フレネの自由教育
出典: Jinkawiki
2009年1月24日 (土) 11:06の版 Bunkyo-student2008 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
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フレネ学校
フレネ学校は南仏の一小学校教師であったセレスタン・フレネ(1896-1966)が1935年につくった学校である。フレネは第一次世界大戦に従軍して負傷し、肺と喉に障害を残した。バール・シュール・ルーという山間の小学校の教員となったが、体力が弱まり、大声のさせないフレネが前にしたのは、伝統的な教育に興味を示さない農民の子どもたちであった。フレネはそこでさまざまな工夫を強いられ、それにより新しい教育法を編み出していった。しかし、公教育の内部では誤解や無理解にあい、苦難の末に当時は人里離れたピウリエの緑の丘に土地を求め、フレネ学校を開いた。
フレネは学校に印刷機を導入し、それによって子どもたちの自由テキストを印刷するという教育技術の開発により、学級の教育方法の意味と効力を一変させた。
フレネ教育
フレネ教育はフランス新教育運動の中にあった経済的に富裕な階層、階級の子どもたちのための教育とは違い、労働者階級、民衆の子どもたちのための新教育であった。フレネが行った教育法はたいへんユニークなもので、フランスの公教育の内部でもその教育法を採用する教師もいた。
フレネの教育法は諸外国、とりわけヨーロッパ、ラテン・アメリカの国々に広まっている。日本でも「フレネ教育研究会」が地道な研究・実践活動を続けている。
自由テキスト
フレネの言う自由テキストとは、子どもたちが書きたい時に、彼らの思いついたテーマで自由に書くテキストである。自由テキストは真に自由なものでなければならない。何か言いたいことがある時に、ペンやデッサンで表現したい要求を感じる時に、自分自身の中でわき出るものを書くのである。自由テキストは子どもたちの中にわき出るものの表現、意欲や要求から生まれる表現である。
この自由テキストの実践によってフレネは無味乾燥な音節練習や、生活から切り離された作文練習から解放され、読み・書きの自然方式に向かうことができた。
自由作文
自由作文は子どもたちが毎日書くものである。その作文は短ければ3,4行、長くて200字くらいのもので、長いものではない。作文を書くための題材はもちろん自由であり、子どもたちが学校や家庭で見聞きしたこと、覚えたこと、感じたこと、夢に見たこと、願ったこと、旅行の印象・思い出など何でも良い。言葉や表現のわからないところは先生に聞きながら、ともかく自由に書く。書き終わると全員で発表をする。発表された作文の内容や文章について質問や意見が出され、話し合われる。そしてその中から良い作文を一つ選んで印刷し、学級記録に貼り、学級通信にのせる。自由作文で子どもの生活と学習がつながり、単に作文の勉強ではなく、子どもたちの世界が表現を得る。
自由研究発表
自由研究の題材は自由作文と同じく、題材は何でも構わない。特定の教科の目下学習しているところに関係してなどというのではなく、子どもたちが身のまわり、生活の中で興味を抱いたこと、自分で知りたくなったことなどを好きなように研究する。長期の休みの課題などではなく、常時行われる。発表会は一週間に数度、時間は原則1日1時間であるが、30分で終わっても、また数回にわたって2,3時間となっても良い。研究は子どもたち自身が中心となってすすめる。先生は参考図書や資料集めなどのアドバイスはするが、それ以外は子どもたちが自発的に行う。研究に際して、先生よりむしろ親が積極的に関わり、子どもの手助けをする。ただし、手の出しすぎには注意しなければならない。子どもの疑問、興味を大切にし、そこから出発してそれを少しでも深められるようにする。自由研究発表では、子供の探究心を育て、自ら学ぶことに喜びを、みんなの前で発表することに満足を感じるようにすることが肝心である。
生徒集会
生徒集会は、一週間に一度開かれる。学級集会と全校集会が交互に持たれ、どちらも常に掲示されている壁新聞を中心に運営される点で同じである。壁新聞には学級内・学校内のことならば何を書いても構わない(苦情、批判、称賛、提言、要望など)。生徒集会の場では先生も生徒も対等な立場にあり、生徒だけでなく先生もこれを通じて批判や称賛をする。結果的に生徒集会は、民主主義の実践の場の趣を呈している。どんな些細なことでも、むしろ些細なトラブルであるからこそ、きちんと解決され、子どもたちはそれによって学校を自分たちの生活の場と実感することができる。
学習表
フレネ学校では、原則として一斉授業ではなく、子どもたち一人ひとりが別々に、自分の学習進度、能力に応じて勉強している。そのために教材が工夫されており、個人個人の勉強の支柱になっているのが学習表である。この学習表は計画予定表、進行記録表、成績・通知表、それらのすべてを兼ね備え、しかもそれらの合計以上のものである。二週間を一単位とし、子どもたちは一人ひとり自分の目標を先生と相談しながら設定し、学習の計画を立てる。そして毎日、その日の学習計画の何から始めていくのかは自由である。二週間後に本人、友人、先生の三者の評価が総合される。
学級記録
学級記録は、子どもたちみんなでつくる生活アルバムである。大判の画用紙に自由作文や美しいデッサン、朝の会で話し合ったおもしろい新聞記事の切り抜き、行事の時に先生が撮った写真、転校生、卒業生、見学者、休暇中の在校生からの手紙など、いろいろなものを色とりどりに貼り、そこに先生のコメントも加わり、一週間の学校・学級での出来事を物語る。できたページはひろげて教室内のテーブルにいつも置かれ、それを生徒が読み、親も読みに来る。見るだけで楽しく、学級内の心の交流が伝わってくるアルバムとなる。
参考
原章二・原光枝 共著 「フレネ自由学校だより」 あゆみ出版
佐藤広和 「フレネ教育 生活表現と個性化教育」 青木書店
若狭蔵之助 「フレネ教育 子どものしごと」 青木書店