東海大学医学部付属病院事件2
出典: Jinkawiki
2008年7月19日 (土) 21:10の版 Bunkyo-student2008 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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1991年4月。神奈川県伊勢原市の東海大医学部付属病院で、医師が末期癌の58歳男性患者に塩化カリウムを注射して死亡させ、殺人罪に問われた。医師が被告となる「安楽死」裁判は、日本では初めてであった。
事件当時、患者は癌の一種の多発性骨髄腫でこん睡状態であった。介護していた妻や長男はもうやるだけのことはやったので、このまま苦しむ姿を見ていられないと医師に点滴やカテーテルを抜き、死なせるよう求めた。治療をやめるのは、患者の命を自由にすることで勝手すぎるのではないか、と医師は抵抗したが、もう十分考え話し合って決めたことだという家族の要請を断り切れずに、カテーテルを抜いた。
だが、患者は今度はいびきをかくような大きい呼吸をし始めた。動揺した長男はいびきを聞いているのが辛いから楽にしてやってくれ、と厳しい調子で医師に迫った。医師は追い詰められたような心境になり、病室で長男の目の前で塩化カリウム20ミリリットルを注射し、患者を急性高カリウム血症で心肺停止させて死なせた。その後、殺人罪で起訴された。
裁判で検察側は、本人の安楽死に対する意思表明がなく、こん睡状態で患者が苦痛を感じておらず、さらに急激な心停止を招く塩化カリウム投与は「穏やかな死」とはほぼ遠いとして、懲役3年を求刑。弁護側は「家族の要請を本人意思と推測できる」として無罪を主張し、正面から争った。
横浜地裁判決は、医師が患者に致死薬を投与する「積極的安楽死」には、「患者本人による意思表示」が前提となるとした上で、
①患者に耐え難い苦痛がある
②死が避けられず死期が迫っている
③肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし、他に代替手段がない
④患者が意思を表明
という安楽死容認の新4要件を提示した。この事件で患者は安楽死要請はしておらず、こん睡し「耐え難い苦痛」を感じられる状態ではなかったため、判決は、「要請は満たされていない」と指摘。懲役2年、執行猶予2年の有罪となった。