自閉症スペクトラム
出典: Jinkawiki
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2009年12月24日 (木) 15:47の版
自閉症スペクトラムというとらえ方
自閉症は症候群であり、その障害の程度や状態は個人差が著しい。
カナータイプ:重度の知的障害伴う場合から高機能と分類される場合まで、その知的水準には幅がある。高機能とは知能指数(IQ)が70以上の場合を指す。
アスペルガータイプ:その大多数が正常な知能を有しており、アスペルガー症候群と高機能自閉症は、明確な違いがあるのかどうかは議論が分かれるところとなっている。
特定不能の広汎性発達障害:相互的人間関係または言語的、非言語的意思伝達能力の発達に重症で広範な障害のある場合、または特定の広汎性発達障害、精神分裂病、分裂型人格障害、回避性人格障害の基準を満たさない場合に用いるカテゴリーである。
これらを包含し、自閉症スペクトラムという枠組みをとっている。スペクトラムとは連続体を意味し、カナータイプまたはアスペルガータイプも含め、前述した3つの障害に特徴づけらるることで定義される。
自閉症スペクトラムの有病率と遺伝学
①自閉症の有病率には古くから学童人口1万について4.5人とされていたが、その後、日本での調査では名古屋市での調査で13.0、横浜市での最近の調査では16.3、そのうちIQ≧70の高機能の子どもは25.3%と報告されている。外国の調査でも8.6(アイスランド)、10.17(スウェーデン)と高くなっている。アスペルガー症候群は36/10,000(スウェーデン)とされている。
②広汎性発達障害は家系的集積の強い疾患である。一卵性双生児の一致率は認知上の問題や社会性の問題を伴ったものを含めると82~95%となり、二卵性双生児では0~22%、同胞内の一致度は5.9~8.6%と低いが、一般人口での有病率より高い。親が次の出産を控える傾向が大きいからのようで、患者より後の出生児では35%となる。遺伝率は有病率を1万当たり20~30とすると、発端者の後に次子以降の再発率は4%(男子で7%、女子で1%)で、これは一般人口での出現率の20倍の高さである。しかし、自閉症は遺伝子異常をはじめとする様々な要因による中枢神経系の形成途上に起こった構造的異常が原因なのであって、自閉症そのものが遺伝するのではない。
遺伝子研究
①連鎖解析
連鎖解析は、ある疾患または体質が、特定の染色体のどの部位とどの程度密接に連鎖しているのかを知る有効な手段である。単一遺伝子疾患とは考えられない場合でも、関係する遺伝子の位置を推測するのに有効であるために、遺伝子傾向のある疾患について用いられている。自閉症スペクトラムでも、連鎖解析を用いた研究がなされており、可能性のあるいくつかの部位が報告されている。最近、7番染色体または15番染色体の長腕の領域が有望視されている。
②候補遺伝子の検討
1)単一遺伝子疾患 自閉症状を有するいくつかの遺伝性疾患が知られている。これまでも、脆弱X症候群、レット障害、神経線維種症、結筋性硬化症などの原因遺伝子が注目されたが、自閉症スペクトラムの関連は明らかにされていない。
2)セロトニン関連遺伝子 自閉症スペクトラムでは血中セロトニン濃度の高いものが多いと報告されており、同一性保持のへの強い執着に新しいタイプの抗うつ薬が有効であるとする報告が多数あることから、セロトニン関連遺伝子を候補遺伝子とする研究が多い。
3)インスプリティング インスプリティングは、父親と母親由来の対立遺伝子が異なる発現形式を示す現象であり、この現象が関与する疾患としては15番染色体の長腕領域の欠損によるプラダー=ウィリ症候群とアンジェルマン症候群が代表的である。