グローバリゼーション10
出典: Jinkawiki
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国家と国家の間で生じる現象を指すことば。 | 国家と国家の間で生じる現象を指すことば。 | ||
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グローバリゼーションは、国家間以上に地球規模で生じる現象を指すため、こちらのが範囲が広い。 | グローバリゼーションは、国家間以上に地球規模で生じる現象を指すため、こちらのが範囲が広い。 | ||
==経済活動とグローバリゼーション== | ==経済活動とグローバリゼーション== |
最新版
人類の活動とその影響が、国家や地域の境界を超えて広がり、地球規模で一体化していく現象のこと。地球(globe)からできたことばで、「グローバル化」ともよばれ、「地球規模化」または「地球一体化」と訳される。政治・文化・経済・環境問題などの活動でみられる。
目次 |
類義語
「インターナショナリゼーション」(国際化)
国家と国家の間で生じる現象を指すことば。
グローバリゼーションは、国家間以上に地球規模で生じる現象を指すため、こちらのが範囲が広い。
経済活動とグローバリゼーション
経済におけるグローバリゼーションの意義
経済活動において、グローバリゼーションの意味は、「輸送コストの低下、関税や商慣行といった貿易障壁の低下や撤廃、情報通信技術の発達に伴う円滑でリアルタイムなコミュニケーション手段の普及、国際的な資金フローの活発化、人口移動圧力の高まりなどによって、地球上に存在する様々な経済、産業、社会が、空間的な距離を超えて相互に密接に結びつこうとする動き」といえる。また、捉えうる側面として、貿易取引・労働移動・金融取引の3つがある。
歴史
グローバリゼーションの起源は15世紀半ばの大航海時代まで遡る。小国ポルトガルが国家を挙げてアフリカの金と奴隷を求めて始めた新世界への船出は、コロンブスによる北大陸発見(1492年)やバスコ・ダ・ガマによるインド洋航路発見(1498年)などにつながり、15世紀から17世紀にかけて世界は「大航海時代」に呼ばれる時代を迎えるようになった。大航海時代により、ヨーロッパ諸国は植民地を世界各地に作り始め、ヨーロッパの政治体制や経済体制の「グローバリゼーション」が始まり、物流の「グローバリゼーション」が起こった。しかし、必要な経済や技術面での基盤が依然として脆弱であったことから、グローバリゼーションの進展具合は、その後18世紀にかけても緩慢なものにとどまった。Estevadeodal,Frantz and Taylor(2003)は、1800年頃の世界輸出比率(対GDP比)について、「かなりの不確かさが残るものの、2%程度の小さなものだったろう」と指摘している。
19世紀に入って、グローバリゼーションは急激に進展した。ナポレオン戦争(1803年~1813年)による国民国家の形成、その終結後1870年までの欧州における重商主義から自由貿易思想への転換などが要因である。この自由貿易思想への転換は英国穀物法廃止(1846年)、同航海条例廃止(1849年)、英仏通商条約(コブデン=シュバリエ条約)の締結(1860年)に見られる。その後の欧州主要国間での同様な通商条約の締結にとって、貿易自由化が諸外国の間に広がっていった。また、国際通貨システムとしての金本位制(英国貨幣法 1816年)の採用が各国で成され、国際的な決済が円滑化されたことや、英国の産業革命で輸送コストが低下したことも大きな要因である。 ところが第一次世界大戦(1914年~1918年)を迎え、グローバリゼーションは一時後退した。関税や輸入割当などの貿易障壁、輸送コストの低下の滞り、金本位制の崩壊により、金融面からの衰退を招いた。
第二次世界大戦終結後、現代の「グローバリゼーション」が始まる。国際通貨基金(IMF、1945年)の設立や「貿易と関税に関する一般協定」(GATT、1948年)の成立がグローバリゼーションを推し進める制度的基盤となった。IMFは為替制限の撤廃と為替相場の安定を通じた国際的決済の円滑化を図った。またGATTは①関税その他の貿易障害の実質的な軽減、②国際通商における差別待遇の廃止。③各国間相互に利益を傍受しコストを負担、という三原則に基づくルールの策定で、貿易拡大を推し進めた。 1970年代から国際決済が急速にオンライン・グローバル化し、ここで「グローバリゼーション」という語がつかわれるようになった。
現代
グローバリゼーションは進んでいる状況で、かつてないほど多くの人々が国境を越えて消費や生産活動に参画している。企業は賃金水準や需要の為に世界進出していたが、Sun Microsystems社の社長Scott McNealyによれば、今や優秀な能力を持つ人材を求めている点も指摘される。 しかし、国別に見たグローバリゼーションの進展度合いは必ずしも均等ではないといえる。各国の法制度や慣行、文化などにグローバリゼーションに対する防波堤・障害として存在しているものも見られるからだ。
グローバリゼーションをめぐる議論
グローバリゼーションに対しては肯定的見解がなされてきた一方で、批判的見解も多く出されている。グローバリゼーションに批判的立場を、反グローバリゼーション・脱グローバリゼーションという。 肯定的見解として
- 国際的分業が進展し、最適の国・場所において生産活動が行われることにより、効率的な、低コストでの生産が可能となり、物の物価が低下して社会が豊かになる。
- 投資活動において、多くの選択肢から最も良いものを選択することができ、企業・個人のニーズに応じた効率的な投資が可能となる。
- 環境問題や不況・貧困・金融危機などの大きな経済上の問題、人権問題などの解決には、国際的な取り組みが必要でありこれらに対する関心を高め、各国の協力、問題の解決を促す可能性がある。
否定的見解としては
- 安い輸入品の増加や多国籍企業の進出などで競争が激化すると、競争に負けた国内産業は衰退し、労働者の賃金の低下や失業がもたらされる。
- 投機資金の短期間での流入・流出によって、為替市場や株式市場が混乱し、経済に悪影響を与える。
- 他国・他地域の企業の進出や、投資家による投資によって、国内・地域内で得られた利益が他地域・国外へと流出する。
などが挙げられる。
グローバリゼーションと経済格差
経済面において、グローバリゼーションによる経済統合は貧困さを縮小する利点があるといわれている。経済学者ジェフリー・サックスは「グローバリゼーションは、貧困問題の解決に役立ってきた」と指摘している。サックスは、富は誰かが大きな富を得たからといって貧しい者がより貧しくなるわけではなく、むしろグローバリゼーションが貧困解消の一助となっているとしている。サックスは著書『貧困の終焉』で「グローバリゼーションが、インドの極貧人口を2億人、中国では3億人減らした。多国籍企業に搾取されるどころか、急速な経済成長を遂げた」と指摘した。
しかし、グローバリゼーションは「平均的」には貧困層1人あたりの所得を増大させているが、国家間の「ばらつき」は大きく、もし世界を1国として捉えると国際経済統合は主に富裕層に対して便益を生み、(相対的)貧困層の受益は確認されがたい、とする否定的見解もある。(大坪滋 2011)また、企業が海外進出していくにつれて雇用が外国人にとられてしまうため、国内で経済格差が生じ問題となっている。
各国民の見解
Gallup International(2006)は、グローバリゼーションに対する人々の反応について、「貧しい国ほど、自国にとって国際経済統合の恩恵が得られると考えており、豊かな国ではむしろグローバリゼーションに伴うコストにより大きな関心が向かっている」と指摘している。実際の世論調査において、「グローバリゼーションは自国にとって良いことだ」と考える人々の割合が最も高い地域は、アフリカ地域(71%)、アジア・太平洋地域(52%)である。アジア・太平洋の内でグローバリゼーションを肯定的に捉えているのは、台湾(78%)、ベトナム(75%)である。一方、西ヨーロッパ地域(28%)や東・中央ヨーロッパ地域(21%)ではグローバリゼーションに対する評価が低い。加えて2006年3月~5月にかけて実施された欧州委員会の世論調査(European Commission 2007)によれば、加盟国25ヵ国のうち「グローバリゼーション」という言葉に対して消極的な印象を抱く割合は44%、積極的な印象を抱く割合は41%で、わずかに消極的な印象を抱く人が上回った。先進国多数の人々がグローバリゼーションに懐疑的である。
ところで、中国に対して米国民に行った意識調査で、「中国が経済大国として成長することは米経済にとってプラスかマイナスか」という問いに対し、「プラス」が48%・「マイナス」が46%であった。(Gallup 2005)「中国は経済的脅威か」という問いに対しては、64%が「脅威だ」と答えている。また、日本の外務省が行った世論調査によれば、中国からの輸入急増が予想される中で「日中双方は、節度ある貿易を心がけ、そのために協力すべし」と回答したのは40.5%と一番多かったが、二番目が「日本の生産者に大きな打撃となるので輸入を制限すべき」と回答した人で23.6%であった。(外務省 2002)このように、中国に対して先進国民は慎重になっている。
参考文献
日本大百科全書(ニッポニカ)
[「グローバル化と労働市場~歴史、理論、実証研究のサーベイ~」]小野亮(経済調査部 シニアエコノミスト)みずほ総研編集 2007
[JB PRESS『グローバル化でなぜ格差は拡大するのか』]
[国際開発・協力の中核的学際研究プロジェクト展開]大坪滋 名古屋大学大学院国際開発研究科