知的所有権
出典: Jinkawiki
2010年2月12日 (金) 15:46の版
法律用語としては、従来無体財産権と呼ばれていた。知的財産権ともいう。英語では、intellectual property rights 。新規な創作に関する権利と営業上の信用に関する権利など無体の財産的利益を排他的に支配する権利の総称。具体的には、著作権、工業所有権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)、商号権などがある。原則的に自由に処分でき、相続の対象ともなる。知的所有権の対象は社会や技術の発展に伴い増加していくため、常に法改正あるいは新しい法律が必要となる。また、このような権利についての紛争が国内外を問わず増加することが予想され、種々の国際条約が作られている。日本では2002年知的財産基本法が制定され、知的財産を国家戦略として保護・強化する方向が示された。
1・世界知的所有権機関 工業所有権、著作権等の知的所有権の保護を全世界的に促進するための機関。1970年発足。1974年国際連合の専門機関となる。本部はジュネーブ。加盟国179(2003年)
2・知的財産高等裁判所 2004年制定の知的財産高等裁判所設置法に基づき、知的財産に関する事件を専門的に取り扱うために、東京高等裁判所の特別支部として、設置された裁判所。知的財産権の活用の進展に応じ、その保護に司法の果たす役割が高まる状況の下で、これに関する事件についての裁判の一層の充実と迅速化を図るため新設された。
3・TRIPS協定 世界貿易機関(WTO)の設立に関する協定の一環を構成する知的所有権の貿易的側面に関する協定のことである。国際的な知的財産権の保護の水準を大幅に引き下げ、協定違反に対してはWTOの紛争解決手続きによって制裁するなど、画期的な内容を含む。また、世界知的所有権機関(WIPO)は、これに対応して仲裁センターを発足させた。日本でもTRIPS協定の発効に合わせて、特許法・意匠法など知的財産権関係の国内法を一部改正した。
4・著作権 Copyrightの訳。文芸・学術・芸術・音楽の範囲に属する創作物(著作物)を、著作者が独占的排他的に支配し、かつ複製(翻訳、映画化、放送、興行等も含む)する権利。知的財産権の一種。日本の旧著作権法(1899年)はベルヌ条約(万国著作権保護同盟条約)に基づいて制定。1970年著作権法(現行)が全面的に改正され(施行は1971年)、著作権の保護期間が著作権者の死後50年(映画、写真、無名や変名の著作物及び団体名義の著作物は公開後50年)に延長されさらに翻訳権に関する10年間の保留規定も廃止された。(ただし、1970年以前の出版物に関しては、さかのぼって新しい基準を適用しない)。著作物の利用者は著作権者からの使用の承諾を得ることを要し、無断で使用した場合は著作権の侵害となる。ただし、法律・命令、公文書や定期刊行物に掲載の雑報・時事報道、公開の裁判所・議会・集会での演述は著作権の対象とならない。著作権は譲渡することができる。1952年万国著作権条約が締結され、日本も1953年に加盟。 近年は、世界各国内および国際的にも技術革新のもたらした新媒体に対する著作権上の対処が迫られている。カセット・レコーダーによる私的複写・複製使用の問題は、国際的総合解決が必要になり、日本では著作権法が1978年に一部改正され、レコードの海賊版防止が法制化された。その後、先端技術の発達によって開発された新しい創作物であるコンピューター・ソフトウェア、データベース、コンピューター創作物なども著作権法の保護対象とし、また、複写・録音・録画機器及びレコード・テープ・ディスクなどの複製機器の発達・普及による新しい利用形態への対応が今日的な問題として取り上げられている。
5・工業所有権 人間の精神的活動による無体の産物の中で産業的に利用されうる技術・考案・商標等に対する排他的な権利。英語ではindustrial property rightsという。一般に、特許法により特許を受けた発明を技として独占的に利用しうる権利の特許権、物体の形状構造又は組み合わせに係る産業上利用できる新規な考案を独占的に利用できる実用新案権、意匠登録を受けた意匠及びこれに類似する衣裳を業として独占的に使用できる意匠権などをさす。