法の下の平等

出典: Jinkawiki

(版間での差分)
2008年12月5日 (金) 12:40の版
Bunkyo-student2008 (ノート | 投稿記録)

← 前の差分へ
最新版
Bunkyo-student2008 (ノート | 投稿記録)

1 行 1 行
-平等という思想+== 平等という思想 ==
- +人間平等という思想は古くギリシャ時代にその起源を求めることができる。しかし、近代憲法において自由と並んで保障されるに至るまでには、長い年月が必要であった。
- 人間平等という思想は古くギリシャ時代にその起源を求めることができる。しかし、近代憲法において自由と並んで保障されるに至るまでには、長い年月が必要であった。+日本においては、明治維新のときに四民平等とされる(それまでは、武士、農民、工業を営む者、商業を営む者の順に階級が分かれていた)ものの、実際には華族という特権階級が生まれており、男尊女卑の時代が続き、また外国人との差別的取り扱いも憲法に違反しないとされていた。
- 日本においては、明治維新のときに四民平等とされる(それまでは、武士、農民、工業を営む者、商業を営む者の順に階級が分かれていた)ものの、実際には華族という特権階級が生まれており、男尊女卑の時代が続き、また外国人との差別的取り扱いも憲法に違反しないとされていた。+そんな日本において平等権が当たり前のこととなった背景には、やはり日本国憲法の制定が大きい。日本国憲法は数カ所で平等権の大切さをうたっている。
- そんな日本において平等権が当たり前のこととなった背景には、やはり日本国憲法の制定が大きい。日本国憲法は数カ所で平等権の大切さをうたっている。+
- +
- +
-法の下の平等+
 +== 法の下の平等 ==
 法の下の平等は日本国憲法で理念的に初めて実現した。日本国憲法第14条(日本国憲法第3章にある条文の1つ)では法の下の平等について次のように記している。  法の下の平等は日本国憲法で理念的に初めて実現した。日本国憲法第14条(日本国憲法第3章にある条文の1つ)では法の下の平等について次のように記している。
26 行 23 行
 法の下の平等という概念は、個人はすべてその人間的価値において同じ重みを持つことを意味し、ただ単に「法律を制定・適用するにあたって同じ取り扱いをする」というだけの意味に留まらない。ここでいう「平等」という概念は、「みんな一緒」という意味を超えて、「人は一人ひとりみんな違うんだ」ということを積極的に認めることを意味する。その意味で、「法の下の平等」という概念は、「個人の尊重(尊厳)」(第13条)を実質化するものであると言える。  法の下の平等という概念は、個人はすべてその人間的価値において同じ重みを持つことを意味し、ただ単に「法律を制定・適用するにあたって同じ取り扱いをする」というだけの意味に留まらない。ここでいう「平等」という概念は、「みんな一緒」という意味を超えて、「人は一人ひとりみんな違うんだ」ということを積極的に認めることを意味する。その意味で、「法の下の平等」という概念は、「個人の尊重(尊厳)」(第13条)を実質化するものであると言える。
 +==「法の下」の意味 ==
 + 「法の下」については二つの考え方がある。
-<参考>+○立法者非拘束説
 +「法」とは国会が定めた法律を指し、「法の下の平等」とは、法律の下の平等をいうのであって、行政機関や裁判所が法律を平等に適用すべきことを要求しているという説。
 +
 +○立法者拘束説
 +
 +「法」とは憲法を指し、立法府である国会も憲法の下にあり、不平等な内容の法律をつくることが禁止される。すなわち「法の下の平等」とは、行政権や司法権による法の適用のみならず、立法権による法内容の平等まで要求しているという説。
 +
 +== 形式的平等から実質的平等へ ==
 + 近代憲法に「平等」という言葉が出てきた頃は形式的平等であった。しかし、資本主義の発展の中で、富の偏り、労働者の貧困・失業などの社会問題が起こり、実質的には不平等の状態が生じた。現代国家においては、社会に存在するこのような事実上の不平等をなくさなければならない。そのため、平等権は単に差別されない(出発点の平等)だけではなく、社会的・経済的強者と弱者の実質的な平等(結果の平等)を図ることも含んでいる。
 +
 + 日本において、第二次世界大戦後の民主化を支えた基本原理の一つは平等権である。それを憲法第14条において保障し、明治憲法下の不平等を廃止した。この他にも平等権を個別的に具体化する規定を置いて、平等権の徹底を図っている。
 +
 +== 参考 ==
中井 多賀宏 著 「最新憲法がよ~くわかる本」 秀和システム 中井 多賀宏 著 「最新憲法がよ~くわかる本」 秀和システム
戸田 泉 著 「超図解法律入門 誰でもわかる憲法入門」 エクスメディア 戸田 泉 著 「超図解法律入門 誰でもわかる憲法入門」 エクスメディア
 +
 +後藤光男 著 「図解雑学 憲法」 ナツメ社
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/1503/hounomoto.html http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/1503/hounomoto.html

最新版

目次

平等という思想

人間平等という思想は古くギリシャ時代にその起源を求めることができる。しかし、近代憲法において自由と並んで保障されるに至るまでには、長い年月が必要であった。 日本においては、明治維新のときに四民平等とされる(それまでは、武士、農民、工業を営む者、商業を営む者の順に階級が分かれていた)ものの、実際には華族という特権階級が生まれており、男尊女卑の時代が続き、また外国人との差別的取り扱いも憲法に違反しないとされていた。 そんな日本において平等権が当たり前のこととなった背景には、やはり日本国憲法の制定が大きい。日本国憲法は数カ所で平等権の大切さをうたっている。

法の下の平等

 法の下の平等は日本国憲法で理念的に初めて実現した。日本国憲法第14条(日本国憲法第3章にある条文の1つ)では法の下の平等について次のように記している。

第1項:すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

第2項:華族その他の貴族の制度は、これを認めない。

第3項:栄誉、勲章その他栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。


 第1項に列挙されている事項(人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。)は、限定的な意味の列挙ではなく、それ以外の事項における不合理な差別的取り扱いも許されない。

 第2項では、明治憲法では、旧公家や武家などが華族として爵位をもち、貴族制度をとっていたが、日本国憲法では憲法上、貴族制度を設けることを禁止し、それまでの華族制度を廃止した。

 第3項においては、「貴族」や「華族」と名付けられていなくても、世襲の栄典や、一代でも特権を認めると、実質的な貴族制度となってしまう恐れがあり、平等原則に反する。そこで、日本国憲法は栄典・勲章なども特権をつけることを禁止している。毎年受勲章が発表されているが、何の特権も伴っていない。


 法の下の平等という概念は、個人はすべてその人間的価値において同じ重みを持つことを意味し、ただ単に「法律を制定・適用するにあたって同じ取り扱いをする」というだけの意味に留まらない。ここでいう「平等」という概念は、「みんな一緒」という意味を超えて、「人は一人ひとりみんな違うんだ」ということを積極的に認めることを意味する。その意味で、「法の下の平等」という概念は、「個人の尊重(尊厳)」(第13条)を実質化するものであると言える。

「法の下」の意味

 「法の下」については二つの考え方がある。

○立法者非拘束説

「法」とは国会が定めた法律を指し、「法の下の平等」とは、法律の下の平等をいうのであって、行政機関や裁判所が法律を平等に適用すべきことを要求しているという説。

○立法者拘束説

「法」とは憲法を指し、立法府である国会も憲法の下にあり、不平等な内容の法律をつくることが禁止される。すなわち「法の下の平等」とは、行政権や司法権による法の適用のみならず、立法権による法内容の平等まで要求しているという説。

形式的平等から実質的平等へ

 近代憲法に「平等」という言葉が出てきた頃は形式的平等であった。しかし、資本主義の発展の中で、富の偏り、労働者の貧困・失業などの社会問題が起こり、実質的には不平等の状態が生じた。現代国家においては、社会に存在するこのような事実上の不平等をなくさなければならない。そのため、平等権は単に差別されない(出発点の平等)だけではなく、社会的・経済的強者と弱者の実質的な平等(結果の平等)を図ることも含んでいる。

 日本において、第二次世界大戦後の民主化を支えた基本原理の一つは平等権である。それを憲法第14条において保障し、明治憲法下の不平等を廃止した。この他にも平等権を個別的に具体化する規定を置いて、平等権の徹底を図っている。

参考

中井 多賀宏 著 「最新憲法がよ~くわかる本」 秀和システム

戸田 泉 著 「超図解法律入門 誰でもわかる憲法入門」 エクスメディア

後藤光男 著 「図解雑学 憲法」 ナツメ社

http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/1503/hounomoto.html


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成