ベルギー

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 松尾秀哉 2010『ベルギー分裂危機 その政治的期限』 明石書店  松尾秀哉 2010『ベルギー分裂危機 その政治的期限』 明石書店
- 浜島晃編 2014『最新図説 政経』 浜島書店+ ベルギー基礎データ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/belgium/data.html
 羽場久美子編 2013『EU(欧州連合を知るための63章』明石書店  羽場久美子編 2013『EU(欧州連合を知るための63章』明石書店
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ベルギー

 国土を二分する二つの言語集団(北部フランデレンのオランダ語と南部ワロニーのフランス語)を抱えるベルギーは、強い国民意識不在のまま安定した民主制を確立してきた。20世紀の終わりには連邦制への移行を果たし、多様性と政治統合の両立を模索している。この経緯から、ヨーロッパ統合の中心地にある小国は「国民国家」の相対化を先取りする、多層化した国家であると評価される。しかし地方では、長年の安定を作り出した政治的調整の問題点が蓄積し、今日のベルギー政府はその当時能力を著しく低下させている。


主要データ

・総面積  30,528平方キロメートル

・人口   1億1240万人

・首都   ブリュッセル

・言語   オランダ語、フランス語、ドイツ語

・GDP   5,346.72億ドル

・一人あたりのGDP  47,721.59ドル

国民のアイデンティティ

   ベルギーでは建国以来、そもそも”ベルギー人”は存在するのかが絶えず問われてきた。農村社会フランデレンと、工業地域ワロニー、国際都市ブリュッセルは、固有の社会構造を持っており、住民のメンタリティも異なっていた。第二次世界大戦後の政治過程では、様々な問題がフロームス人とワローン人の相違から生まれる対立として取り上げられる傾向があった。しかし国民の多くは自分たちの住む市町村などいくつものアイデンティティを抱えていると考えており、ベルギー国家の分裂は現実的な議論ではなかった。

 しかし、ベルギーのナショナリズムとしてメディアは言語別に編成されており、異なる言語集団や地域の情報が伝わる機会は少なく全国民が同一の経験を共有することで生まれる国民としての一体感は育ちにくい。互いの生活や考え方には基本的な無関心であり、言語・地域対立として政治問題化する際には、相対する集団への敵対意識がかき立てられる傾向にある。

 1990年代には外国人移民の増加、EUの進展や国際的テロリズムの拡大により、伝統的に民族意識が強いフランデレンを中心に異文化への排他的対応が問題になっている。移民政策がEUレベルで統一される中で、とくに非ヨーロッパ系移民に向けられる国内の不満をどのように緩和し社会統合を実現していくかが新たに問われている。


参考文献  松尾秀哉 2010『ベルギー分裂危機 その政治的期限』 明石書店

 ベルギー基礎データ http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/belgium/data.html

 羽場久美子編 2013『EU(欧州連合を知るための63章』明石書店

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