文脈効果

出典: Jinkawiki

(版間での差分)

2011年2月2日 (水) 20:32の版

文脈効果とは?

文脈効果とは刺激の知覚過程において、前後の刺激の影響で、対象となる刺激の知覚が変化する現象のことである。本来、語や文を理解する際には文脈の持つ統語的・語用論的曖昧さを減少させる効果を指すものであったのが、知覚一般に拡張された概念。有機体にとって、過去・現在すべての刺激が総体化されることで、ある刺激の順応水準が決定され、同化・対比といった文脈効果が生じる。


日常での文脈

 日常行きている中で、前後の文脈が大切な場面というのは多々ある。例えば、「のり取ってくれる?」という台詞は、食卓と言う文脈があれば海苔のことだろうし机の上に居る人に向かって言っている場合は糊のことだろう。このように、周囲の状況によって意味が変わる現象を文脈効果と呼ぶ。この効果は言語に限った事ではなく、知覚にも文脈効果は見られる。図1を見てみると、上の文字はTHE CAT と読めるだろう。下のアルファベットはABCDEFと読めるし、その下の数字は10,11,12,13,14と読める。しかしよくよく見てみると、THE CATの中にある、HとAの形は全く同じなのだ。それにも関わらず、一方はHと認識し、他方はAと認識した。これはなぜなら、正しい英文として理解しようと言う先入観(文脈)が脳内の知覚の傾向を決めているからである。知らず知らずのうちに、正しく読もうとして、THE CATと読んでしまうのだ。次に、下のアルファベットと数字だが、Bと13がまったく同じ形なのだ。網膜像としては全く同じでも、一方は数字、一方はアルファベットとして知覚される。これは前後に、数字が並んでいる、アルファベットが並んでいるという知識(文脈)が入る事で間に挟まれた文字もそれらと同種のものだと脳が勝手に判断してしまうために片方はBにもう一方は13に見えるのである。


 文脈効果のメリット・デメリット

このような文脈効果は、人間の活動の上でどのような利益と不利益を生じさせているのだろうか?たとえば今のようにその文脈に応じて曖昧な文字を理解できるという利点があったりするが、私は不利益の方に照準を当てて調べてみた。 こんな一例があった。あるスーパーマーケットで、店頭にセール品として山積みになった缶詰がとても安くなっていたために、主婦のAさんは迷わずに購入した。そしてその隣にも違う缶詰が山積みになっていたので、値段を見ずに購入した。Aさんは、ここでセールをやっていたからこの商品もセールだろうと勝手に判断してしまったのだ。 そしてその商品はセールではなかったために、Aさんは自宅に帰ってから軽率な行動を反省したという話だ。このエピソードは文脈効果が大きくかかわっている。片方のセール品をSとして、もう片方の普通の値段の商品をUとする。販売するスーパー側は、消費者の心理を考えて店内の商品の配置を決めたり、広告を作ったりしている。おそらく、この山積みになったSとUの缶詰は、スーパー側の消費者の心理を利用した販売技術なのではないだろうか。Sの隣にUを配置することによって、Uにはセールと書いていなくても、消費者はSと同じ陳列方式なのでセールと勘違いするという文脈効果を使っているのだ。  文脈効果と非常に近い存在なのが、プライミング効果である。プライミング効果とは、手続的記憶のひとつで、先行刺激の受容が、後続刺激の処理に無意識的に促進効果を及ぼすこと。直接プライミングと間接プライミングがある。直接プライミングは、知覚的プライミングと概念的プライミングに分かれる。間接プライミングは、プライム刺激の認知により、テスト刺激の認知を促進させるものである。理論的には、脳内の特定位置の記憶検索が隣接領域の記憶を活性化させるという、コリンズ・ロフタスの活性拡散モデルにより説明されている。プライミング効果の身近な例としては、「ピザって10回言って」のあとにじゃあここはと言ってひじを指さすと「ひざ」と答えてしまうという10回クイズが非常に有名だろう。先行刺激の「ピザ10回」が後続刺激の「ひじ」に無意識的に影響を及ぼして「ひざ」となってしまったのである。プライミング効果や文脈効果にとらわれないのは難しいことだが、物の本質を見極めたり、だまされたりすることのないようにこのような錯覚的現象には気をつけたいものだ。


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