ちびくろサンボ問題

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2008年7月31日 (木) 20:18の版
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【絵本「ちびくろサンボ」について】 【絵本「ちびくろサンボ」について】
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 「ちびくろサンボ」はイギリス人、ヘレン・バンナーマン夫人(1863-1946)がインドに滞在していた時、イギリスで暮らす2人の娘のために手作りした絵本で、1899年バンナーマン自身のさし絵による初版がイギリスで出版されて以来世界各国で翻訳、出版されてきた。  「ちびくろサンボ」はイギリス人、ヘレン・バンナーマン夫人(1863-1946)がインドに滞在していた時、イギリスで暮らす2人の娘のために手作りした絵本で、1899年バンナーマン自身のさし絵による初版がイギリスで出版されて以来世界各国で翻訳、出版されてきた。
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【問題の発端と経過】 【問題の発端と経過】
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 「ちびくろサンボ」が差別図書として問題となったのは1952年ニューヨーク、1956年カナダのトロントで、いずれも学校からの追放運動が起きている。60年代~70年代にかけて公民権運動が盛んになるにつれ、アメリカ・カナダの学校や公共図書館から「ちびくろサンボ」が黒人差別を助長する図書として追放を要求する運動も活発化した。  「ちびくろサンボ」が差別図書として問題となったのは1952年ニューヨーク、1956年カナダのトロントで、いずれも学校からの追放運動が起きている。60年代~70年代にかけて公民権運動が盛んになるにつれ、アメリカ・カナダの学校や公共図書館から「ちびくろサンボ」が黒人差別を助長する図書として追放を要求する運動も活発化した。
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【問題点】 【問題点】
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1.「サンボ」という言葉 1.「サンボ」という言葉
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 作品の中の男の子の名前「サンボ」がアメリカ合衆国における黒人に対する蔑称と共通している。アメリカで黒人を侮蔑するときに使われる「サンボ」という言葉と「ちびくろサンボ」の主人公の「サンボ」という名前は、どちらも、スペイン語のZAMBO=「猿」、「がにまた」をその語源とした、同じ意味を持つ言葉なのである。また「サンボ」の両親の「マンボ」「ジャンボ」という名前を続けて読むと、アメリカでは「ちんぷんかんぷん」といった意味になるということも絶版の理由の1つとなった。  作品の中の男の子の名前「サンボ」がアメリカ合衆国における黒人に対する蔑称と共通している。アメリカで黒人を侮蔑するときに使われる「サンボ」という言葉と「ちびくろサンボ」の主人公の「サンボ」という名前は、どちらも、スペイン語のZAMBO=「猿」、「がにまた」をその語源とした、同じ意味を持つ言葉なのである。また「サンボ」の両親の「マンボ」「ジャンボ」という名前を続けて読むと、アメリカでは「ちんぷんかんぷん」といった意味になるということも絶版の理由の1つとなった。
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2.作品の評価 2.作品の評価
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 「ちびくろサンボ」はストーリー、絵ともに黒人の否定的類型を描いており、子供たちにすすめる児童文学作品としては不適応であるという評価がある。  「ちびくろサンボ」はストーリー、絵ともに黒人の否定的類型を描いており、子供たちにすすめる児童文学作品としては不適応であるという評価がある。
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 そう考えると、この「ちびくろサンボ」は  そう考えると、この「ちびくろサンボ」は
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・そもそも差別的であったのか ・そもそも差別的であったのか
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・差別とした場合、出版の自由・アクセスの自由はどうなるのか等の問題が出てくる。 ・差別とした場合、出版の自由・アクセスの自由はどうなるのか等の問題が出てくる。
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 +(参考文献)
 +「ちびくろサンボ」問題を考える シンポジウム記録
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 +編:日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会関東地区小委員会
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 +「ちびくろサンボ」絶版を考える(径書房)  編:径書房

2008年7月31日 (木) 20:22の版

【絵本「ちびくろサンボ」について】

   「ちびくろサンボ」はイギリス人、ヘレン・バンナーマン夫人(1863-1946)がインドに滞在していた時、イギリスで暮らす2人の娘のために手作りした絵本で、1899年バンナーマン自身のさし絵による初版がイギリスで出版されて以来世界各国で翻訳、出版されてきた。  日本では、フランク・ドビアスの絵によるマクラミン社版(アメリカでは現在絶版になっている)を原本とした岩波版『ちびくろサンボ』(フランク・ドビアス絵 光吉夏弥訳 1953)が代表的な版とされているが、その他に20数社や約50種の「ちびくろサンボ」が出版されており、部数は120万部にのぼったといわれている。


【問題の発端と経過】

   「ちびくろサンボ」が差別図書として問題となったのは1952年ニューヨーク、1956年カナダのトロントで、いずれも学校からの追放運動が起きている。60年代~70年代にかけて公民権運動が盛んになるにつれ、アメリカ・カナダの学校や公共図書館から「ちびくろサンボ」が黒人差別を助長する図書として追放を要求する運動も活発化した。  日本では、1973年に渡辺茂男氏が「『ちびくろさんぼ』の評価」を『子供の館』に発表し、翌1974年に『月刊絵本』の「特集・ちびくろさんぼ」で児童文学者の間で絵本としての評価と差別性についての論議が行われた。しかし、当時は出版界・図書界ではほとんどこの問題について論議されなかった。  その後、1988年7月22日、アメリカの『ワシントン・ポスト』紙が「昔の黒人のイメージが日本でよみがえる」という見出しで、黒人をモデルにしたマネキン人形や「人種差別の象徴のような」リトル・ブラック・サンボのキャラクター人形が日本で商品として出回っていることを非難した記事を写真入で掲載した。  その直後の7月24日、自民党の渡辺政調会長(当時)が自民党の軽井沢セミナーで、「アメリカの黒人は破産しても“アッケラカーのカー”だ」という趣旨の発言をしたことも同じく『ワシントン・ポスト』紙に報道され、8月2日、アメリカの黒人議員連盟は竹下首相(当時)宛に抗議文書を送った。日本企業は早速問題と指摘された商品の製造・販売を中止した。  こうした新聞報道をきっかけとして、児童図書「ちびくろサンボ」を出版してきた出版社が見直しを始め、12月に入って学習研究社・小学館・講談社の大手3社が「題名や内容が黒人への偏見をあおる」として自社版を絶版とし、これに続いて1953年に「岩波子どもの本」の第1巻として出版して以来、35年間にわたって50万部以上のロングセラーとなっていた岩波版「ちびくろサンボ」も絶版とされた。  これらの新聞報道をめぐり、新聞への読者の投書などで活発な論議が続いた。90年にわたって世界の子どもたちに読みつがれ、人気のある「ちびくろサンボ」が姿を消してしまうことを惜しむ擁護派と、何世紀にもわたって否定的類型や非人間的イメージと闘っている黒人への偏見を子供たちに植えつけ、育てるという反対論が見られた。


【問題点】


1.「サンボ」という言葉

   作品の中の男の子の名前「サンボ」がアメリカ合衆国における黒人に対する蔑称と共通している。アメリカで黒人を侮蔑するときに使われる「サンボ」という言葉と「ちびくろサンボ」の主人公の「サンボ」という名前は、どちらも、スペイン語のZAMBO=「猿」、「がにまた」をその語源とした、同じ意味を持つ言葉なのである。また「サンボ」の両親の「マンボ」「ジャンボ」という名前を続けて読むと、アメリカでは「ちんぷんかんぷん」といった意味になるということも絶版の理由の1つとなった。  

2.作品の評価

   「ちびくろサンボ」はストーリー、絵ともに黒人の否定的類型を描いており、子供たちにすすめる児童文学作品としては不適応であるという評価がある。


   しかし、これらの問題に関しては異なる意見もある。  1については、インドには「サンボ」という名前のシェルパ族が居て、シェルパ語では、サンボ=優秀な、マンボ=沢山の、ジャンボ=大世界という意味であるという。また、シェルパ語はチベットの方言の1つで、チベット語のもっともスタンダードな方言であるラッサ語にも片仮名で書けば、「サンボ(良い)」「マンボ(たくさんの)」「ジャンボ(やわらかい・やさしい)」となるような形容詞があるという。  2については、もともと「ちびくろサンボ」の主人公である「サンボ」は黒人ではなくインド人がモチーフであって、原画ではシャツを着た子供が描かれている。また、話に出てくる「トラ」はアフリカには居ない。しかし、日本では、「ちびくろサンボ」が裸のアフリカ原住民を象徴するような絵で書かれていることが多く、それが黒人を象徴しているといわれる。ただ、これには日本人が黒人に対して差別感情をそこまで強く持っていないことが背景にあるとされる。その表れとして、上でも述べたように日本では黒人のグッズが流行していた。

   そう考えると、この「ちびくろサンボ」は


・そもそも差別的であったのか

・差別とした場合、出版の自由・アクセスの自由はどうなるのか等の問題が出てくる。


(参考文献) 「ちびくろサンボ」問題を考える シンポジウム記録

編:日本図書館協会図書館の自由に関する調査委員会関東地区小委員会


「ちびくろサンボ」絶版を考える(径書房)  編:径書房


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