草双紙

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2009年1月24日 (土) 12:55の版
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==赤本== ==赤本==
-赤本は最初期の草双紙で、1662年(寛文2)ごろ発生した幼童向けの絵本である。素朴な絵と簡単な書き入れとからなり、表紙は丹色(にいろ)で絵題簽(えだいせん)を張り、判型は四六判と赤小本とよばれる小型のものがあったが、出版の商業化とともに四六判に統一され、以後この判型が草双紙のみならず、近代の小説本の大きさの原型となった。よく知られた前代からのおとぎ話や怪異譚(たん)を内容とし、叙述はきわめて簡潔なものであったが、しだいに歌舞伎(かぶき)や浄瑠璃(じょうるり)の素材を題材とするようになって複雑化するとともに、大人の、とくに青少年向けの読み物へと脱皮していった。+赤本は最初期の草双紙で、享保の頃が全盛期。1662年(寛文2)ごろ発生した幼童向けの絵本である。素朴な絵と簡単な書き入れとからなり、表紙は丹色で絵題簽を張り、判型は四六判と赤小本とよばれる小型のものがあったが、出版の商業化とともに四六判に統一され、以後この判型が草双紙のみならず、近代の小説本の大きさの原型となった。よく知られた前代からのおとぎ話(桃太郎、舌切り雀、さるかに合戦など)や怪異譚を内容とし、叙述はきわめて簡潔なもので教育的な要素が強く、正月の贈答品にもなっていた。おおむね鳥居清満、近藤清春など画工により作られた。しだいに歌舞伎や浄瑠璃の素材を題材とするようになって複雑化するとともに、大人の、とくに青少年向けの読み物へと脱皮していった。
 +==黒本==
-==黒本・青本==+表紙の色から黒本という。敵討ちなどの忠義や武勇伝、浄瑠璃・歌舞伎、謡曲、仮名双紙、軍記物、お伽双紙、浮世双紙など多様な内容になってきた。およそ創作性が加わった。作者と画工を兼ねる場合が多い。同一内容が赤本、黒本の2種として同時刊行されさえした。青本と前後して流行するが、体裁が野暮ったいとして早くすたれた。永享年間から刊行され、半紙半截5丁、まれに6丁を1冊とし、2、3冊で1部とした。青年男女を読者とし、内容も赤本より高まり、安永4年以降もわずかに刊行された。
-延享(えんきょう)(1744~47)初年ごろ、染料の値段の関係から表紙が黒色にかわって黒本が、また同じころ萌黄色(もえぎいろ)表紙の青本が誕生し、ともに演劇の演目に取材した史伝、伝説、神仏の霊験譚などを内容とした。初期は作者、画工とも不明の作が多いが、しだいに浮世絵創生期の代表的画家の奥村政信(まさのぶ)、鳥居清満(きよみつ)、富川房信(とみかわふさのぶ)らが作者を兼ねて活躍し、やがて専業の作者丈阿(じょうあ)などが出て草双紙の世界も大きくさま変わりして、滑稽洒脱(こっけいしゃだつ)な叙述で現実世界の世態人情をも写すようになり、次代の黄表紙を生み出す母体を醸成することとなった。 +
 +==青本==
 +黄色(もえぎ色)の表紙(黄色を青と称した)で、少年や女性向けに芝居の筋書きなどを書いたもの。おとぎ話、歌舞伎・浄瑠璃物、歴史物などがある。黒本と前後して流行し、内容も似たようなものであるが、明和・安永の初めが全盛期で、しだいに男女の恋愛や遊里なども取上げられるようになった。
 +(大人向けの黄表紙というジャンルが生まれるが、同時代にはまとめて「青本」と呼ばれていた)
-==黄表紙== 
-1775年(安永4)恋川春町(こいかわはるまち)が『金々先生栄花夢(きんきんせんせいえいがのゆめ)』を自画作で発表し、草双紙の世界は大転換期を迎える。この作は、そのころの江戸で成人の読み物としてもてはやされていた洒落本(しゃれぼん)の世界の絵解き、戯画化ともいうべきもので、精緻(せいち)な現実描写、知的で滑稽洒脱な視点と筆致が注目される。ちょうどこのころ、表紙も退色しやすい萌黄色から、値段も安く色もあせない黄色に変わって定着し、ここに黄表紙の誕生となった。以後黄表紙は、自由主義的な田沼時代を背景に、春町、朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ)らの武家作者や山東(さんとう)京伝、芝全交らの町人作者、北尾重政(しげまさ)、鳥居清長、喜多川歌麿(きたがわうたまろ)ら当代第一級の浮世絵師を中核とし、安永(あんえい)末年から天明(てんめい)年間(1780年代)にかけて、狂歌壇を中心とする天明文壇の隆盛とともに全盛期を招来し、軽妙な風刺性、奇想天外なパロディー(戯画化)を駆使した、内容よりもその表現に意義を認めざるをえない独特の文学形態を生み出した。 
-しかし田沼意次(おきつぐ)の失脚、保守派の松平定信(さだのぶ)による寛政(かんせい)の改革(1787~93)により、その軽い風刺性すらもとがめられ、武家作者の総退場や、作風の転換を迫られる結果となった。心学を取り入れた教訓性の強いものや敵討物(かたきうちもの)の流行がそれで、しだいに筋(すじ)も複雑化し、長編化して、+==黄表紙==
 +安永4年に刊行された恋川春町の『金々先生栄花夢』が黄表紙の代表作であり、のちにはこれ以降の草双紙を黄表紙として青本と区別するようになった。フキダシの様なものが描かれるなど現代の漫画に通じる表現技法を持つ。漉返半紙または上半紙半截二つ折本、1冊5枚の形式、これが2冊または3冊で1部をなす。研究者によっては安永4年から文化3年刊行のものをいう。
 +大人向けの娯楽性が強い本。筋書き以上に、言葉や絵の端々に仕組まれた遊びの要素を読み解くことに楽しみがあった。表紙の色は黄色で当時は青本と区別されていなかった。1775年(安永4)恋川春町が『金々先生栄花夢』を自画作で発表し、草双紙の世界は大転換期を迎える。この作は、そのころの江戸で成人の読み物としてもてはやされていた洒落本の世界の絵解き、戯画化ともいうべきもので、精緻な現実描写、知的で滑稽洒脱な視点と筆致が注目される。ちょうどこのころ、表紙も退色しやすい萌黄色から、値段も安く色もあせない黄色に変わって定着し、ここに黄表紙の誕生となった。以後黄表紙は、自由主義的な田沼時代を背景に、春町、朋誠堂喜三二らの武家作者や山東京伝、芝全交らの町人作者、北尾重政、鳥居清長、喜多川歌麿ら当代第一級の浮世絵師を中核とし、安永末年から天明年間(1780年代)にかけて、狂歌壇を中心とする天明文壇の隆盛とともに全盛期を招来し、軽妙な風刺性、奇想天外なパロディー(戯画化)を駆使した、内容よりもその表現に意義を認めざるをえない独特の文学形態を生み出した。フキダシの様なものが描かれるなど現代の漫画に通じる表現技法を持つ。
==合巻== ==合巻==
-1807年(文化4)ごろには装丁を変えた合巻へと移行していった。末期には、のちに小説の世界に新ジャンルを開拓する曲亭馬琴(きょくていばきん)、式亭三馬(しきていさんば)、十返舎一九(じっぺんしゃいっく)らがあり、画工には歌川豊国(とよくに)・国貞(くにさだ)らの活躍が著しい。合巻の特徴は、複雑でグロテスクな筋立てと、挿絵が役者の似顔で描かれる点など演劇との結び付きが密接なところにあり、京伝、柳亭種彦(りゅうていたねひこ)らを代表作者として、初期には短編物であったが、しだいに長編化して『白縫譚(しらぬいものがたり)』のように90編・各4冊という長大な作も出るに至った。血みどろなグロテスクさはその題材による点が多いが、時代の要求および天明期の知的で滑稽洒脱な戯作(げさく)精神の裏返しであったところにも注目したい+長編化し、それまで五丁で一冊に綴じていたものを十丁ないし十五丁単位で一冊に綴じたもの(この形式を明瞭にとったのは、文化3年の式亭三馬の『雷太郎強欲悪物語』からである。三馬は合巻形式の発案者であるという)。絵入りだが、内容も比較的読本に近い。草双紙と言えば合巻のことを指すこともある。柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』などが代表作である。しかし天保の改革の影響により華美な装丁が禁じられ、いったんは衰退する。しかしこの改革によって好色画・好色本が禁圧され人情本が衰退すると、人情本の読者が合巻に流れて刊行点数が増大した。また改革の影響で既存の版元の枠組みが崩れたことにより、新興の版元が多くの合巻を出版するようになった。
 +明治に入ると合巻の作者は執筆の場を新聞の連載小説に移し、新たな読者層を獲得した。長編の伝奇ものが流行した。また活版印刷の導入によって絵に対して文章の比重が高まったほか発行部数の増大などの変化があった。
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 +==参考文献==
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 +http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E5%8F%8C%E7%B4%99#.E9.9D.92.E6.9C.AC
 +『詳説 日本史』山川出版社

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草双紙(くさぞうし)とは江戸時代の小説の一ジャンル。江戸特有の挿絵入り仮名書き小説で、寛文(かんぶん)末年(17世紀後半)ごろに刊行され始めた幼童向けの絵本である赤本を初めとして、黒本、青本、黄表紙、合巻(ごうかん)という順序で展開し、明治10年代(1877~86)まで出版され続けた絵双紙の総称。江戸時代のもっとも通俗的な小説の一つで、「草」は似て非なるもの、本格的でないものというほどの意を表す卑称である。判型の多くは中本型(四六判。縦約18センチメートル、横13センチメートル)で、1冊5丁(10ページ)よりなり、1~3冊からなるが、合巻には100冊に及ぶ大部なものも数多い。赤本、青本、黄表紙などの呼び名は表紙の色によるもので、合巻はそれらが長編化し、数冊が合綴(がってつ)されるようになったがための呼び名であったが、またそれらはそれぞれに独自の内容的特徴をもっていたので、今日ではそれらの文芸のもつ特質をもその名でよんでいる。


目次

種類

赤本

赤本は最初期の草双紙で、享保の頃が全盛期。1662年(寛文2)ごろ発生した幼童向けの絵本である。素朴な絵と簡単な書き入れとからなり、表紙は丹色で絵題簽を張り、判型は四六判と赤小本とよばれる小型のものがあったが、出版の商業化とともに四六判に統一され、以後この判型が草双紙のみならず、近代の小説本の大きさの原型となった。よく知られた前代からのおとぎ話(桃太郎、舌切り雀、さるかに合戦など)や怪異譚を内容とし、叙述はきわめて簡潔なもので教育的な要素が強く、正月の贈答品にもなっていた。おおむね鳥居清満、近藤清春など画工により作られた。しだいに歌舞伎や浄瑠璃の素材を題材とするようになって複雑化するとともに、大人の、とくに青少年向けの読み物へと脱皮していった。

黒本

表紙の色から黒本という。敵討ちなどの忠義や武勇伝、浄瑠璃・歌舞伎、謡曲、仮名双紙、軍記物、お伽双紙、浮世双紙など多様な内容になってきた。およそ創作性が加わった。作者と画工を兼ねる場合が多い。同一内容が赤本、黒本の2種として同時刊行されさえした。青本と前後して流行するが、体裁が野暮ったいとして早くすたれた。永享年間から刊行され、半紙半截5丁、まれに6丁を1冊とし、2、3冊で1部とした。青年男女を読者とし、内容も赤本より高まり、安永4年以降もわずかに刊行された。

青本

黄色(もえぎ色)の表紙(黄色を青と称した)で、少年や女性向けに芝居の筋書きなどを書いたもの。おとぎ話、歌舞伎・浄瑠璃物、歴史物などがある。黒本と前後して流行し、内容も似たようなものであるが、明和・安永の初めが全盛期で、しだいに男女の恋愛や遊里なども取上げられるようになった。 (大人向けの黄表紙というジャンルが生まれるが、同時代にはまとめて「青本」と呼ばれていた)


黄表紙

安永4年に刊行された恋川春町の『金々先生栄花夢』が黄表紙の代表作であり、のちにはこれ以降の草双紙を黄表紙として青本と区別するようになった。フキダシの様なものが描かれるなど現代の漫画に通じる表現技法を持つ。漉返半紙または上半紙半截二つ折本、1冊5枚の形式、これが2冊または3冊で1部をなす。研究者によっては安永4年から文化3年刊行のものをいう。 大人向けの娯楽性が強い本。筋書き以上に、言葉や絵の端々に仕組まれた遊びの要素を読み解くことに楽しみがあった。表紙の色は黄色で当時は青本と区別されていなかった。1775年(安永4)恋川春町が『金々先生栄花夢』を自画作で発表し、草双紙の世界は大転換期を迎える。この作は、そのころの江戸で成人の読み物としてもてはやされていた洒落本の世界の絵解き、戯画化ともいうべきもので、精緻な現実描写、知的で滑稽洒脱な視点と筆致が注目される。ちょうどこのころ、表紙も退色しやすい萌黄色から、値段も安く色もあせない黄色に変わって定着し、ここに黄表紙の誕生となった。以後黄表紙は、自由主義的な田沼時代を背景に、春町、朋誠堂喜三二らの武家作者や山東京伝、芝全交らの町人作者、北尾重政、鳥居清長、喜多川歌麿ら当代第一級の浮世絵師を中核とし、安永末年から天明年間(1780年代)にかけて、狂歌壇を中心とする天明文壇の隆盛とともに全盛期を招来し、軽妙な風刺性、奇想天外なパロディー(戯画化)を駆使した、内容よりもその表現に意義を認めざるをえない独特の文学形態を生み出した。フキダシの様なものが描かれるなど現代の漫画に通じる表現技法を持つ。


合巻

長編化し、それまで五丁で一冊に綴じていたものを十丁ないし十五丁単位で一冊に綴じたもの(この形式を明瞭にとったのは、文化3年の式亭三馬の『雷太郎強欲悪物語』からである。三馬は合巻形式の発案者であるという)。絵入りだが、内容も比較的読本に近い。草双紙と言えば合巻のことを指すこともある。柳亭種彦の『偐紫田舎源氏』などが代表作である。しかし天保の改革の影響により華美な装丁が禁じられ、いったんは衰退する。しかしこの改革によって好色画・好色本が禁圧され人情本が衰退すると、人情本の読者が合巻に流れて刊行点数が増大した。また改革の影響で既存の版元の枠組みが崩れたことにより、新興の版元が多くの合巻を出版するようになった。 明治に入ると合巻の作者は執筆の場を新聞の連載小説に移し、新たな読者層を獲得した。長編の伝奇ものが流行した。また活版印刷の導入によって絵に対して文章の比重が高まったほか発行部数の増大などの変化があった。


参考文献

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8D%89%E5%8F%8C%E7%B4%99#.E9.9D.92.E6.9C.AC 『詳説 日本史』山川出版社


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