三位一体の改革
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+ | 三位一体の改革(さんみいったいのかいかく)は、日本において国と地方公共団体に関する行財政システムに関する3つの改革、①国庫補助負担金の廃止・縮減②税財源の移譲③地方交付税の一体的な見直しのことをいう。 | ||
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+ | 1995(平成7)年の地方分権推進法制定と地方分権推進委員会の発足以降、国と地方の厳しい財政状況や少子高齢化の急速な進展の中で、日本の活力を回復し、維持していくために、これまでの中央集権的なシステムを転換し、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主・自立の地域社会からなる分権型システムの構築が必要とされている。三位一体の改革は、2001(平成13)年に発足した小泉内閣において、国と地方自治体の役割分担に応じた税財源配分のあり方について取り組まれた構造改革である。地方ごとの創意工夫と責任で政策を決め、自由に使える財源を増やし、自立できるようにするため、国庫補助負担金(国庫支出金)の廃止削減、地方交付税の見直し、および国から地方への財源移譲を一体的に検討することから「三位一体の改革」と呼ばれた。「地方自治体の自律性の向上」(地方分権)、「国と地方の財政責任の明確化」(財政再建)、「地方公共団体間の格差への配慮」を改革の基本方向として、2002(平成14)年6月に閣議決定された「基本方針2002」において改革案が検討され、2004(平成16)年11月に「三位一体の改革について」が政府、与党の合意で決定された。 | ||
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+ | 地方自治体の財源の基本は、住民税や固定資産税などの地方税である。自治体による差はあるが、地方税だけでは必要経費の3~4割程度しか確保できないため(3割自治)、国からの補助(国庫補助負担金、地方交付税等)が地方自治体に与えられている。しかし近年、国庫補助負担金と地方交付税を減らし、地方の裁量権を増やすことで「地方の自立」と「国のスリム化」を図ろうという地方分権論が展開され、あわせて国から地方への財源を移譲することで「地方の自立」を図ろうという「三位一体の改革」が進められている。 | ||
+ | 政府は「基本方針2004」において、3兆円規模の税源移譲を示し、これに合わせて補助金の削減と交付税配分・税源移譲の調整を検討した。当初の案では、義務教育費国庫負担金や国民健康保険・生活保護・児童手当・児童扶養手当の国庫負担金の削減案が示された。2004年11月の政府・与党合意「三位一体の改革について」において補助金改革案が合意され、国庫支出金が1兆300億円、地方交付税が2兆9000億円削減され、6600億円が税源移譲された。内訳としては、義務教育制度については従来どうり国の責任とする方針で、小中学校を通じての国庫負担割合を3分の1、児童扶養手当(3分の1)、児童手当(3分の1)でも国庫負担率が引き下げられた。また、生活保護費の負担率引き上げについては今回の補助金改革では見送られたが、「生活保護の適正化」の取り組む方向で合意された。 | ||
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+ | == 意義(その後の影響) == | ||
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+ | 国の関与を減らし、地方が財政的に自立し、地方のことは地方が決める(自律)ことが三位一体改革の狙いだったが、財源移譲額よりも補助金や交付税の削減額が大きくなり、実際には地方分権改革というよりも財政改革だ、という批判もある。特に交付税改革については審議が不十分である、という指摘があり、交付団体においては積立金をとり崩し、予算を組まなければいけないなど、住民生活に影響が出ることが心配されている。支出の見直しや税源確保のための租税改革も、「地方の自立」という三位一体改革の課題ではあるが、その一方で地域間格差の拡大も指摘されている。 |
2010年1月16日 (土) 09:40の版
目次 |
三位一体の改革
三位一体の改革(さんみいったいのかいかく)は、日本において国と地方公共団体に関する行財政システムに関する3つの改革、①国庫補助負担金の廃止・縮減②税財源の移譲③地方交付税の一体的な見直しのことをいう。
社会的背景
1995(平成7)年の地方分権推進法制定と地方分権推進委員会の発足以降、国と地方の厳しい財政状況や少子高齢化の急速な進展の中で、日本の活力を回復し、維持していくために、これまでの中央集権的なシステムを転換し、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主・自立の地域社会からなる分権型システムの構築が必要とされている。三位一体の改革は、2001(平成13)年に発足した小泉内閣において、国と地方自治体の役割分担に応じた税財源配分のあり方について取り組まれた構造改革である。地方ごとの創意工夫と責任で政策を決め、自由に使える財源を増やし、自立できるようにするため、国庫補助負担金(国庫支出金)の廃止削減、地方交付税の見直し、および国から地方への財源移譲を一体的に検討することから「三位一体の改革」と呼ばれた。「地方自治体の自律性の向上」(地方分権)、「国と地方の財政責任の明確化」(財政再建)、「地方公共団体間の格差への配慮」を改革の基本方向として、2002(平成14)年6月に閣議決定された「基本方針2002」において改革案が検討され、2004(平成16)年11月に「三位一体の改革について」が政府、与党の合意で決定された。
展開(内容)
地方自治体の財源の基本は、住民税や固定資産税などの地方税である。自治体による差はあるが、地方税だけでは必要経費の3~4割程度しか確保できないため(3割自治)、国からの補助(国庫補助負担金、地方交付税等)が地方自治体に与えられている。しかし近年、国庫補助負担金と地方交付税を減らし、地方の裁量権を増やすことで「地方の自立」と「国のスリム化」を図ろうという地方分権論が展開され、あわせて国から地方への財源を移譲することで「地方の自立」を図ろうという「三位一体の改革」が進められている。 政府は「基本方針2004」において、3兆円規模の税源移譲を示し、これに合わせて補助金の削減と交付税配分・税源移譲の調整を検討した。当初の案では、義務教育費国庫負担金や国民健康保険・生活保護・児童手当・児童扶養手当の国庫負担金の削減案が示された。2004年11月の政府・与党合意「三位一体の改革について」において補助金改革案が合意され、国庫支出金が1兆300億円、地方交付税が2兆9000億円削減され、6600億円が税源移譲された。内訳としては、義務教育制度については従来どうり国の責任とする方針で、小中学校を通じての国庫負担割合を3分の1、児童扶養手当(3分の1)、児童手当(3分の1)でも国庫負担率が引き下げられた。また、生活保護費の負担率引き上げについては今回の補助金改革では見送られたが、「生活保護の適正化」の取り組む方向で合意された。
意義(その後の影響)
国の関与を減らし、地方が財政的に自立し、地方のことは地方が決める(自律)ことが三位一体改革の狙いだったが、財源移譲額よりも補助金や交付税の削減額が大きくなり、実際には地方分権改革というよりも財政改革だ、という批判もある。特に交付税改革については審議が不十分である、という指摘があり、交付団体においては積立金をとり崩し、予算を組まなければいけないなど、住民生活に影響が出ることが心配されている。支出の見直しや税源確保のための租税改革も、「地方の自立」という三位一体改革の課題ではあるが、その一方で地域間格差の拡大も指摘されている。