アナウンスメント効果

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2010年8月6日 (金) 22:12の版

アナウンスメント効果

 アナウンスメント効果(announcement effects)とは、選挙の前にメディアが行う予測報道が、有権者の投票行動に影響を与える現象のことである。

目次

概要

 国政選挙の時期になると、大手通信社や新聞社などは大規模な全国世論調査を実施する。そして、その結果に基づき各選挙区の情勢や、各政党の獲得議席予想数を作成し、投票日の一週間ほど前に発表する。こうした選挙予測効果が投票行動にもたらす影響を、「アナウンスメント効果」と総称する。すなわちアナウンスメント効果とは、投票前日に行われる選挙情勢や選挙結果を推定する報道が、有権者の投票選択や投票参加に何らかの変化をもたらすものと定義される。 アナウンスメント効果は2種類に分類でき、一つを「バンドワゴン効果(band-wagon effects)」と呼び、もうひとつを「判官贔屓効果(under-dog effects)」と呼ぶ。

バンドワゴン効果

 「バンドワゴン効果」とは、メディアによって一方の候補者が有利だと報道されると、有権者が雪崩を打ったように、その勝つだろうと予測された候補者に投票して、結果として大差をつけて当選するという現象である。アメリカの大統領選挙や上院・下院議員選挙などの小選挙区制の選挙でよくある現象である。

判官贔屓効果

 「判官贔屓効果」とは、バンドワゴン効果とは逆にメディアによって一方の候補者が有利だと報道されると、実際の選挙ではその候補者の票がかえって伸びず、選挙運動中には不利と報道された候補者が票を伸ばすことをいう。かつての日本の中選挙区制における選挙でよく見られた現象である。

以上の二つの現象は一見矛盾しているようだが、選挙制度と有権者の心理を鑑みれば、この二つの現象がアメリカの小選挙区制と日本の中選挙区制でそれぞれ見られたことはきわめて合理的であるといえる。まずアメリカのような小選挙区制においては、各選挙区の議席数は1であることから、有権者にとってみれば負けそうな候補者に投票することは自身の1票を死票としてしまうことになる。よって、有権者にとっては自身の支持する候補者が勝つ見込みのないのであれば、棄権してしまうことが合理的な行動となる。対して、日本の中選挙区制では議席数が複数あったので、一つの選挙区において複数の候補者が当選でき、一つの政党から複数の候補者が立候補している場合があった。自身の支持する政党の中で最も支持している候補者が当選確実であるという選挙予測報道を知った有権者は、自身の支持政党により多くの議席を獲得させたければ、その支持政党で当選すれすれの候補者に投票する方が合理的な投票ということになる。これは戦略投票と呼ばれる合理的な投票行動の一つである。日本では衆議院選挙において各選挙区での「判官贔屓効果」が多くみられたが、1996年から小選挙区比例代表並立制に変わり、「バンドワゴン効果」が多くみられるようになった。


バッファープレイヤー

 「バッファープレイヤー(牽制的投票者)」とは、日本の政党で例えるならば「基本的に自民政権を望むが、政局は与野党の伯仲状態がよいと考え、与野党の伯仲状況(バッファー)を考慮に入れて投票行動を行う有権者」のことである。言い換えれば、政策運営は自民党に任せるが、自民党が数に任せて傲慢になるのを牽制するために、与野党伯仲状態を維持したいと願う有権者のことである。すなわち、メディアから意見の風向きを知り、それによって自身の行動を調整する人々とみなすこともできる。バッファープレイヤーは、アナウンスメント効果の影響を最も受けやすいということが、研究により分かっている。


参考文献

蒲島郁夫 竹下俊朗 芹川洋一(2007)『メディアと政治』 有斐閣アルマ

久米郁男 川出良枝 古城佳子 田中愛治 真渕勝(2003)『政治学』 有斐閣

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