置き薬
出典: Jinkawiki
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概要
置き薬は、薬事法での正式な名称は「配置家庭薬」という。以前は「売薬」といわれていたが、昭和18年の薬事法で「売薬」という言葉が廃止され、今日では配置家庭薬と呼ばれている。配置家庭薬は人間の生命や健康に重大な関係を有するため、薬事法では厳しく制限されている。販売方法は、配置家庭薬販売業の許可を得た販売業者や配置員が直接、消費者の家庭を訪問し、薬をあらかじめ消費者に預け、次回、訪問したときに消費者が服用した分だけの代金を集めていくというもの。法律的には「配置家庭薬」だが、一般には販売の形態をそのまま表現して「置き薬」と呼ばれている。
発祥
越中富山藩の二代目藩主・前田正甫は、質実剛健を尊び自らも薬の調合を行うという名君だった。1690年(元禄3年)正甫が参勤交代で江戸城に登城したおり、福島の岩代三春城主・秋田河内守が腹痛を起こし苦しむのを見て、自分の印籠から「反魂丹」を取り出して飲ませたところ、たちまち平癒した。この光景を目の当たりにした諸国の藩主たちは、その薬効に驚き、各自の領内で「反魂丹」を売り広めてくれるよう正甫に依頼した。この出来ごとが「置き薬」(配置販売業)の発祥とされている。
先用後利
正甫は、領地から出て全国どこででも商売ができるよう「他領商売勝手」を発布。同時に富山城下の薬種商・松井屋源右衛門に薬を調製させ、八重崎屋源六に依頼して諸国を行商させた。源六は、「用を先に利を後にせよ」という正甫の精神に従い、良家の子弟の中から身体強健、品行方正な者を選び、各地の大庄屋を巡ってくすりを配置させた。そして、毎年周期的に巡回して未使用の残品を引き取り、新品と置き換え、服用した薬に対してのみ謝礼金を受け取ることにした。こうして、現在のクレジットとリース制を一緒にしたような「先用後利」の画期的な販売システムが登場した。
種類
現在「置き薬」として使用されている薬の種類は、約5,000品目。それらを大別すると、口から飲む内用薬(内服薬)と、口以外のところから吸収する外用薬に分けることができる。内用薬には、病気によって溶ける時間や溶け方がちゃんと調節されている「丸剤」「錠剤」「カプセル」などのほか、すぐに溶けて吸収されやすい「粉薬」、なめることで口やノドの粘膜に効く「トローチ」、甘くて飲みやすい「水薬」などがあり、風邪、腹痛、頭痛などの症状に合わせた調合がされている。また、外用薬には、「目薬」「点鼻薬」「消毒薬」「うがい薬」「はり薬」「ぬり薬」などの他、肛門から挿入して町の粘膜や毛細血管に吸収させる「座薬」、あるいは傷口に直接貼る「絆創膏」などがある。こうした数々の薬の多くは、利用者のニーズを正確に察知し、いち早く対応することができる「置き薬」のシステムの中から生まれている。
参考・引用
『富山の薬売り』 遠藤和子著 サイマル出版会出版
全国配置家庭薬協会 http://www.zenhaikyo.com/