フィンランドの環境教育

出典: Jinkawiki

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2009年1月30日 (金) 15:55の版
Bunkyo-student2008 (ノート | 投稿記録)

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フィンランドは世界で最も森林に恵まれた国で、国土の4分の3が森に覆われている。湖や川も多くあり、「森と湖の国」として世界に知られている。国の至る所に国立公園があり、ヘルシンキのような首都圏地域にも存在する。フィンランド人は自然を愛し、自然の中で過ごすことを好み、森の中でハイキングやサイクリングなどして楽しむ。また「サマーハウス」という別荘を持ち、週末やバカンスになると家族や友人と、自然溢れた森や湖に出かけ、リラックスした時間を過ごしている。フィンランドでは全ての人に(外国人にも)、あらゆる自然の恵みを受けられる「自然享受権」を認めているのが特徴的である。

※「自然享受権」とは

北欧の国々に古くからある慣習で、「誰が所有する土地であっても、ルールを守れば、森や湖などに自由に入って楽しむ権利がみんなにある」というものである。つまり、個人の私有地でも国有地でも、ルールさえ守れば、自然の中を自由に散歩したり、キノコやベリー類を摘んだりできる。一泊であれば、テントを張って泊まることもできる。「自然はみんなのもの」と考えられているためである。フィンランドは誰もが自然を自由に楽しめるように、Everyman's rightと呼ばれる権利が国民に与えられている。

こうした豊かな環境下であるが、環境教育関係者は現代の子どもたちが本当の自然から切り離されていると指摘し、特に都市部に住む子どもたちの中には、週末も夏休みも、部屋の中のコンピュータでしか遊ばないため、環境や自然と触れ合う機会の減少について問題視している。フィンランドにおいても現代の世界共通の問題を抱えており、学校においても環境教育の取り組みが多くなされている。


≪具体例≫

~島全体で環境教育~

ヘルシンキでは子どもたちの現状を考慮して「環境教育センター」を立ち上げ、様々な取り組みをしている。例えば、湾岸に点在するハラッカ島には生物観察ツールや資料の揃った教育環境センターがある。センターの周りには散策路があり、野鳥観察小屋や海の生態系、チョウの生活などを解説した立て看板が設置されるなど、島全体が環境教育の学習の場となっている。年間60校ほどの市内の小学生がここを訪れ、魚、海の小生物、野鳥など、自分の興味のあるテーマのもとで1日活動をする。センターの職員は市の公務員であり、自治体が独立して環境教育部門を持っている。


~自治体とNGOと学校の連携~

ヘルシンキ市内にある環境NGO“Nature League”は、環境問題に関わる子供向けの絵本の作成、週末の環境クラブ活動(子どもたちと一緒に自然の中で遊ぶ、森の中でのコンサートの開催)、夏休みのキャンプ開催など様々な取り組みをしている。活動資金は環境省ではなく教育省から全て拠出され、それは環境教育が教育省の管轄分野のスポーツ、文化、芸術、ユース教育に含まれているからである。 近年は学校との提携が強化され、ヘルシンキ市と共に市内の小学校で環境教育や自然教育を行っている。高校生や大学生の学生スタッフが小学校に出向き、「春」について講義をした後に、外に出て春の兆しのあるものを探す活動などがある。


~建物の環境と人間の関係~

自然科学や自然の保存は既に学校教育の中で取り上げられていて、考慮されているという理由から、近年は建物の環境と人間との相互問題が、強調され取り上げられている。 小中学枚の環境教育には環境省の都市計画局、ヘルシンキ工科大学の建築学科、市町村会、自然保護協会、芸術協会などが参加して企画された「快適な環境」という教科書が用いられている。学枚教育の場で景観に関するテーマが取り上げられるようになったのは最近のことである。発行元はフィンランド建築家協会で、フィンランド全域で使用されていて、環境の快適性に対する基本的な価値観から、空間槻念、基本計画から個々の建築の設計に至るプロセスなど広範囲に及び、詳細なだけでなく豊富な図版を使って興味を持たせるように書かれている。 例えば、教科書の中の図には「いなか」と「都会」の環境と人の心のふれあいを描いていて、一般的に「いなか」には豊かな自然と豊かな心があり、「都会」には灰色のコンクリートと人々のすさんだ心しかないと理解されている。しかし、自然にあふれる「いなか」でもひとたびゴミ公害や乱開発に犯されてしまえば人の心もすさんだものになってしまい、逆に住みにくいと言われる「都会」でも、窓辺に花を飾り、豊かな外部空間をつくり出せば、人々の心も豊かなものになり得ることが表現されている。このようなわかりやすい図や絵を見て子ども達は建物の環境と人間の相互関係を学んでいる。


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