カースト

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2008年10月22日 (水) 16:59の版
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 インドをはじめとする南アジア世界にみられる特定の社会集団の呼称。端的には家系や血筋、ひいては種族のことだが、飲食、結婚、居住などにまつわる諸規範、とくに穢れの観念にもとづく諸規範により階層化されるのが特徴。原則は職能世襲で、経済的、儀礼的に互いに関係づけられ、より大きな社会体を構成する。自治機能をもった集団もいる。いわゆるヒンドゥー教のみならず、その他の人々(たとえばキリスト教やイスラム教徒)にも同様の社会制度がある。  インドをはじめとする南アジア世界にみられる特定の社会集団の呼称。端的には家系や血筋、ひいては種族のことだが、飲食、結婚、居住などにまつわる諸規範、とくに穢れの観念にもとづく諸規範により階層化されるのが特徴。原則は職能世襲で、経済的、儀礼的に互いに関係づけられ、より大きな社会体を構成する。自治機能をもった集団もいる。いわゆるヒンドゥー教のみならず、その他の人々(たとえばキリスト教やイスラム教徒)にも同様の社会制度がある。
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 カーストの語源はポルトガル語のカスタ(casta)。castaという語は、南アジアの英語話者により常用される一方、現地の諸言語では外来語としてほとんど使用されない。現地語で主に使用されるのは、ジャーティ(jati)、ヴァルナ(varna)である。ヴァルナは、紀元前1000~前600年頃に成立した四姓制度における集団、すなわちバラモン(ブラーフマナ:司祭)、クシャトリヤ(武人・王族)、バニヤー(庶民とくに商人)、シュードラ(奉公人)を指す。シュードラの下にはさらに不可触民(パンチャマ:アチュート)が置かれた。原義は「色」とくに「肌の色」。日本でカーストといえば、主にこれらの位置を指す。一方南アジアの日常生活で機能してきた主たる集団概念は、ジャーティである。原義は「生まれ」。家系から種族まで、それが示す集団規模は多様で、その数は2000とも3000とも数えられる。勢い、その様態はきわめて多彩である。  カーストの語源はポルトガル語のカスタ(casta)。castaという語は、南アジアの英語話者により常用される一方、現地の諸言語では外来語としてほとんど使用されない。現地語で主に使用されるのは、ジャーティ(jati)、ヴァルナ(varna)である。ヴァルナは、紀元前1000~前600年頃に成立した四姓制度における集団、すなわちバラモン(ブラーフマナ:司祭)、クシャトリヤ(武人・王族)、バニヤー(庶民とくに商人)、シュードラ(奉公人)を指す。シュードラの下にはさらに不可触民(パンチャマ:アチュート)が置かれた。原義は「色」とくに「肌の色」。日本でカーストといえば、主にこれらの位置を指す。一方南アジアの日常生活で機能してきた主たる集団概念は、ジャーティである。原義は「生まれ」。家系から種族まで、それが示す集団規模は多様で、その数は2000とも3000とも数えられる。勢い、その様態はきわめて多彩である。
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 数千のジャーティは5つのヴァルナのいずれかに属するが、そのことは、古代バラモン教的な観念=制度そのものが南アジアの人々の生活を支配していることを意味しない。歴史上、多くのジャーティ(家系、種族)が生滅、離合解散を繰り返してきた。特定ジャーティの位階制内での上下移動、忌避関係や職能の変化、さらにはヴァルナ帰属の変化すらも起こった。儀礼的な身分と政治経済的な階級は早い段階から厳密には対応しなかった。これは、広範な経済構造や権力関係の諸変化を反映するもので、いわゆるカースト制度は一般に想像されるほど硬直的ではない。  数千のジャーティは5つのヴァルナのいずれかに属するが、そのことは、古代バラモン教的な観念=制度そのものが南アジアの人々の生活を支配していることを意味しない。歴史上、多くのジャーティ(家系、種族)が生滅、離合解散を繰り返してきた。特定ジャーティの位階制内での上下移動、忌避関係や職能の変化、さらにはヴァルナ帰属の変化すらも起こった。儀礼的な身分と政治経済的な階級は早い段階から厳密には対応しなかった。これは、広範な経済構造や権力関係の諸変化を反映するもので、いわゆるカースト制度は一般に想像されるほど硬直的ではない。
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 現地の人々からは、ヴァルナ=ジャーティの制度と観念を問題視する思想や運動が数多く生まれてきた。急進派はその抜本的な撤廃を、穏健派は漸次的な改革を目指してきた。しかし、その成果は部分的なものにとどまる。例えばインドではカースト差別を禁止する法律が制定されたが、十分な効力を発揮していない。反対者たちすらもが、世代を重ねると一つのジャーティとして全体システムに包摂されてしまう。こうして、南アジア世界は、古代バラモン教そのものではないにせよ、連綿と続く伝統的な制度と観念により強く特徴づけられているのである。  現地の人々からは、ヴァルナ=ジャーティの制度と観念を問題視する思想や運動が数多く生まれてきた。急進派はその抜本的な撤廃を、穏健派は漸次的な改革を目指してきた。しかし、その成果は部分的なものにとどまる。例えばインドではカースト差別を禁止する法律が制定されたが、十分な効力を発揮していない。反対者たちすらもが、世代を重ねると一つのジャーティとして全体システムに包摂されてしまう。こうして、南アジア世界は、古代バラモン教そのものではないにせよ、連綿と続く伝統的な制度と観念により強く特徴づけられているのである。

2008年10月22日 (水) 17:01の版

 インドをはじめとする南アジア世界にみられる特定の社会集団の呼称。端的には家系や血筋、ひいては種族のことだが、飲食、結婚、居住などにまつわる諸規範、とくに穢れの観念にもとづく諸規範により階層化されるのが特徴。原則は職能世襲で、経済的、儀礼的に互いに関係づけられ、より大きな社会体を構成する。自治機能をもった集団もいる。いわゆるヒンドゥー教のみならず、その他の人々(たとえばキリスト教やイスラム教徒)にも同様の社会制度がある。

   カーストの語源はポルトガル語のカスタ(casta)。castaという語は、南アジアの英語話者により常用される一方、現地の諸言語では外来語としてほとんど使用されない。現地語で主に使用されるのは、ジャーティ(jati)、ヴァルナ(varna)である。ヴァルナは、紀元前1000~前600年頃に成立した四姓制度における集団、すなわちバラモン(ブラーフマナ:司祭)、クシャトリヤ(武人・王族)、バニヤー(庶民とくに商人)、シュードラ(奉公人)を指す。シュードラの下にはさらに不可触民(パンチャマ:アチュート)が置かれた。原義は「色」とくに「肌の色」。日本でカーストといえば、主にこれらの位置を指す。一方南アジアの日常生活で機能してきた主たる集団概念は、ジャーティである。原義は「生まれ」。家系から種族まで、それが示す集団規模は多様で、その数は2000とも3000とも数えられる。勢い、その様態はきわめて多彩である。      数千のジャーティは5つのヴァルナのいずれかに属するが、そのことは、古代バラモン教的な観念=制度そのものが南アジアの人々の生活を支配していることを意味しない。歴史上、多くのジャーティ(家系、種族)が生滅、離合解散を繰り返してきた。特定ジャーティの位階制内での上下移動、忌避関係や職能の変化、さらにはヴァルナ帰属の変化すらも起こった。儀礼的な身分と政治経済的な階級は早い段階から厳密には対応しなかった。これは、広範な経済構造や権力関係の諸変化を反映するもので、いわゆるカースト制度は一般に想像されるほど硬直的ではない。

   現地の人々からは、ヴァルナ=ジャーティの制度と観念を問題視する思想や運動が数多く生まれてきた。急進派はその抜本的な撤廃を、穏健派は漸次的な改革を目指してきた。しかし、その成果は部分的なものにとどまる。例えばインドではカースト差別を禁止する法律が制定されたが、十分な効力を発揮していない。反対者たちすらもが、世代を重ねると一つのジャーティとして全体システムに包摂されてしまう。こうして、南アジア世界は、古代バラモン教そのものではないにせよ、連綿と続く伝統的な制度と観念により強く特徴づけられているのである。


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