海ゴミ

出典: Jinkawiki

(版間での差分)
2009年8月5日 (水) 02:19の版
Bunkyo-studen2008 (ノート | 投稿記録)

← 前の差分へ
最新版
Bunkyo-studen2008 (ノート | 投稿記録)

1 行 1 行
== 海ゴミの現状 == == 海ゴミの現状 ==
環境省の発表によれば、産業廃棄物の不法投棄は2004年度の数字で、都道府県と保健所設置市が把握しているだけで673件、41.1万トンが記録されている。また警察庁のデータでは、2005年における廃棄物関連の犯罪は検挙事件数4123件、検挙人員5728人、検挙法人数527社にのぼる。 環境省の発表によれば、産業廃棄物の不法投棄は2004年度の数字で、都道府県と保健所設置市が把握しているだけで673件、41.1万トンが記録されている。また警察庁のデータでは、2005年における廃棄物関連の犯罪は検挙事件数4123件、検挙人員5728人、検挙法人数527社にのぼる。
-さらに、ゴミが海上で船舶から投棄される場合もある。これは、国際条約でも多くが禁止されてる行為だが、隠れておこなっている船も少なくない。漂着するゴミは主にペレット、ポリ袋、発泡スチロール、ペットボトル、たばこの吸い殻とフィルター、コンビニなどの袋、紙くず、プラスチック製品、缶、弁当やカップッメンの容器となっている。また粗大ゴミも回収されている。海面付近を漂うゴミは、実は多くの部分が海底に沈んでいくと推測されている。海水よりも比重が大きいゴミは波にもまれながらも最終的には海底に沈んでいく。そのため、海中や海底には多数のゴミが存在していて、深海探査船のしんかい6500による調査では、推進6000メートル以上の深さの海底からもマネキンの首やプラスチック製のバッグなどが見つかっている。+さらに、ゴミが海上で船舶から投棄される場合もある。これは、国際条約でも多くが禁止されてる行為だが、隠れておこなっている船も少なくない。漂着するゴミは主にペレット、ポリ袋、発泡スチロール、ペットボトル、たばこの吸い殻とフィルター、コンビニなどの袋、紙くず、プラスチック製品、缶、弁当やカップッメンの容器となっている。また粗大ゴミも回収されている。海面付近を漂うゴミは、実は多くの部分が海底に沈んでいくと推測されている。海水よりも比重が大きいゴミは波にもまれながらも最終的には海底に沈んでいく。そのため、海中や海底には多数のゴミが存在していて、深海探査船のしんかい6500による調査では、水深6000メートル以上の深さの海底からもマネキンの首やプラスチック製のバッグなどが見つかっている。
 + 
 +== 海洋生態の危機 ==
 +海中を漂う漁網は魚や海洋性哺乳類の大敵である。例えば、世界中の海で漁網の切れ端やロープが首にからみついたアザラシやオットセイが目撃されている。自らはずすことは不可能で、からみついた漁網によって身動きがとれなくなることは、生命の危機に直結する。哺乳類の場合子どもは特に好奇心が強く、こうした被害にあいやすいと言われている。さらにこの状態では動き回るだけで急速に体力を消耗することになり、やがては力尽きてしまう。
 + 
 +その他にもプラスチックの誤飲、環境ホルモンが吸着したプラスチック片などがあげられる。いまや世界中の海からプラスチック片が発見されていて、アメリカの環境NGOがおこなった調査でも、北太平洋の広範な海域に多くのプラスチック片が存在していることがわかった。合計約100キロメートルにわたって調査船がネットを曳網したところ、採取されたプランクトンの量が450グラム程度だったのに対して、プラスチック片は約2700グラムも採取された。この二つの重量を単純に比較するわけにはいかないが、それでも、食物連鎖の下層部にいるプランクトンよりもプラスチックの方が多く存在しているということは、海がプラスチック片に汚染されているといえる。こうした微細なプラスチックは海鳥や魚によって誤飲され、多くの被害をもたらしている。プラスチック片は波によって砕かれ小さくなって漂うため、海洋生物にはあたかも海上を浮遊する小型生物のようにみえる。「世界環境デー」に向けた声明のなかで、国連事務総長は、海洋の投棄ゴミが毎年100万羽以上にものぼる海鳥と約10万匹の海洋性哺乳類やウミガメなどの生命を奪っていると述べ、国際社会の注意を喚起している。
 + 
 +次に、プラスチック片に吸着している海水中の環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)があげられる。環境ホルモンは、生物の体内に取り込まれると、あたかもホルモンのように作用することで、その生物の代謝のバランスを崩し、例えばオスの生殖機能が衰えるといった現象を誘発する物質である。さらに免疫力の低下、発育障害、肝臓障害、奇形などの原因になることが知られていて、発ガン性もある。
 + 
 +== 解決策 ==
 +一番重要となってくるのは、市民・行政・研究者・産業界など、かかわるすべての主体の連携である。現段階で、全国の海岸の漂着ゴミに関してもっとも多くの情報を集めてきたのは市民と研究者であり、行政よりも一日の長がある。したがって、市民や研究者が収集し分析したゴミのデータや各地の実情を、行政に情報提供し、さらに現地で必要とされているさまざまなニーズをも伝えていくこと。そしてこれらを糸口に市民・研究者と行政が共同で政策を立案し実行すること。こうした各主体間の連携こそ、緊急性を増す漂流・漂着ゴミ対策の方向性として求められている。
 + 
 + 
 +== 参考文献 ==
 +『海ゴミ 拡大する地球環境汚染』 小島あずさ・眞淳平 中公新書 2007年

最新版

目次

海ゴミの現状

環境省の発表によれば、産業廃棄物の不法投棄は2004年度の数字で、都道府県と保健所設置市が把握しているだけで673件、41.1万トンが記録されている。また警察庁のデータでは、2005年における廃棄物関連の犯罪は検挙事件数4123件、検挙人員5728人、検挙法人数527社にのぼる。 さらに、ゴミが海上で船舶から投棄される場合もある。これは、国際条約でも多くが禁止されてる行為だが、隠れておこなっている船も少なくない。漂着するゴミは主にペレット、ポリ袋、発泡スチロール、ペットボトル、たばこの吸い殻とフィルター、コンビニなどの袋、紙くず、プラスチック製品、缶、弁当やカップッメンの容器となっている。また粗大ゴミも回収されている。海面付近を漂うゴミは、実は多くの部分が海底に沈んでいくと推測されている。海水よりも比重が大きいゴミは波にもまれながらも最終的には海底に沈んでいく。そのため、海中や海底には多数のゴミが存在していて、深海探査船のしんかい6500による調査では、水深6000メートル以上の深さの海底からもマネキンの首やプラスチック製のバッグなどが見つかっている。

海洋生態の危機

海中を漂う漁網は魚や海洋性哺乳類の大敵である。例えば、世界中の海で漁網の切れ端やロープが首にからみついたアザラシやオットセイが目撃されている。自らはずすことは不可能で、からみついた漁網によって身動きがとれなくなることは、生命の危機に直結する。哺乳類の場合子どもは特に好奇心が強く、こうした被害にあいやすいと言われている。さらにこの状態では動き回るだけで急速に体力を消耗することになり、やがては力尽きてしまう。

その他にもプラスチックの誤飲、環境ホルモンが吸着したプラスチック片などがあげられる。いまや世界中の海からプラスチック片が発見されていて、アメリカの環境NGOがおこなった調査でも、北太平洋の広範な海域に多くのプラスチック片が存在していることがわかった。合計約100キロメートルにわたって調査船がネットを曳網したところ、採取されたプランクトンの量が450グラム程度だったのに対して、プラスチック片は約2700グラムも採取された。この二つの重量を単純に比較するわけにはいかないが、それでも、食物連鎖の下層部にいるプランクトンよりもプラスチックの方が多く存在しているということは、海がプラスチック片に汚染されているといえる。こうした微細なプラスチックは海鳥や魚によって誤飲され、多くの被害をもたらしている。プラスチック片は波によって砕かれ小さくなって漂うため、海洋生物にはあたかも海上を浮遊する小型生物のようにみえる。「世界環境デー」に向けた声明のなかで、国連事務総長は、海洋の投棄ゴミが毎年100万羽以上にものぼる海鳥と約10万匹の海洋性哺乳類やウミガメなどの生命を奪っていると述べ、国際社会の注意を喚起している。

次に、プラスチック片に吸着している海水中の環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)があげられる。環境ホルモンは、生物の体内に取り込まれると、あたかもホルモンのように作用することで、その生物の代謝のバランスを崩し、例えばオスの生殖機能が衰えるといった現象を誘発する物質である。さらに免疫力の低下、発育障害、肝臓障害、奇形などの原因になることが知られていて、発ガン性もある。

解決策

一番重要となってくるのは、市民・行政・研究者・産業界など、かかわるすべての主体の連携である。現段階で、全国の海岸の漂着ゴミに関してもっとも多くの情報を集めてきたのは市民と研究者であり、行政よりも一日の長がある。したがって、市民や研究者が収集し分析したゴミのデータや各地の実情を、行政に情報提供し、さらに現地で必要とされているさまざまなニーズをも伝えていくこと。そしてこれらを糸口に市民・研究者と行政が共同で政策を立案し実行すること。こうした各主体間の連携こそ、緊急性を増す漂流・漂着ゴミ対策の方向性として求められている。


参考文献

『海ゴミ 拡大する地球環境汚染』 小島あずさ・眞淳平 中公新書 2007年


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成