国際紛争
出典: Jinkawiki
2009年8月7日 (金) 23:45の版 Daijiten2009 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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敵対する戦力が武力を行使して争うこと。とくに戦争や内戦のように、武力の衝突を指した「武力紛争」がほとんどであるが、裁判における紛争や経済における紛争など、いくつかの主体が激しく対立している状態を指す場合がある。 | 敵対する戦力が武力を行使して争うこと。とくに戦争や内戦のように、武力の衝突を指した「武力紛争」がほとんどであるが、裁判における紛争や経済における紛争など、いくつかの主体が激しく対立している状態を指す場合がある。 | ||
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+ | 国際紛争の形態は、大国間、大国と小国間、小国間同士、国家対脱国家主体間、国家集団間、脱国家主体間同士、支配民族対少数民族間などに分類される。具体的にいうと、(1)第2次大戦前の英独間や戦後の米ソ間の紛争のように,国際的地位や力関係の対称的な主体間での対称的紛争形態,(2)アメリカ・ベトナム間やソ連・アフガニスタン間の紛争のように,地位や力関係の非対称的な主体間での非対称的紛争形態,(3)インド・パキスタン間やイラン・イラク戦争のように,発展途上諸国間での対称的紛争形態,(4)イラクと北部地域のクルド民族や,東チモールでのインドネシアと東チモール独立戦線など,ある地域の支配民族と少数民族の場合のように,特定地域の非対称的主体間の非対称的紛争形態に区別される。 | ||
+ | 国際紛争の要因は、戦略的帝国主義(:軍事上・経済上、他国または後進の民族を征服して大国家を建設しようとする傾向)による紛争、国家の威信をめぐる紛争や帝国主義による侵略戦争、限定的な領土をめぐる紛争、国家の統一をめぐる紛争や正当な政府の地位をめぐる紛争、民族独立、解放戦争などがある。 | ||
+ | 国際紛争において戦争はすべではない。冷戦のように外交上の対立関係にあってもすべてが軍事衝突を伴うものではなかった。しかし、世界の歴史において過去3500年の間に紛争がなかった年は270年程度であり、有史以来、人類は国家・民族紛争の中心に戦争があったことは事実であろう。 | ||
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+ | == 国際紛争の平和的処理 == | ||
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+ | 国際紛争を放置すれば国家間の武力闘争にまで発展するおそれもある。そのために,国際紛争を未然に防止する方策ばかりでなく,紛争発生後の処理方法,とくに紛争の平和的処理の必要性が重視される。 | ||
+ | 国際紛争の平和的処理がはじめて採択されたのは、1899年に開催された第1回ハーグ平和会議であり、1907年の第2回ハーグ平和会議で修正された国際紛争平和的処理条約が成立した。これが第一次世界大戦後の1921年、国際連盟規約につながり、1928年の国際紛争平和的処理一般議定書、第二次世界大戦後の国際連合憲章と続けて採択されてきたのも、まさに世界政府なき国際社会即ち、アナーキカルソサイエティ(無政府社会)といわれる国際社会において、国際法という規範・各国家の利益または武力を中心としたパワーが相剋関係にある故である。 | ||
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+ | 国際法上、国際紛争の処理手続きには、交渉(negotiataion)、周旋(good office)、仲介(mediation)、調停(conciliation)、審査(inquriry)がある。法律的紛争は裁判手続きをとるが、政治的紛争に対しては調停などにより処理を図ることとされる。即ち、国際紛争を平和的処理を履行する上ではこれらの手法に基づき、国際司法裁判所や国際海洋法裁判所などにおいて国際司法の判断を仰ぐか、或いは外交努力により解決するのが望ましい。しかし、紛争当事国が原告として国際司法に提訴した場合、被告となる国が応訴しなければ国際裁判として成立せず、この場合、国際司法は国際紛争の平和的処理に十分な機能を果たせない。これはそもそも国家は国際司法における応訴義務を批准しない限り、国家に裁判義務がないことによるものである。 | ||
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+ | 日本などでは、日本国憲法において自国が国際紛争において武力の行使をすることを禁止し自ら交戦権を否認しているが、その他の諸外国にあっては、けしてそれら戦争の違法化が徹底されていないことも国際紛争の解決を困難としている。 | ||
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+ | == 参考資料 == | ||
+ | 下中弘編『大百科辞典』(平凡社、1996年) | ||
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+ | ジョセフ・ナイ・ジュニア著田中明彦・村田晃嗣訳『国際紛争』(有斐閣、2003年) | ||
+ | "http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%B4%9B%E4%BA%89" より作成 | ||
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+ | 牧田 幸人『世界大百科事典・年鑑・便覧』ver.2.0 日立デジタル平凡社 |
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国際紛争
国家をはじめとする行為主体のあいだにおいて国際的な価値・利益の対立によって起こる紛争。一方の当事国が明確な請求を出し、他方の当事国がこれを拒絶して反対の請求を出している状態。広義には戦争も含まれるが、一般的には戦争に至らない国家間の争いをいう。
紛争
敵対する戦力が武力を行使して争うこと。とくに戦争や内戦のように、武力の衝突を指した「武力紛争」がほとんどであるが、裁判における紛争や経済における紛争など、いくつかの主体が激しく対立している状態を指す場合がある。
国際紛争の形態と要因
国際紛争の形態は、大国間、大国と小国間、小国間同士、国家対脱国家主体間、国家集団間、脱国家主体間同士、支配民族対少数民族間などに分類される。具体的にいうと、(1)第2次大戦前の英独間や戦後の米ソ間の紛争のように,国際的地位や力関係の対称的な主体間での対称的紛争形態,(2)アメリカ・ベトナム間やソ連・アフガニスタン間の紛争のように,地位や力関係の非対称的な主体間での非対称的紛争形態,(3)インド・パキスタン間やイラン・イラク戦争のように,発展途上諸国間での対称的紛争形態,(4)イラクと北部地域のクルド民族や,東チモールでのインドネシアと東チモール独立戦線など,ある地域の支配民族と少数民族の場合のように,特定地域の非対称的主体間の非対称的紛争形態に区別される。 国際紛争の要因は、戦略的帝国主義(:軍事上・経済上、他国または後進の民族を征服して大国家を建設しようとする傾向)による紛争、国家の威信をめぐる紛争や帝国主義による侵略戦争、限定的な領土をめぐる紛争、国家の統一をめぐる紛争や正当な政府の地位をめぐる紛争、民族独立、解放戦争などがある。 国際紛争において戦争はすべではない。冷戦のように外交上の対立関係にあってもすべてが軍事衝突を伴うものではなかった。しかし、世界の歴史において過去3500年の間に紛争がなかった年は270年程度であり、有史以来、人類は国家・民族紛争の中心に戦争があったことは事実であろう。
国際紛争の平和的処理
国際紛争を放置すれば国家間の武力闘争にまで発展するおそれもある。そのために,国際紛争を未然に防止する方策ばかりでなく,紛争発生後の処理方法,とくに紛争の平和的処理の必要性が重視される。 国際紛争の平和的処理がはじめて採択されたのは、1899年に開催された第1回ハーグ平和会議であり、1907年の第2回ハーグ平和会議で修正された国際紛争平和的処理条約が成立した。これが第一次世界大戦後の1921年、国際連盟規約につながり、1928年の国際紛争平和的処理一般議定書、第二次世界大戦後の国際連合憲章と続けて採択されてきたのも、まさに世界政府なき国際社会即ち、アナーキカルソサイエティ(無政府社会)といわれる国際社会において、国際法という規範・各国家の利益または武力を中心としたパワーが相剋関係にある故である。
国際法上、国際紛争の処理手続きには、交渉(negotiataion)、周旋(good office)、仲介(mediation)、調停(conciliation)、審査(inquriry)がある。法律的紛争は裁判手続きをとるが、政治的紛争に対しては調停などにより処理を図ることとされる。即ち、国際紛争を平和的処理を履行する上ではこれらの手法に基づき、国際司法裁判所や国際海洋法裁判所などにおいて国際司法の判断を仰ぐか、或いは外交努力により解決するのが望ましい。しかし、紛争当事国が原告として国際司法に提訴した場合、被告となる国が応訴しなければ国際裁判として成立せず、この場合、国際司法は国際紛争の平和的処理に十分な機能を果たせない。これはそもそも国家は国際司法における応訴義務を批准しない限り、国家に裁判義務がないことによるものである。
日本などでは、日本国憲法において自国が国際紛争において武力の行使をすることを禁止し自ら交戦権を否認しているが、その他の諸外国にあっては、けしてそれら戦争の違法化が徹底されていないことも国際紛争の解決を困難としている。
参考資料
下中弘編『大百科辞典』(平凡社、1996年)
ジョセフ・ナイ・ジュニア著田中明彦・村田晃嗣訳『国際紛争』(有斐閣、2003年) "http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%B4%9B%E4%BA%89" より作成
牧田 幸人『世界大百科事典・年鑑・便覧』ver.2.0 日立デジタル平凡社