朝日訴訟

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2009年1月29日 (木) 16:54の版
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== 憲法25条== == 憲法25条==
憲法25条では、生存権と国の社会保障義務について定めている。 憲法25条では、生存権と国の社会保障義務について定めている。
- *条文+ 
- ①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。+・条文
- ②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。+ 
 +①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 + 
 +②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
== 裁判の経過と判決要旨 == == 裁判の経過と判決要旨 ==
第一審の東京地方裁判所では、生活保護法は、何人に対しても、最低限度の生活を保障する保護の実施を請求する権利を賦与することを規定するものであるとして、原告の全面勝訴とした。(東京地判1960.10.19)しかし、第二審の東京高等裁判所では、日用品費600円という基準はすこぶる安いが、違法とはいえないとして一審判決を取り消した。(東京高判1963.11.4)よって、朝日氏は一審の判決が覆り、敗訴となってしまったのである。この二審判決での敗訴を受けて上告した最高裁判所での訴訟継続中に朝日氏が死亡したために、訴訟終了となったが、最高裁判所は念のためとして、傍論において生存権に関する考え方を述べた。その内容とは、「憲法25条の規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営めるように国政を運用すべきことを国の責務として宣言したもので、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。」(最大判1967.5.24)というものであった。結果的に最終審である最高裁判所は、上告を棄却するという判決を下した。 第一審の東京地方裁判所では、生活保護法は、何人に対しても、最低限度の生活を保障する保護の実施を請求する権利を賦与することを規定するものであるとして、原告の全面勝訴とした。(東京地判1960.10.19)しかし、第二審の東京高等裁判所では、日用品費600円という基準はすこぶる安いが、違法とはいえないとして一審判決を取り消した。(東京高判1963.11.4)よって、朝日氏は一審の判決が覆り、敗訴となってしまったのである。この二審判決での敗訴を受けて上告した最高裁判所での訴訟継続中に朝日氏が死亡したために、訴訟終了となったが、最高裁判所は念のためとして、傍論において生存権に関する考え方を述べた。その内容とは、「憲法25条の規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営めるように国政を運用すべきことを国の責務として宣言したもので、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。」(最大判1967.5.24)というものであった。結果的に最終審である最高裁判所は、上告を棄却するという判決を下した。
 +== 人間裁判 ==
 +朝日訴訟は生存権の意味を根本から問いかけたもので、それゆえに「人間裁判」と呼ばれた。最高裁判所は25条を「プログラム規定」であるとして朝日氏側は敗訴したが、裁判の過程で生活保護基準が段階的に引き上げられるなど、訴訟の果たした意義はきわめて大きなものであったといえる。
 +
 +参考文献
 +*政治・経済資料2005 東京法令出版
 +*緒方章宏[編著] わかりやすい憲法 文化書房博文社 2008

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生活保護法下において、厚生大臣が定めた生活扶助基準が、健康で文化的な最低限度の生活水準を維持することができない違法、または違憲のものであるかどうかということが争われた最初の訴訟である。

目次

概要

原告である朝日茂氏は、重症の肺結核で、身寄りもなく、国立岡山療養所に入院していた。その際、生活保護法の規定に基づき、医療扶助と月額600円の日用品費の扶助を受けていた。1956年(昭和31年)7月、戦後に満州から引きあげてきた実兄が宮崎にいることを津山市社会福祉事務所が確認し、兄に対して朝日氏に毎月1500円を送金するように命じた。朝日氏が兄からの送金が受けることができるようになると、福祉事務所はまず日用品費の600円を廃止した。そして、送金の1500円のうち600円を日用品費として朝日氏の手元に残し、900円を医療費の自己負担として納入することを求めた。この結果、朝日氏の手元には600円の日用品費しか残らないこととなった。朝日氏は、月600円の日用品費は安すぎ、憲法25条に違反するとして提訴した。

憲法25条

憲法25条では、生存権と国の社会保障義務について定めている。

・条文

①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

②国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

裁判の経過と判決要旨

第一審の東京地方裁判所では、生活保護法は、何人に対しても、最低限度の生活を保障する保護の実施を請求する権利を賦与することを規定するものであるとして、原告の全面勝訴とした。(東京地判1960.10.19)しかし、第二審の東京高等裁判所では、日用品費600円という基準はすこぶる安いが、違法とはいえないとして一審判決を取り消した。(東京高判1963.11.4)よって、朝日氏は一審の判決が覆り、敗訴となってしまったのである。この二審判決での敗訴を受けて上告した最高裁判所での訴訟継続中に朝日氏が死亡したために、訴訟終了となったが、最高裁判所は念のためとして、傍論において生存権に関する考え方を述べた。その内容とは、「憲法25条の規定は、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営めるように国政を運用すべきことを国の責務として宣言したもので、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。」(最大判1967.5.24)というものであった。結果的に最終審である最高裁判所は、上告を棄却するという判決を下した。

人間裁判

朝日訴訟は生存権の意味を根本から問いかけたもので、それゆえに「人間裁判」と呼ばれた。最高裁判所は25条を「プログラム規定」であるとして朝日氏側は敗訴したが、裁判の過程で生活保護基準が段階的に引き上げられるなど、訴訟の果たした意義はきわめて大きなものであったといえる。

参考文献

  • 政治・経済資料2005 東京法令出版
  • 緒方章宏[編著] わかりやすい憲法 文化書房博文社 2008

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