イギリスの就学前教育
出典: Jinkawiki
2009年8月6日 (木) 10:01の版 Daijiten2009 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
最新版 Daijiten2009 (ノート | 投稿記録) |
||
34 行 | 34 行 | ||
自分の家で、親戚関係にない他人の子どものケアをして報酬を得ている人をchildminderと呼び、childminderもまた、それぞれの地方当局に登録することが義務付けられている。保育料については、地方当局の指導を受けて親とマインダーとの間で契約されるのが一般的である。このような保育様式をイギリスではchildmindingと呼ぶ。アメリカでは同じような様式をfamily day careと呼んでおり、日本では地域によって家庭保育員制度、家庭保育所制度、保育ママ制度、などといった不統一の呼び方で呼ばれる。イギリスのほうが歴史が古く、利用率もはるかに高い。 | 自分の家で、親戚関係にない他人の子どものケアをして報酬を得ている人をchildminderと呼び、childminderもまた、それぞれの地方当局に登録することが義務付けられている。保育料については、地方当局の指導を受けて親とマインダーとの間で契約されるのが一般的である。このような保育様式をイギリスではchildmindingと呼ぶ。アメリカでは同じような様式をfamily day careと呼んでおり、日本では地域によって家庭保育員制度、家庭保育所制度、保育ママ制度、などといった不統一の呼び方で呼ばれる。イギリスのほうが歴史が古く、利用率もはるかに高い。 | ||
+ | |||
+ | == 参考文献 == | ||
+ | 山田敏著 『イギリス就学前教育・保育の研究』 風間書房 2007年 | ||
+ | |||
+ | N・ワイトブレッド著 田口仁久訳 『イギリスの幼児教育の史的展開』 酒井書店 1992年 |
最新版
近年、子どもの知的発達における就学前及び幼児期の重要性の認識が、次第に深まってきた。この深まりとその他多数の主として社会的な理由と~、保育教育に対する需要があらゆる社会階級の間で強くなった。こうした要件が、保育及び幼児教育のイギリスにおける歴史的展開の吟味を時宜にかなわせている。
保育及び幼児学校の内容と方法は、相容れない伝統に支配されてきた。子どもの自然な発達を助長しようという考えはルソーに端を発し、初等及び私立学校での早期の形式的教授の、あるいはその種の学校への準備の非なることを世間に承認させようと奮闘するフレーベル主義者によって、委細を尽くされていた。社会的な救済と身体面の厚生だけが保育の面倒を見ようとする動悸である場合が通例であったのであるが、保育教育という概念は徐々に承認をうる開発主義の伝統と密接に結びついている。保育と幼児教育が連続的なものと理解されるようになったのである。
保育の柱
今日のイギリスには、多くの就学前児が通う法律で規定された色々な教育・保育の方法ないし様式が存在する。その代表的なものについて以下に導入的説明をしておく。
1. nursery school(ナーサリースクール)とnursery class(ナーサリークラス)
nersery schoolのほとんどは、地方教育当局(the Local Education Authoriy = LEA)などによって運営される学校で、2歳から5歳までの子どもを対象としている。日本の幼稚園のほとんどが、一つの独立した施設として作られているように、これは独立した施設からなる学校である。ここでの保育者は、3年ないし4年のコースを終えた有資格の教員が中心となって、これに2年のコースで取得されるNNEB資格などの資格を持ったnursery nurseが加わっている。一般的には両者のチームでクラス内の子どもの保育に当たっている。公立のものが大部分を占め、公立のものの保育料は、nursery classの場合と同じく無料である。私立のものも、わずかではあるが存在しており、この場合は有料である。
nersery classは、学校としての性格はnursery schoolと全く同じであるが、これは小学校に付設されたクラスである。施設面でも教員スタッフの面でも、nursery schoolに比べて不十分な面が出やすいということを考慮して、入学できる子どもの年齢については3歳からとなっている。
2. reception class(リセプションクラス)
reception classは、義務教育年齢に達していない、主として4歳児を、時として3歳児を、義務教育年齢の5歳以上の子どもと一緒のクラスに受け入れている小学校の学級のことである。nursery schoolやclassが大きく不足し、それに代わる他の保育様式も極めて不十分な状況の中で、全国的に急速に拡大した様式である。その拡大の背景には、小学生の減少に伴う教室や教員の余剰が生じたことがあり、また、早い時期に就学前児を小学校へ入れたい、という親の強い要求があり、日本の場合と異なり、そのような子どもでも小学校で受け入れ得るイギリスの教育法の存在がある。
reception classの施設・設備は、小学校のそれであり、それは、義務教育の年齢の子どものために作られたものであり、そこで教育に当たる教師もまた、小学校の教師である。したがって、そこには必然的に様々な問題が生じており、イギリスの文部省も議会も、そしてまた多くの研究機関や研究者も、これについての多くの調査報告書を出し、今後の成り行きを心配している。現時点では、小学生の数が再び増加し始めたため、reception classの問題は一層複雑性を増している。
3. day nursery(デイナーサリー)
day nurseryは、伝統的に厚生省の所轄下に置かれてきたデイケア(保育)の施設である。具体的には、日本の保育所的な施設を想定すればよい。公立のものは、親が共働きである子ども、単親の子ども、親が病気の子ども、などといった危機的状況にある家庭の子どもや、社会的困窮度の高い子どもに入所の優先権が与えられている。保育料については、基本的には、資産・収入状況などによって差をつけるsliding scale方式を採り、低料金である。子どもの年齢については、生後数週間から5歳までを対象としているが、大部分の子どもは2歳から5歳の子どもである。day nurseryでの保育者は、施設長の資格、看護士の資格、もしくはNNEBなどのnursery nurseの資格を持ったもの、あるいは経験その他の一定の条件を満たす者である。営利を目的とした私立のday nurseryもあり、働く女性の増加と共に、近年は増加の一途をたどっているが、この種のものの保育料は高額である。
4. playgroup(プレイグループ)
playgroupの多くは、子どもを持つ親がボランティアとして協力して自分たちの子どものグループを作り、遊びを通して子どもたちの保育を行おうとすることから始まった。その運営の仕方は、playgroupリーダーと呼ばれる保育者を雇うものや、母親が当番制で保育に当たるものなど、様々なものがある。そのほとんどは、毎日開くのではなく、週に3、4日間、しかもnursery schoolが開かれている学期にあわせて開かれる。利用する建物も、公民館や教会のホールなど、極めて多様である。
playgroupがイギリス全土に広がる大きな運動に発展するようになったのは、1961年頃からであるが、その初期の頃は、playgroupはnursery schoolの代用でしかない、と見られていた、しかし、今日では、親が地域に溶け込み、親同士が互いに結束し、親もまた子どもと共に成長するような、ユニークな組織である。つまり、playgroupは、親の参画と成長という重要な役割を兼ねた組織、と見られるようになっている。 playgroupが正式のものとして認可されるためには、それが使用する施設・設備、大人対子どもの比率、運営方法などについて一定の基準を満たしていなくてはならない。playgroupを中央レベルで所轄する省は、近年までは厚生省であり、地方当局でplaygroupの認可等の業務に当たる担当部局は、社会サービス局であった。しかし、playgroupの所轄に関しても、Blair政権下の統合化の諸改革の中で、教育担当相に移された。
5.childminding(チャイルドマインディング)
自分の家で、親戚関係にない他人の子どものケアをして報酬を得ている人をchildminderと呼び、childminderもまた、それぞれの地方当局に登録することが義務付けられている。保育料については、地方当局の指導を受けて親とマインダーとの間で契約されるのが一般的である。このような保育様式をイギリスではchildmindingと呼ぶ。アメリカでは同じような様式をfamily day careと呼んでおり、日本では地域によって家庭保育員制度、家庭保育所制度、保育ママ制度、などといった不統一の呼び方で呼ばれる。イギリスのほうが歴史が古く、利用率もはるかに高い。
参考文献
山田敏著 『イギリス就学前教育・保育の研究』 風間書房 2007年
N・ワイトブレッド著 田口仁久訳 『イギリスの幼児教育の史的展開』 酒井書店 1992年