慈悲殺
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慈悲殺
イギリス人やアメリカ人は、本人の求めに応じて慈悲の気持ちから死に至らせる行為を、実に簡潔に「慈悲殺(mercy killing)と呼んでいる。
慈悲殺といえるのは、いつ果てるとも知れず、治療の見込みもない病気の苦しみから解放するために当人の希望に応じて慈悲の心から死に至らせる行為だけである。慈悲殺が真に気高い行為と認められるのは、死にいたらせる側の人間が心底同情できる病苦の場合だけに限られ、恋の悩みや名誉の失墜といった理由で死を望む場合は、これに当たらない。そして、死なせてほしいという自由意志による場合、つまり苦しんでいる患者の意思表明がある場合だけが、慈悲殺という名誉ある呼び名に値する。つまり、人道的に見て、全く苦痛を感じさせずに眠ったままの状態でしに至らしめる行為、主治医が患者を人道的に死なせることだけを慈悲殺という。命を奪われる側の意志に基づいているという点では、慈悲殺は他人の手を借りた自殺である。
現在広く論議されている安楽死は慈悲殺人とは同一と言えない。医師の手によること、不治の病の末期患者が耐え難い苦痛を訴えていること、本人の自発的意思に基づくことなど、各国の文化的、社会的事情なども考慮した、さまざまな用件が考えられ、実施を戒めている。
また、安楽死の理由には、尊厳死、厭苦死、放棄死、淘汰死と4つがあるが、慈悲殺はこのうちの厭苦死にあたる。
参考文献
『最後まで人間らしく―患者の自己決定権について』 ユーリウス・ハッケタール著 未来社 1996年出版
『許されるのか?安楽死』 小笠原信之著 緑風出版 2003年出版