正倉院

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米田雄介・樫山和民 1999年 「正倉院学ノート」 朝日新聞社 米田雄介・樫山和民 1999年 「正倉院学ノート」 朝日新聞社
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目次

正倉院(しょうそういん)

奈良市東大寺大仏殿の西北に位置する天平時代に建造された高床式宝庫。

現在は宮内庁正倉院事務所が管理しており、東大寺の建造物とともに1998年12月に世界文化遺産に登録された。 毎年秋に行われる宝物の調査・点検に際しては、正倉院宝庫の勅封が解かれ、正倉院展として中に収められている宝物が一般公開されている。

正倉院の由来

正倉院における「正倉」とは元々米穀その他、重要なものを収納する倉の名称で、正倉院とはそのような倉の立ち並ぶ一画のことであり、当時の中央政府の大蔵省や民部省、地方の国や郡、さらには東大寺や興福寺のような大寺には、このような正倉・正倉院が置かれていたと考えられる。しかし、時代が降るに従って、東大寺の正倉院・正倉のみが残り、あたかも固有名詞のようになってまったといわれている。

成立

現在のところ、正倉院がいつ成立したのかを示す確実な文献は見つかっていない。しかしながら、正倉院が8世紀半ばにはすでに存在していたことを示す文献はいくつか存在している。  正倉院宝物においては756年(天平勝宝八歳)に光明皇后が聖武天皇の七七忌に、天皇遺愛の品650点、薬物60種余りを国家鎮護の総国分寺である東大寺本尊の盧舎那仏(大仏)に奉献したのが最初の記録として残っている。それ以降5度にわたって献納された宝物は、いずれも献納の目録を伴っている。この目録は、現存の宝物がいつごろ作られたのか、どの時期に用いられていたのかについて知ることのできる貴重な資料とされており、これら5通の目録は一括して「東大寺献物帳」と呼ばれている。  正倉院に献納されている宝物は、その全てが、その後、宝庫の中にいつまでも保存されていたわけではなく、何度となく倉から持ち出され、ついには返却されなかったものもいくつかある。例えば、764年(天平宝字三)に起こった恵美押勝(藤原仲麻呂)の乱の際には、正倉院から大量の武器が持ち出されている。


構造

正倉院は南北33メートル、東西9.4メートル、高さ14メートル、床下2.7メートルで、寄棟造りの一棟である。寄棟造りとは、屋根の形式の一つで、屋根の頂上部の水平な棟の両端から四隅に降っていく棟のあるであり、東大寺大仏殿も寄棟造りである。 建築の内部は3室に分かれ、各室独立していることから北から順に北倉・中倉・南倉と呼ばれている。北倉と南倉は校木(あぜぎ)を組み合わせた校倉の形式で、中倉は板倉である。 校倉とは三角材の両端を直角に組み立て壁とした倉、板倉とは板を組んで壁としている倉であり、正倉院は校倉と板倉を組み合わせた建築物となっている。 もともと正倉院は、北倉と南倉の2つの校倉を一棟とする双倉(ならびくら)の形式であったが、この双倉が造られてまもなく、双倉の間の東西を板で囲って板倉とし、現在みられるような一棟三倉の形式となった。聖武天皇遺愛の品は主に北倉に収められていた。

宝物の特色

正倉院に収められている宝物の特色として際立つのは、それらのもつ国際性といえる。奈良時代文化の粋を集めた正倉院ではあるが、正倉院宝物の中には、中国・朝鮮などの東アジアの近隣諸国から伝わったものはもとより、中央アジアの国や地域から、シルクロードを経て日本にもたらされた宝物も少なくない。また宝物自体は日本で作られたものであっても、意匠や技法がそれらの地方から伝わったものもあったと思われる。このような点から正倉院宝庫はシルクロードの終着点と言われている。


東大寺献物帳 (一覧)

・「国家珍宝帳」(756年)

・「種々薬帳」(756年)

・「屏風花氈等帳(びょうぶかせんとうちょう)」(756年)

・「大小王真跡帳」(758年)

・「藤原公真跡屏風帳」(758年)


代表的な宝物

・螺鈿紫檀琵琶(らでんしたんのびわ)

・鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)

・漆胡瓶(しっこへい)

・平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいはっかくきょう)


参考文献

米田雄介 1998年 「正倉院と日本文化」 吉川弘文館

米田雄介・樫山和民 1999年 「正倉院学ノート」 朝日新聞社

ハンドル名:OMUSUBI


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