1990年以降になると海岸浸食が顕著化し始め、現在もその水位は上昇している。ツバルに人々は浸水により住む場所を失い、作物の収穫が減り、突然高波が襲ってきたり、干ばつが頻繁に起こったりと、生活をすることが困難な状態にある。しかしそれでもなお、彼らは正式に難民ではなく、「環境難民」とだけ言われ、支援もままならない状況なのである。

環境難民の歴史

 環境難民は、現代だからこそそのような呼び方をするのであって、ただ単に難民の部類ではなく、人類が誕生した時から繰り返し行われてきた大切な活動なのである。例えば、中世ヨーロッパを生きたゲルマン人の大移動も、寒冷化したユーラシア大陸からの脱出だと捉えると、環境難民に当てはまる。今現在は国という仕切りが存在するため、やはり、国際規模での環境難民への理解が必要不可欠である。

環境難民のこれから

 環境難民はこれからの時代、ますます増加すると思われる。なぜなら、近年の異常気象や地球温暖化の進行、人口の増加が懸念されているからである。環境問題と人口増加が更なる環境難民を生み出し、国際社会からの認識を強めていくだろう。その中で、我々はこれらを地球規模の問題であると捉え、環境への代償を払わなくてはいけなくなる。そして、環境難民は受け入れられ、さらには気候や自然環境によって私たちも移動しなければならなくなる時代が来るだろう。

参考文献

・「難民問題」 墓田桂 中公新書

・「難民を知るための基礎知識」 瀧澤三郎/山田満 明石書店   YS


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