ダイオキシン

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構造と性質

ダイオキシンの構造は、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)をまとめてダイオキシン類と呼んでいる。 また、コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB)のようなダイオキシン類と同様の毒性を示す物質をダイオキシン類似化合物とよぶ。  ダイオキシン類は塩素を含む物質の不完全燃焼や、薬品類の合成の際、意図しない副合成物として生成する。 化合物字訳基準に従っ名称は、ジオキシンという。

ダイオキシンの性質は、無色無臭の個体で、蒸発しにくくほとんど水には溶けないが、脂肪などには溶けやすい。また、他の化学物質や酸、アルカリとは容易に反応しない安定した性質を持っているが、太陽からの紫外線で徐々に分解されることがわかっている。800℃以上の高温での完全燃焼により分解可能であるが、300℃程度の温度で「デノボ合成」(:デノボ、とは新しいものという意味で、低温での炭素からのダイオキシン生成のことをいう)により再合成される。

発生源

ダイオキシンは、意図的につくられることはない。しかし、炭素・酸素・水素・塩素が熱せられるような工程で意図せずできてしまう。 ダイオキシンの主な発生源は、自動車排ガス、煙草の煙、ゴミの焼却による燃焼工程等の他、金属精錬の燃焼過程や紙などの塩素漂白工程など、さまざまなところで発生する。 また、山火事や火山活動などの自然現象などによっても発生する。家庭内でも、塩素を含む薬剤、漂白剤などの使用、プラスチックや食品トレイの燃焼によっても発生する。 日本全体では、ダイオキシンは一年間に約5140~5300グラムが環境中に排出されていると試算されている。

生物への影響

陸上動物においても水生生物においても食物連鎖の低位にある生物よりも高位にある生物の方がより高いダイオキシン濃度を示すことが知られている。一方、PCDD、PCDF については、食物連鎖の高位にある生物の方がより低い濃度を示す傾向があることが確認されている。

WHO(世界保健機構)の国際がん研究機関(IARC)では、動物実験や人への影響の評価をもとに化学物質の人への発がん性の強さを分類しているが、平成9年2月、ダイオキシンの中でも最も毒性が強い2, 3, 7, 8-TCDDは、人に対する発がん性があるという評価を行なっている。しかし、現在の日本の通常の環境の汚染レベルではダイオキシンにより、がんになるほどではないと考えられている。

妊娠中の動物実験(ねずみなど)にダイオキシンを与える実験で、口蓋裂、水腎症などの奇形を起こすことがわかっている。人については、ベトナム戦争帰還兵の子供の脊椎の奇形について、ダイオキシンと関連があるのでは、との報告もあるが、まだ不明な点が多いようだ。しかし、現在日本の通常の環境の汚染レベルではダイオキシンにより奇形が生ずるほどではないと考えられている。

動物実験において、ダイオキシンは体内のホルモンと似たような働きをすることにより、甲状腺機能が低下したり、生殖器官が小さくなったり精子数が減ったり、また免疫機能が低下したりすることが報告されている。ただし、人に対しても同じような影響があるのかどうかについては、まだよくわかっていない。

環境への汚染

ダイオキシンは、廃棄物の焼却炉など、物を燃やすところから主に発生し、大気中に出ていく。大気中の粒子などにくっついたダイオキシンは、土壌に落ちてきたり、川に落ちてきたりして土壌や水を汚染する。さらにプランクトンや魚に食物連鎖も通して取り込まれていくことで、生物にも蓄積されていくと考えられている。 日本の大都市地域の大気中のダイオキシン濃度は平成8年度の環境庁調査では0.3~1.65pg/m3程度である。(1pg/m3とは、1立方メートルの空気中に1兆分の1gのダイオキシンがあることを意味する。)欧米の都市地域では0.1pg/m3程度なので、日本の都市はこれと比べればかなり高いと言える。

環境庁では、海、湖、川の底質、生物についてもこの10年間毎年調査をしているが、ダイオキシン濃度に大きな変化は認められていない。環境中から広範囲に検出されているので、引き続き調査をしていくことにしている。

一般環境中に放出されるダイオキシン類は大きく減少したが、過去に製造されたダイオキシン類は土壌や底質に蓄積されている。底質に蓄積されたダイオキシン類の本格的な処理が進展しておらず、早急な対応が求められていることを国土交通省が「底質ダイオキシン類対策の基本的考え方」で認めている。このように底質汚染対策が遅れているためダイオキシン類等の汚染物質は徐々に拡散しており、自然環境や水産に影響する範囲が拡大している。

含まれやすい食べ物

ダイオキシンは脂肪に溶けやすいので、脂肪分の多い魚、肉、乳製品、卵などに含まれやすくなっている。食生活の違いから、日本では魚から、欧米では肉などからの取り込み量が多くなっている。いずれの国でも、体への取り込み量の7~9割程度は魚、肉、乳製品、卵に由来しているようである。 野菜については、根から水を吸い上げることによってダイオキシンを濃縮することはあまり考えられないとされている。また、魚、肉などに比べれば、野菜から取り込まれるダイオキシンの比率は低いものと考えられる。 人へのダイオキシンの取り込みは、食習慣により異なってくる。米国環境保護庁は、「バランスのとれた栄養のある食事の利点は、それによるダイオキシンのリスクを補って余りあるということは強調されるべきである」とコメントしている。

ダイオキシンがひとたび体に入ると、その大部分は脂肪に蓄積されて体にとどまる。ごくわずかな量が、分解されたりして体の外に排出されるが、その速度は非常に遅く、人間の場合は半分の量になるのに約7年かかるとされている。

対策

一般環境中に放出されるダイオキシン類は大きく減少したが、過去に製造されたダイオキシン類は土壌や底質に蓄積されている。底質に蓄積されたダイオキシン類の本格的な処理が進展しておらず、早急な対応が求められていることを国土交通省が「底質ダイオキシン類対策の基本的考え方」で認めている。このように底質汚染対策が遅れているためダイオキシン類等の汚染物質は徐々に拡散しており、自然環境や水産に影響する範囲が拡大している。

環境省は土壌の環境基準(1,000pg-TEQ/g以下但し、250pg-TEQ/g以上の場合には、必要な調査を実施すること)を定めているが土壌汚染対策法の指定基準には定めが無い。なお、大阪府等の自治体は独自に条例を設けてダイオキシン類の調査・対策の手順を定めている。 ダイオキシン類は、木材などに含まれるリグニンという成分と分子構造が似ている。このため、リグニンを分解する酵素群を持つ白色腐朽菌等を使用してダイオキシン類に汚染された土壌を浄化するバイオレメディエーション技術が研究されている。

ダイオキシン類は河川や港湾の底質に多く蓄積されており、アナゴなどの水底で棲む魚介類のダイオキシン類濃度が高いことを農林水産省等が発表している。また環境省は底質暫定除去基準値以上のPCBを含む底質を除去するように政令で通達している。また、底質ダイオキシン類の環境基準(150pg-TEQ/g)を定めており、環境基準を超過する底質は、可及的速やかに対策を講じることが行政の目標である。


参考資料

wikipedia

環境省


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